「おい、ドスコイ!」 倉庫で作業中にそう呼びかけられ、驚いて振り返ると年上の男性が「怒った?」と言いながら笑っている――。ぽっちゃりした体型にコンプレックスがあり、摂食障害に苦しんだ過去もあった女性はどう答えたのでしょうか。その「小さな抵抗」に共感が集まっています。
からかわれても怒れなかった
ボディポジティブに出会ってから、自身のからだを肯定できるようになってきたというharaさん。それでも、体型をからかわれたりいじられたりするシーンで、怒ることはできなかったといいます。
「体型をばかにされて怒っている人を見る機会がありませんでした。ドラマでも広告でも、『悔しいからダイエットで見返す』とか、笑って済ませたりとか……。太っている私が悪いんだ、と思っていました」

「怒った?」と言いながら笑っていた
「おいっ ドスコイ!」
はじめは聞き間違いかと思っていたところ、「おい ドスコイ!」と2度目の呼びかけ。振り返ると、男性が「怒った?」と言いながら笑っていたのです。

摂食障害・過食嘔吐に苦しんだ日々
頑張りすぎてぷつっと気持ちが折れた高校生の時、食べ過ぎて吐く摂食障害に陥り、リバウンドで体重も大きく増えたといいます。
一人暮らしだった美大生時代は普通にご飯が食べられず、過食嘔吐を繰り返します。苦しんでいることは誰にも打ち明けられませんでした。
「相談しても『やせれば?』『普通に食べればいいじゃん』と言われたらどうしよう…と思っていたので、誰にも助けを求められませんでした」

「こんな優しい世界があるんだ……とびっくりしましたね。でも、自分のこととは思えなくて、その時は雑誌を買えませんでした」
でも、やっぱりどこかで気になっていて、ついに雑誌を手に取り、「このままの私でおしゃれを楽しんでいいんだ」と励まされたといいます。
ほかのファッション雑誌にも目を通してみると「書いてあることは意外とバラバラ。好きなものってそれぞれでいいのかも」と感じ、再び楽しく絵が描けるようになりました。
口をついた「サイッテーですね!」
この時ばかりは「サイッテーですね!」という言葉が口をついて出てきたといいいます。


haraさんは“おそるおそる”SNSやニュースへの反応をチェックしますが、想像していたよりも否定的な反応が多く、ホッとしたと振り返ります。
「賛否両論」や「○○ともとれる」といった表現ではなく、「容姿の侮辱」「こんなことはもうダメ」と言い切るメディアや反応が多く、「誰かの体型をとやかく言うのはよくないという考え方が広まってきている」と感じたそうです。

「イヤならやせればいいじゃん」の反応
「私も昔はそう思っていたので、気持ちは分かります。でも、摂食障害という病気では『食べる・食べない』が意思の力ではどうにもならないし、体型の変化は歳をとっていく過程でも起こりえます。『甘えだ』とか『なんでやせられないの?』という言葉が、変わったときの自分に返ってきてしまってしんどくなるんじゃないかな……。そうならないといいなと思います」
服の #サイズの話 と、
— hara (@hara_atsume) May 27, 2020
「痩せればよくね?」が行き着く先のひとつ
① pic.twitter.com/YH4hOCcz1c
「言い返す」以外の対処法も
haraさんは「大人数でからかわれたとか今回と違うシチュエーションだったら、私も言い返せたかどうか自信はありません。眉をひそめるとか無表情になるとか、いろんな対応の仕方を備えておくといいかも」と話します。
「反射的に笑っちゃったけど、あとになって『いやだったな』『絶対に向こうが悪かったわ』って思うだけでもいい。言い返せなかったからって自分を責めずに、自分の心を守ってほしいです」
📖絵描きを目指してた子が、ぽっちゃりした女の子を描くようになった話(1/3)
— hara (@hara_atsume) February 20, 2021
就活思い出まんがです✍️
※過食嘔吐の描写がちょっとだけあります、心がつらかったりする方はお気をつけて🙏 pic.twitter.com/R3kziib1I9
さまざまな体型の人が「普通にいる」
「いま悩んでいる人には『まわりに頼って』と言いたいですが、私もそれができなかったんですよね。だからこそ、Twitterのマンガやイラストなど、ひとりでいるときにも目に入るものを発信していきたいです。新しい考え方を受け入れるには時間がかかるので、ゆっくり発信していこうと思います」