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連載

#17 「きょうも回してる?」

盆栽をガチャガチャにしてしまった25歳の「クレイジー」経営者

普通のメーカーなら、労力がかかりすぎてやりません。

カプセルに入った状態の「ガチャ盆DRY BONSAI」
カプセルに入った状態の「ガチャ盆DRY BONSAI」

目次

カプセルに入っているのはまさかの盆栽でした。ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が、「ガチャ盆」を世に送り出した25歳の経営者の女性に聞きました。
ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

「最高にクレイジーなモノづくり」代表は25歳

ガチャガチャを手掛けるメーカーは現時点で30社程度あり、そのなかで毎月60タイトル300種類の商品が誕生しています。目まぐるしく商品展開が早いガチャガチャ市場はまさにレッドオーシャンの様相を呈してるといえます。

 そんな環境下、3年前にガチャガチャ業界に参入したのが、「最高にクレイジーなモノづくり」をコンセプトに掲げるブライトリンクです。代表の佐藤明香里さんは今年で25歳。私の知る限り、ガチャガチャメーカーで初めての女性経営者です。

 佐藤さんは大学生の時に、ブライトリンクを立ち上げます。ガチャガチャ業界に参入する前、佐藤さんはITサービスや日本酒など様々なビジネスに挑戦し、多くの失敗を経験したそうです。そのときに、佐藤さんは「カネなし、コネなし、実績なしの自分では、気持ちだけではどうにもならないことに焦りがありました」と話し、「長期的で壮大な目標は一旦捨て、今日1円でも売り上げを立てるために何をすべきかを考える」ことに気持ちを切り替えました。

ブライトリンク代表の佐藤明香里さん
ブライトリンク代表の佐藤明香里さん

ドライ盆栽との出会い「空港のガチャガチャに置きたい」

そして、2018年に佐藤さんにターニングポイントが訪れます。ドライ盆栽の出会いです。

ドライ盆栽はプリザーブドフラワーの盆栽バージョン。そのドライ盆栽の技法を生み出したドライ盆栽アート作家の藤田茂男さんと出会い、ドライ盆栽を販売していくことで佐藤さんの人生に大きく影響を及ぼします。

佐藤さんはドライ盆栽の販売を開始していくなか、外国人と盆栽の相性がいいと考え、「空港でガチャガチャが流行っている。そこにドライ盆栽を置きたい」と思い、商品化に向けて動きだします。

通常、ガチャガチャの商品化はメーカー独自で作る商品と企画を持ち込んで商品化するパターンがあります。
佐藤さんはその当時、ガチャガチャ業界のことを何も知らない状態。そこで取った行動が秋葉原や浅草のガチャガチャ売り場を訪れては、売り場の人に「この商品はどうやって仕入れて、どこの機械に入れているんすか」と聞き、ひたすら歩き回ったそうです。

また、あるメーカーにドライ盆栽の企画を持って行ったところ「うちじゃ、ガチャガチャは無理だね」と断れ、唇を噛みます。その時のことを佐藤さんは「原価の問題や量産の問題、本物の樹を入れることで懸念される問題など企画段階から様々な壁にぶつかり、想像していた以上に業界の厳しさを痛感しました」と話してくれました。

「ガチャ盆DRY BONSAI」
「ガチャ盆DRY BONSAI」

カプセルに乾燥苔、盆栽鉢、樹や葉…

現実と夢の狭間でもがく佐藤さんは、ようやくガチャガチャの機械の卸や商品企画を行うビームの社長に出会い、ドライ盆栽に興味を持ってもらい商品化につなげることができました。

佐藤さんが商品化に向け試行錯誤しながらようやく誕生したのが、今回紹介する「ガチャ盆DRY BONSAI」です。キャッチコピーは自分で作り上げるDIY盆栽キット。

この商品の驚くべき点は、カプセルに本物の盆栽が入っていることです。カプセルを開けると、乾燥苔、盆栽鉢、ドライ盆栽の樹や葉(実)が入っているんです。1個400円で本物の盆栽が手に入ります。

しかも、すべて手作りのなため、1個1個苔を分類し、枝を切った状態で袋に入っています。通常、商品の初回受注数は、少なくても数千個は軽く超えてしまうので、1個1個に商品を入れる手間を想像すると凄すぎます。
普通のメーカーなら、労力がかかりすぎてやりません。また、ガチャガチャは同じ商品が出てしまう場合があるのですが、ガチャ盆は形状が同じでも作り手によって違う作品ができるので、まさに一点物です。

ここまでできるのは「最高にクレイジーなモノづくり」を目指しているブライトリンクだからこそ、と言えます。

「ガチャ盆DRY BONSAI」のセット内容
「ガチャ盆DRY BONSAI」のセット内容

挑戦、まさに始まったばかり

この商品化が実現したことについて、佐藤さんは「何とも言えない高揚感でいっぱいでした。本当にカプセルトイという形で実現できたことには計り知れない喜びです」と話します。また、盆栽の魅力を「盆栽はその姿から色々な人の手、愛情、歴史を感じることができ、ある種の美術品のように感じます」と語る佐藤さんは、ガチャ盆について「手作りにこだわったのは、例えば親子で一緒に作ってみたり、手間をかけて作ってみたりすることで誰かのちょっとした思い出になってほしかったからです」と嬉しそうに話してくれました。

このガチャ盆は2019年の年末に発売されています。何十万個という受注数ではありませんが、3月の時点でショッピングモールなどで私も見かけていますので、手に入れてみてください。

今回取材をしていくなか、最初はなんて無謀なんだという印象でしたが、佐藤さんの話を聞いていくうちに年齢関係なく条件が揃ってから動いていたら、人生は終わってしまう。やりたいと思ったら動くことの大切さを改めて気付かされました。

最近では、ブライトリンクはガチャガチャのブランド「ガチャっと!」を立ち上げ、商品点数も増えてきました。佐藤さんのガチャガチャ業界への挑戦は今まさに始まったばかりです。

     ◇
ガチャ盆DRY BONSAIは5タイプ、1回400円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

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ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。
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