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IT・科学

ネット動画時代「ひな壇芸人」たちの行方は…スマホが変える芸人像

もはや顔出しも不要、中田敦彦のアバターの意味

ネット動画の人気がお笑い芸人に影響を与えている ※画像はイメージです
ネット動画の人気がお笑い芸人に影響を与えている ※画像はイメージです

目次

昨今、当たり前になったタレントのYouTubeチャンネル開設や動画投稿。その背景には、テレビ番組とネット動画の質や自由度の違いが関係している。大人数で出演するバラエティーのフォーマットから、地方局での個性的な芸人の番組へ。メディアの変化は芸能事務所を含めたタレント活動の変化も引き起こしている。(ライター・鈴木旭)

ブーム後、定番化したネタ番組

2010年代までテレビの画質向上・画面拡大が支持され、大人数のタレントが出演する番組が定着した。歌番組、クイズおよび教養バラエティー、改編期や年末年始の特番を除くと、バラエティーの主流は2つある。

その1つがネタ番組だ。1960年代に『お笑いタッグマッチ』(フジテレビ系)をはじめとする演芸番組が数多く放送されて「演芸ブーム」を巻き起こした。このフォーマットは1980年初頭の漫才ブーム、2000年代のネタ番組ブームへと引き継がれ、今では深夜帯をメインに定番化している。

若手を中心に数組の芸人が登場し、ネタを披露してブレークのきっかけを探る。常に旬な芸人を紹介し、番組の鮮度をキープし続けていると言えるだろう。

2000年代の“ひな壇芸人”

もう1つは、総合バラエティーおよびトークバラエティーの流れだ。

1981年にスタートした『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)によって総合バラエティーのフォーマットが確立し、とんねるず、ウッチャンナンチャン、ダウンタウンといった「お笑い第三世代」のバラエティー、『めちゃ2イケてるッ!』や『はねるのトびら』(ともに前同)といった番組へと引き継がれた。

2000年代に入ると、“くくりトーク”を特徴とする『アメトーーク!』(テレビ朝日系)、多数の芸人たちが集結する『リンカーン』(TBS系)といった番組が始まり、“ひな壇芸人”という呼称が生まれている。所属事務所を問わず、多数の芸人たちが互いに連携して1つの番組を盛り上げるという流れは、このあたりが起点となったと見て間違いない。

とくに『アメトーーク!』は、ネタやタレント性とは別の部分で若手にスポットを当てている。番組の肝である趣味や専門分野の“くくり”に入るため、切磋琢磨する芸人たちも現れた。徐々にバラエティーの傾向が変わり、同時に芸人に対するイメージも変化していった。

地方局、芸能人YouTuberの潮流

ネットが普及し、1990年代後半から徐々にテレビ番組のあり方も変化していく。2008年のツイッター日本語版開始などSNSの普及とともに、番組に対する意見がネット上で可視化されるようになると、視聴者のバッシングも目立ち始める。このような動きを受けてテレビの規制が厳しくなる中、2010年代に増えたのが地方局で番組を持つ芸人たちだ。

2013年10月に『なるみ・岡村の過ぎるTV』、2014年10月に『松本家の休日』(ともに朝日放送テレビ)、2015年10月に『本能Z』(CBCテレビ・2020年3月終了)といった番組がスタート。規模の大きい全国ネットにストレスを感じ、「言いたいことが言える場所」を求めたのだろう。

一方で2018年10月、キングコング・梶原雄太が“新人YouTuberカジサック”に扮してYouTubeチャンネル『カジサックの部屋』(現『カジサック KAJISAC』)を開設。当初は批判の声もあったが、翌年には目標として掲げた「チャンネル登録者数100万人」を達成する。

この成功によって、多数のタレントがYouTubeに参入し、2019年は「芸能人YouTuber開設元年」とも称された。


スマホが一般化した影響

YouTubeが一大プラットフォームとなったのは、スマホの利用者が一般化した影響抜きには語れない。

動画プロデューサー・明石ガクト氏は、著書『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』(幻冬舎)の中で「映像から動画への変革において、最も重要なポイントは『情報の凝縮』にある」と書いている。家でテレビを見るのと、ちょっとしたスキマ時間にスマホで動画を見るのとは、根本的に質が異なるということだ。

また、大きなスクリーンを大勢で視聴するシネマトグラフと比較する形で、小さなスクリーンを覗いて1人で視聴するキネトスコープが求められている点ついても言及している。YouTubeだけでなく、VRコンテンツの成長も含め、個人で楽しむ映像は今後ますます支持されることだろう。

そんな中、存在感を増しているのが、在京民放キー局5局が中心となって運営する無料配信サービス「TVer」だ。録画をせず、オンデマンドで見たい時に最新のテレビ番組を楽しめるうえ、地方局で制作された一部の番組も視聴できる。利用者にはメリットばかりだが、かつて芸人たちが地方局に求めていた“規制のゆるさ”は半減してしまった。TVerで配信されていれば、住んでいる場所と関係なく誰もが見られる番組になったからだ。

一方で、YouTube動画を思わせる演出を施した番組も生まれている。2020年5月~2020年12月まで放送されていた『田村淳のコンテンツHolic』(MBSテレビ)は、1つの画に映す出演者が少なく、ジャンプカットやテロップを多用する編集など、明らかに「TVerで見られる=スマホで視聴される」ことを前提とした番組だった。

マネージメント不要の時代へ

進化を問われているのはテレビ業界だけではない。2017年8月に東証マザーズに上場したUUUM(ウーム)から退所するYouTuberが少なくないという現状があるからだ。

UUUM は、HIKAKINをはじめとする多くの人気YouTuberを抱える大手マルチチャンネルネットワーク(以下、MCN)だ。とはいえ、個人でプロデュースできればマネージメントは不要になる。どんな業界にも通じることだが、今まで当たり前にあった芸能事務所や仲介業者のポジションの意義が問われていると言えるだろう。

先述の『動画2.0~』によると、アメリカのMCNでは、すでに何年も前から変化が起きている。YouTuberを演者として迎え、個人レベルでは作れない映像を制作する「新世代型MCN」へと成熟しているそうだ。「マネージメント」から「コンテンツメーカー」へと主軸をシフトした成功例と言える。

日本では、2020年からオリエンタルラジオ・中田敦彦と雨上がり決死隊・宮迫博之がタッグを組み、各YouTubeチャンネルでトークバラエティー番組『Win Win Wiiin』を配信している。個人の手で「企画・キャスティング・美術セットの発注までを担う」という1つのモデルケースを作った。

今後、日本のMCNがコンテンツ制作を手掛けるかは不明だが、YouTuberのマネージメントだけではなく何らかの強みを持つ必要性はあるだろう。

オリラジ・中田はアバターとして活動

中田敦彦はYouTubeの公式サブチャンネル『中田敦彦のトーク- NAKATA TALKS』の中で、今年4月から「顔出しを引退する」との意向を示した。今後はアバターとして活動を行っていくという。

現状、中田の活動のメインはYouTubeだ。1人で行うとなれば物理的に顔出しは必要なくなる。中田が発信する番組の本質にも影響はない。ならばアバターとして配信しても支障はないという考え方だ。

ネット動画と接点を持ったことで、タレントが1人で出演するどころか、ついに姿さえ見せないというところにまで至っている。もちろん先進的な中田ならではの行動だろうが、かつてテレビで活躍したタレントの急速な変化に驚かされるばかりだ。

今後、テレビとネット動画は二極化し続けるのか。それとも一部が融和し、新たなバラエティーを生むことになるのか。どちらにしても、それぞれのフィールドの変化がタレントの方向性を左右することは間違いないだろう。

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