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野田クリスタル、2千人の支援で市販ゲームを発売「泣きそうに…」

エンドロールで泣きそうに…「俺みたいな男でも感動するんだな」

「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん=丹治翔撮影
「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん=丹治翔撮影

目次

R-1に続きM-1チャンピオンと2020年の主要タイトルを立て続けに獲得したお笑い芸人、マヂカルラブリーの野田クリスタルさん。独学でプログラミングを学び、「ブロックくずして」や「頼むぜ!ボルダリング姉さん」、「りんたろー。とワニの村」など独創的なゲームを開発してきました。Nintendo Switch向けゲーム「スーパー野田ゲーPARTY」(2021年4月発売予定)の開発のために、クラウドファンディングで支援を募ると約2,000人から1,300万円以上が集まる結果に。そんな野田さんに、「ひとり開発」のモチベーションや今回のゲームで「泣きそうになった」という出来事を聞きました。
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「ゾクゾク感」が原動力に

――野田さんはプログラミングを独学で学ばれたとのことですが、ゲームを作り始めたきっかけは何だったのでしょうか。

これは諸説ありまして。ただ、ライブでネタ以外のものを披露しなくちゃいけない場があって、ゲームを作ってきたら面白いだろうと思って始めたのが最初ですね。

ネタとして取り入れたのは、2020年のR-1だけです。毎年R-1に出ていてピンネタをやってきたのですが、2019年が地味に忙しくてネタを作る時間がなくて、じゃあこれまで作ってきたゲームをネタにしてみようかなと思いました。

ゲームを作り出した頃からネタにできるだろうと思っていたんですが、実現するのは難しかったんですよね。
――ネックになっていたのは、どういった点でしょうか。

リアルな話、お金ですね。大会ではゲームを映すディスプレイも自分で用意しなくちゃいけないんですが、40万円くらいかかるので無理ですよね。40万出せるようになったので、やろうと思ったのが2020年でした。
――これまで多くのゲームをひとりで開発をされてきましたが、「ひとり開発」は管理が楽な一方、モチベーションが続きにくいところもあります。どんなことをモチベーションにされてきましたか。

ゲームのリリース前って、単独ライブをやる前みたいな感じになるんですよね。「これをリリースしたらどんな反応がくるんだろう」という気持ちで頑張っているというか。

個人的に大きかった開発が「愛方さがし」っていうアプリで、リリースまでに半年以上かかったんです。そこでモチベーションが続いたのは、「ゾクゾクしたから」だと思います。
――「ゾクゾク」とは?

なんかわからないんですけど、ハイになっていたんですよね。単独でもたまにその状態になるんですが、みんなに「こういうものが見れそう」っていう予想や前提みたいなものがある時に、驚いてほしいのかな。

「裏切られたけど、こういうの望んでいたんでしょう?」っていう信頼関係。それに応えられそうなものが作れて、ゾクゾクしてたんですよね。これ見たらうれしいだろうなっていう、いわゆる「おもてなし」ですよね

「うれしいでしょ?こういうのめちゃくちゃ好きでしょ?俺も好きだし」っていう。

プロジェクトだからこそできた「面白くて変なゲーム」

――プログラミング言語はHSP(Hot Soup Processor)を使われているとのことですが、開発するときに心がけていることはありますか?

HSPではかなりいろんなことができるんですが、PlayStationとかNintendo Switchのようなゲームを作ろうと思うとなかなかたどり着けないんですよね。だからあまりクオリティは求めていなくて、クオリティじゃない方にカロリーを使っていこうというのは思っています。
――以前リリースされた「すごい事になりそうだ!!組体操合戦」や今回の「スーパー野田ゲーPARTY」では、チームでのプロジェクトとなりました。エンジニアとして、ひとり開発との違いや難しさはどんなところにありますか。

自分がプロジェクトリーダーになるにしては、立ち位置が変だろっていうのはずっと思っていますね。ゲームを専門で作っている人だからこその感覚があるし、僕はお笑い芸人だから、みんながどうしていいかわからない状況ではあると思うんですよね。

だからこそ、めちゃくちゃ面白くなった気がしますね。僕が独りよがりでゲームを作っていたらこうはならないし、ゲーム会社がオンリーで作っていてもそうならないというような、すごく変なゲームになっていると思います。

夢中になった「ゲームの時代」が宝に

――野田ゲーを見て、ゲームやプログラミングに興味を持つ方もいると思います。エンジニアに必要だと感じる心構えなどはありますか。

やっぱり僕は、自分が好きだった「ゲームの時代」がすごく宝になると思うんですよね。思い出というか、自分がどんなゲームをやってきたか、という経験でしょうか。

僕の場合はファミコンやスーファミのゲームで「こんなの攻略本見ないと絶対クリアできないだろ」っていう、「初見殺し」のような理不尽なソフトをやっていた時代ですね。あんなゲームでみんな楽しんでほしいなって思います。

でも、やっぱり作ってみたら割とみんな何でも楽しんでくれるよっていうことですよね。ゲームを作りたいのか、作ったゲームを広めたいのかでだいぶ考え方が変わるとは思いますけど、ゲームが作りたいんだったら無限に作れるので、自分が楽しいと感じるものを作るのがいいと思いますね。
「スーパー野田ゲーPARTY」のクラウドファンディングには1,300万円以上の支援が集まった
「スーパー野田ゲーPARTY」のクラウドファンディングには1,300万円以上の支援が集まった 出典:silkhat

エンドロールで「泣きそうになった」

――「スーパー野田ゲーPARTY」を作るためのクラウドファンディングには、1,300万円以上、約2,000人の方から支援が集まりました。やはりこれは「野田さんだったら何か面白いものをみせてくれるはず」という期待の表れなのだと思います。こうした応援をどのように受け止めていますか。

プロジェクトは最初から「お金が足りない」というところから始まりました。Nintendo Switchでゲームを出すにしても普通は1億円くらいかけて作るところを、「一旦規模が小さくてもいいから出してみよう」っていう企画から始まったので、実現しただけで万々歳です。

ゲームのスタッフロールに、支援された方々の名前が全員載るんですよ。2千人分を全部流すのに9分くらいかかるので、最初は「いやエンドロール長」っていうボケのつもりでした

それが、こないだ初めてエンドロールを見たんですよ。2千人の名前が流れるじゃないですか、そしたら泣きそうになりまして。半年前の時と、半年かけて作った時の2千人はやっぱり違います。

たくさんの人でひとつのものを作るっていうのは、俺みたいなしょうもない男でも感動するんだなって思いました。

<野田クリスタル>
1986年生まれ、神奈川県横浜市出身。本名は野田光。相方の村上さんとともに、2007年にお笑いコンビ「マヂカルラブリー」を結成。2020年にR-1グランプリ、M-1グランプリ優勝。プログラミングが得意で、「野田ゲー」と呼ばれるオリジナルゲームも開発。クラウドファンディングで資金を調達し、Nintendo Switch向けゲーム「スーパー野田ゲーPARTY」を4月29日に発売予定。なお、人気の野田ゲーにはお笑い芸人の「デッカチャン」をモチーフにしたゲームがあるが、LINEでデッカチャンから連絡が来ても無視しているという。「お金をせびられても嫌なんで」と話す。

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