MENU CLOSE

話題

「あだ名つけられたら、もう終わり」ホルモン・ナヲさんのいじめ体験

「絶対に違う世界がある」

いじめで悩む子へ「本当に毎日つらいよね。行きたくないよね。顔も見たくないしね。私は行かなくてもいいと思っている」と語りかけるマキシマム ザ ホルモンのナヲさん
いじめで悩む子へ「本当に毎日つらいよね。行きたくないよね。顔も見たくないしね。私は行かなくてもいいと思っている」と語りかけるマキシマム ザ ホルモンのナヲさん

目次

ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」のドラムと女声と姉 担当、ナヲさん。その攻撃的で激しい音楽スタイルとは対照的に、中学時代にはいじめにあっていたといいます。クラスで無視され孤立を深める中で、とんねるずの番組に救われたというナヲさんは、その後ロックバンドを結成し、同じような生きづらさを抱えるファンとの交流を続けてきました。現在は母親として2人の娘を育てています。いじめられた経験は、いま子どもたちと向き合う上でどう生かされているのか、YouTubeたかまつななチャンネルで話を聞きました。
(時事YouTuber たかまつなな)

【PR】進む「障害開示」研究 心のバリアフリーを進めるために大事なこと

クラスでシカトされた中学時代

――いじめられていた経験があると聞いて驚いたんですけど、どんな経験をされたんですか?

ナヲ:ある男の子を中心にシカトをされたりして、とにかく学校に行きたくなかったっていう記憶があります。うちの学校はいじめられる子は特殊なあだ名を付けられるんですよ。私は旧姓が川北なんですけど、中学1年の2学期に転校してきたらその日に「川っち」って呼ばれたんです。「何々っち」ってつけられたらもう終わり、いじめられっ子認定なんですよね。机を離されたり、シカトされたり。何がなんだか分からないまま始まった感じです。


――そんなルールがあるんですか。けっこう長く続いたんですか?

ナヲ:中2のクラス替えでクラスメイトがほとんど入れ替わって、私がいじめられていたことを知らない人たちと同じクラスになったことで、抜け出せました。だから実際には半年くらいだったんですけど、10年以上に感じられたくらい長かったですね。

とんねるずに救われた

――そのときは何が心の支えだったんですか?

ナヲ:当時、「とんねるずのみなさんのおかげです」(フジテレビ系列)っていうバラエティ番組があって、本当にそれが心の支えでした。それを観ているとすごく楽しかった。
学校のトイレで手を洗っているときとかに、ちょうど横に女の子がいたら「昨日の『おかげです』見た?」って話しかけたりしていました。シカトされていたけど。でも100人話しかけて1人でもその話で仲良くなれる子がいるかもしれない、友達ができるかもしれないと思っていたんですね。


――本当に友達がほしかったんですね。

ナヲ:中2になってからはそれで仲良くなれた子がいました。「とんねるずのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)とかを夜中に聞いて、録り忘れたり聞き忘れたりしたら、テープをお互いに交換したりして。今は、アニメだったりYouTubeだったり、選択肢が昔よりいっぱいあるから共通の趣味を見つけるのが逆に大変だったりするのかな。


――とんねるずさんにはお会いしたことは?

ナヲ:一番最初は2年前に、生放送のドッキリでタカさんと初めてお会いして、カメラも回ってるしテンションも上がってワーってなって。カメラが止まったあとに「いじめられていたときに助けてもらいました」って言ったのかな。タカさんはすごく喜んでくれました。
その何ヶ月かあとにノリさんにもお会いすることがあって、お話させていただいたときに「マキシマム ザ ホルモンっていうバンドをやってて」とか言いながら泣いちゃって。「昔から大好きで、ファンクラブにも入ってて」って、私キモいなって思いながらも、こういうときって本当に泣いちゃうんだなって不思議でした。

苦しくても違う世界がある

――当時、いじめで悩んでいたことを家族に話すことはできたんですか?

ナヲ:言えないよね。私がいじめられているって親が知ったら悲しむだろうなとか思っちゃって言えなかった。うち弟2人いるんですけど、弟たちにも言えなかった。当時、弟たちと3人で寝ているときに「今こうやって楽しく遊んで一緒に寝ていても、私って実は学校でいじめられてて、でも弟たちは何も知らないんだよな」とか思ったら泣けてきちゃって。そういうのをすごく覚えています。

でも、うちの母がいろんなところに友達がいて、母の友達の子どもたちとかともよく遊ぶことがあったので、学校だけが全てじゃないってことをなんとなく自分でわかっていたから救われたのかもしれない。今はこの世界では苦しいけど、ここだけじゃないって。

トランペットができずにドラムを始める

――中学時代、音楽は聞かれていたんですか?

ナヲ:音楽をちゃんと聞き出したのは、いじめが終わって中2になってからかな。ユニコーンとかJUN SKY WALKER(S)とかに出会って、バンドみたいなものを聞き出した。


――ドラムを始められたのはどういうきっかけだったんですか?

ナヲ:転校する前に吹奏楽部でトランペットをやっていたんですけど、転校してきて吹奏楽部に入ったらトランペットは花形で人数がいっぱいいるから、あなたはパーカッションって言われて。全然やりたくなかったけど人数多いからしょうがないかみたいな感じで、やったことのないドラムをやらなきゃいけなくなったという。その後、軽音楽部がある女子校に入って全部独学で覚えました。


――マキシマム ザ ホルモンを結成するまでにはどういう経緯があったんですか?

ナヲ:大学のサークルの新入生歓迎ライブでザ・ハイロウズ(↑THE HIGH-LOWS↓)のコピーをやるみたいなノリのまま始めて、いつの間にかオリジナルでやるみたいな。ツアーとかをやりだして、ずっと今でもその世界のまま続いている感じです。

ファンとの交流で「つらい思いも無駄じゃなかった」

――いじめられていたことが今の音楽に関係していることってありますか?

ナヲ:マキシマム ザ ホルモンのすべての曲は、私ではなくうちの弟(マキシマムザ亮君)が作っているので、私がいじめられていた事が直接何か曲につながっていることはないですけど。ファンからのメールをチェックしたりすると、いまつらいという人たちがいて、やり取りをするようになったりしました。17歳の女の子がつらい思いをしていて、その子とは何でもない話題でメールのやり取りを続けました。その子はいま、30歳になって結婚もしたんですけど、「何度も入院したし、何度も救急車で運ばれたし、いろんな思いをしているけど、まだ頑張っているよ」とかって今もメールをくれます。なるべくそういうふうに、つらい思いをしている人に返事ができたらいいなと思います。私がつらい思いをしたのも無駄じゃなかったと思うので。


――ナヲさんは今は母親になりましたが、当時親に悩みを言えなかったことを思い返して、どうしてもらえていたら打ち明けられていたと思いますか?

ナヲ:当時、私が制服の背中に誰かの足跡をつけて家に帰ったことがあって、それをうちの母が見ていて「ナヲちゃん背中に足跡ついているけどどうしたの?」って聞かれたけど「自分で踏んだかな」みたいに言って部屋にスーッと入ったりして。とにかく絶対に悟られちゃだめだと思っていました。もちろん「学校どう?」とか聞いてくれることもあったけど「楽しいよ」ってずっと答えていたし、心配かけちゃいけないって思っていましたね。でも、全然心配かけてもいいんだよって親になったら思う。言われないほうが寂しい。だからうちの子にもなるべく毎日話しかけるようにして、いいことも嫌なことも何でもいいからお母さんに話してねっていう関係性を築くようにしています。


――いじめってどうして起きてしまうんですかね。

ナヲ:自分がいじめられていたから思うんですけど、もしかしたら私も誰かをいじめていたかもしれないとも思うんですよね。いじめている側ってたぶん自分が他人をいじめているなんて思っていない人がほとんどなんですよね。今振り返ると、私自身あの時嫌な思いをさせてしまったんじゃないかなとか、謝りたいなみたいなこともあるし。自分がこれを言ったら相手がどう思うかって、当時誰からも言われたことなかったから、もう一回そういうすごく当たり前のことに立ち返って、自分が誰かをいじめていないかなと考えることが大事なのかなと思います。


――今、いじめられている子の親御さんに対するメッセージはありますか?

ナヲ:たぶん正解はないと思うんですけど、子どもがとにかくつらい思いを抱え込まないように話を聞いてあげることなのかな。子どもはサインを出していると思うんですよね。

いま上の子が小学4年で下の子が4歳なんですけど、最近上の子にも毎日寝る前に必ずハグしてあげているんです。そしたら、学校の話とか今までは我慢して飲み込んでいたような言葉を言ってくれるようになって、こういうのが足りなかったんだなと思って。ハグって7秒以上抱きしめることが大事らしいって聞いて。ギューッとこうやって抱きしめられると、自分て必要なんだって、すごく自己肯定感に包まれるというか。だから家族のハグはすごく大事だなって実感しています。

「私は行かなくてもいいと思っている」

――最後に今いじめに悩んでいる子どもたちにメッセージをお願いします。

ナヲ:本当に毎日つらいよね。行きたくないよね。顔も見たくないしね。私は行かなくてもいいと思っている。その世界だけじゃないから、絶対に違う世界があって、もっともっと楽しいところがあって、もっともっとあなたに合うところがきっとあるから。

この人なら話せるなっていう人、誰かお友達でもいいし、お父さんお母さんでもいいし、先生でもいいし、もしかしたら普通に隣に住んでいるおっさん、おばちゃんかもしれない、誰かきっと助けてくれるから、誰かにお話して、今こういう気持ちなんだけどどうしたらいいかなって話せる人を見つけて、ちょっとでもいいから話してみると世界が広がるかなと思います。

自分が幸せになる、ニコニコ笑って楽しく過ごせる世界が絶対あるので、そこを見つけていきましょう。

――ありがとうございました。

笑下村塾#元いじめられっ子から今いじめられている君へ
「子どもの自殺」を止めたい。カツアゲ、暴力、殺害予告―。著名人が、壮絶いじめ体験をYouTubeで赤裸々に語ります。
 
プロジェクト特設サイト↓
https://www.shoukasonjuku.com/ijime
 
<今苦しんでいる人へ>
まず相談してみよう。
いじめへの対処法は、人それぞれです。
上記のタレントさんと同じ向き合い方が正しいとは限りません。

まずは自分の状況を、だれかに相談してみることが大事。
親や信頼できる先生や大人に報告してみよう。
子どもの相談窓口もあるよ。

<主な子どもの相談窓口>
●よりそいチャット(LINE・チャット)
生きるのがつらい人の相談窓口。
https://yorisoi-chat.jp/

●チャイルドライン(電話・チャット)
18歳までの子ども専用の悩み相談窓口。
https://childline.or.jp/index.html
☎︎0120-99-7777

●BONDプロジェクト(LINE・電話・メール)
10代20代の生きづらさを抱える女の子のための相談窓口。
https://bondproject.jp/
☎︎070-6648-8318

●自殺総合対策推進センター
都道府県・政令指定都市別の、いのち支える相談窓口一覧
https://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php

その他​、厚生労働省HPも参考にしてみてください。
 
※親から虐待をうけている場合は、周囲の大人に相談したり、児童相談所全国共通ダイヤル(189)に電話しよう。

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます