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エンタメ

のんさん、新作映画で向き合ったコロナのモヤモヤ「深刻だからこそ」

「外に脳みそをおいて」挑んだ脚本・監督・主演の三役

映画「Ribbon」で脚本・監督・主演をつとめる、のんさん=栃久保誠撮影
映画「Ribbon」で脚本・監督・主演をつとめる、のんさん=栃久保誠撮影

目次

女優で創作あーちすとの、のんさんが脚本・監督・主演をつとめる映画「Ribbon」が2021年に公開予定です。舞台は美術大学。卒業制作や就職活動が新型コロナウイルスによって翻弄される学生の心情を描きました。「深刻な話だからこそ可愛いもので届けたい」と語るのんさん。映画への思いを聞きました。

リボンの〝もそもそ〟したイメージ

今回の映画は「コロナがきっかけ」だった言うのんさん。自身が企画した音楽フェスがコロナによって中止を迫られたことを機に、映画のイメージが浮かんだといいます。

「緊急事態宣言によって仕事がストップして、中止か実行かの決断を迫られて。時間が経つにつれ何かを作りたい欲が生まれてきたんです」

創作あーちすととして、中森明夫さんの長編小説『キャッシー』(文芸春秋)のカバー装画を手がけたり、SDGsを広めるためのキャラクターをデザインしたりしているのんさん。美大にはオープンキャンパスに行くほど「入学したかった」時期もあったそうです。

「映画の主人公を考える中で、会社員でもなく大学生。中でも美大生だったら自分にもできるかなと思って。昨年、多摩美術大学と武蔵野美術大学「見のがし卒展」の最終日にうかがうことができたんです。いきなり行ったんですけど、出展していた学生さんや先生方が快く話を聞かせてくれて。〝がっつり取材〟できました」

作品を考える中で浮かんだのがリボンのイメージ。映画のタイトルでもあるリボンが象徴的に使われます。

「かわいいものというイメージの中に、どろどろ、もそもそといった眉をひそめてしまう要素があるのが面白いなと。子どもの頃からリボンが大好きで、年齢を重ねてからも宇野亞喜良さんの描くリボンが大好きで。映画に登場する美大生のまわりはコロナによって嫌な空気、うっ屈したものがあるけど、ダークなものにしたくなかったので、リボンにくるくると動いてもらいました」

その中で生まれた映画のテーマが「モヤモヤ」だという。

「リボンのアイデアを思いついた時、自分もモヤモヤしていたし、もつれていたと思います。だからこそ、リボンの持つかわいらしさで昇華できるんだという可能性を映像にしたかった。嫌な感情だけで終わらせたくない。何かを創作する時、いつもそういう気持ちがあります。私にとってかかせないモチーフの中のひとつです」

映画「Ribbon」で美大生を演じた、のんさん=(C)「Ribbon」フィルムパートナーズ
映画「Ribbon」で美大生を演じた、のんさん=(C)「Ribbon」フィルムパートナーズ

「外に脳みそをおいて」臨んだ三役

今回、脚本と監督と主役をとつめるにあたって「外に脳みそをおいて」臨んだと振り返ります。

「桃井かおりさんからは、『自分の脚本・監督した作品に主演するというのは、誰よりもイメージを共有できる役者がいるということだから楽なのよ』と言われました。実際は大変でしたが、自分のイメージ通りに動く人間が1人いるというのは楽しいなと思いました」

とはいえ、演技で涙を流しながら「カット!」と指示するのは「恥ずかしかったです……」。今回は演技の専門家であるアクティングコーチをつけて、切り替えをはかったという。

「自画自賛になりますが、ちょっとつかめたかな、という感じはあります」

監督として撮影に臨むのんさん=(C)「Ribbon」フィルムパートナーズ
監督として撮影に臨むのんさん=(C)「Ribbon」フィルムパートナーズ

シリアスな場面ほど大事にしたユーモア

現実世界では感染防止の取り組みが広がる一方、〝自粛警察〟のような問題も生まれています。映画には、コロナについての〝ちょっとした摩擦〟が描かれますが、肌を少しも出さない完全防備の登場人物の描写は、どこかコミカルでもあります。

「深刻なことだからこそ、ユーモアを交えて柔らかく表現したい。どんなに落ち込んだ状況でも、家族との普通の会話や楽しげなことで心をほぐしたい。そういう思いを込めました」

シリアスな場面になるほど意識したのは〝可愛いもの〟だという。

「感染防止の対策は自分のためだけではなく、まわりの人のためでもある。でも、そこまで意識して受け止められないと、制限された日常生活にストレスを感じやすくなってしまうのかもしれません。その時、リボンみたいな可愛いもので表現すれば、どろっとした暗い感情だけではなくなるかもしれないと思って」

作品では消毒液を使いまくるシーンも登場。過剰とも言える行動を尊重しながら、それを見つめる冷静な視点も入れ込むことで、のんさんらしいコメディーが生まれています。

「嫌なことではなく笑えることで伝えた方がいい。多少、驚く行動でも、過剰で行き過ぎた表現の方が、ゆるい考え方もガチガチな考え方も、どう捉えるか観る人に委ねられるかなと思いました。そうする事で、息苦しく感じる感染対策もポジティブに捉えられる気がします」

シリアスな場面になるほど意識したのは〝可愛いもの〟だったという=栃久保誠撮影
シリアスな場面になるほど意識したのは〝可愛いもの〟だったという=栃久保誠撮影

「世界に恩を売っている」気持ちで

2020年7月には「SDGs」の裾野を広げていく「SDGs People」に選ばれたのんさん。コロナで揺さぶられる日々は、「誰一人取り残さない」という「SDGs」の理念をあらためて考えるきっかけになったようです。

「最近、ずっと通っていたカフェが閉店してしまったんです。めっちゃくやしかった。でも、外出自粛で自分もしばらく行っていなくて。そこまで頭が回っていなかった」

映画では、自身の葛藤をそのままぶつけたという。

「映画、音楽、アート、舞台など、そういうものを見て、聴いて、今の自分が形作られています。だから、〝不要不急〟だと思いたくないなあって。〝必要必須〟なんだと信じて、映画に取り組みました」

「SDGs People」になった時は、SDGsの敷居を下げる言葉として「地球に恩を売る!」というキャッチフレーズを打ち出したのんさん。今回、コロナをテーマにした映画作りを通して考えたのは、次の言葉でした。

「世界に恩を売っている!そう思えたら、少し窮屈な感染対策もポジティブに考えられるんじゃないでしょうか」


     ◇

映画「Ribbon」の応援PVとして、樋口真嗣監督「映画と生きる 映画に生きる」が3月19日、公開されます。「映画と生きる 映画に生きる」では、緒方明監督、尾上克郎監督、犬童一心監督、片渕須直監督、白石和彌監督、市井昌秀監督、沖田修一監督、枝優花監督が、スタッフ役として出演。のん監督を支える姿が描かれます。詳しくはのんさん公式のんYouTube(https://www.youtube.com/channel/UCj4G2h4zOazW2wBnOPO_pkA)、日本映画専門チャンネル公式サイト(https://www.nihon-eiga.com/)で。
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