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#66 コミチ漫画コラボ

「字が汚い」コンプレックスが化けた!「万年筆の沼」で気づいたこと

いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」
いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」 出典: コミチ

目次

マンガ投稿サービスを運営する「コミチ」とwithnewsがコラボし、「#わたしの沼」をテーマに作品を募集した企画で、「字が汚い」というコンプレックスから万年筆の「沼」にハマった様子を描いたいくたはなさんの「コンプレックスからはじまった私の沼の話」が大賞に決まりました。

手書きが少なくなった時代ですが、「自分の字」の味わい方を教えてくれます。
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「沼」へ導かれた一言

いくたさんが万年筆と出会ったのは2年ほど前。「文豪とか…字の……上手な人が使うやつな。多分」。手に取ったものの、自分とは関係のない筆記用具だと感じていました。

いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より
いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より 出典:コミチ

というのも、学生時代の苦いエピソードが思い出されたからです。

先生に面と向かって「男子も込みでクラス一字汚いよ」とぶっちゃけられたあの日、自分の字を嫌いになりました。

筆記用具を選びに来たお店で、「書ければなんでもよくて、見た目がかわいければヨシとしていた」いくたさんですが、万年筆の箱に書いてあったメッセージにひかれます。

その言葉に導かれるままに購入。「沼」へ近寄ることになりました。

いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より
いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より 出典:コミチ

インクカートリッジをつけ、「カリカリカリカリ」と書き始めたところ「即堕ち」。

「字を書くっていうか生まれてる…っ?!」
「字が生きてる気すらする…!!」

万年筆沼、ガラスペン沼、インク沼……そこから沼へどっぷり沈んでいくのに時間はかかりませんでした。

いくたさんはこう伝えています。

「自分の字のコンプレックスが…化けますよ」
「自分の字に愛着もてると思う」

いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より
いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より 出典:コミチ

「字が汚い」に至ったワケ

いくたさんの「字が汚い」コンプレックスのきっかけは、高校2年生のころ。テスト後、仲の良かった先生に問題の解説を聞きに行ったときのことでした。

「字が汚い」という言葉はショックでしたが、いくたさんにも心当たりはあったようです。

「いい点数をたくさん取りたくて、慌てて文字を書いていた時期がありました。何か埋めれば点数につながるのではと思って」

小学生のときには、県の硬筆コンクールで賞を取ったこともあるいくたさん。習ってはいませんでしたが、字はきれいな方だと思っていました。

中学入学後、テストで点数を取ることが重要になってきたころから変化があったと言います。

「テストではわからない問題でもとりあえず埋める。早めに1周解いて2周目で精度を上げるとやっていたら、字を丁寧に書いていられませんでした」

暗記するために教科書を3回書き写していたこともありましたが、ゆっくり書いていては時間が足りません。いくたさん流の学習・解答方法で臨んだ結果、文字のきれいさの優先順位は下がっていきました。

いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より
いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より 出典:コミチ

「高校生になると書道の授業もありません。文字の美しさが問われる授業はないため、評価に入らない。自分の中でどうでもいいということになりました」

字を丁寧に書いてこなかったことの影響は、大学生・社会人になってからもありました。就職活動のエントリーシートや履歴書では、お手本となる文字を印刷して、上からなぞりながらきれいな文字を書いていたそうです。

現在は漫画家として活動しているいくたさんですが、コミックエッセイを投稿しているインスタグラムには、フォロワーから「字が読みにくい」と指摘が来たこともあると言います。

「やっぱり自分は字が汚いんだなと、インパクトは大きかったです。1人でも字が読みにくいと思っていたら、一般的にも読みにくいのかなと思います」

書き心地に「うっとり」

そんないくたさんですが、字を書くこと自体は嫌いではありません。むしろ手書きの日記や手帳が好きで、子どもを妊娠中に日々の体調の変化や気持ちを書き記していました。

初めて万年筆と出会ったのは、4人目の子どもの産休中です。

「入院中の日記をつけたくて、気分が上がるような文房具を一式持って入院しようと思っていました」

そんな中、たまたま出会った万年筆。高価なものというイメージがありましたが、手に取ったものは1000円ほどで、書き心地が気になって試しに購入しました。

「文字が汚い私が持っているのは恥ずかしくない?と思いましたが、『書くのが楽しくなる』と書いてあったのと、ペン先に顔が描いてあって、文房具好きにはたまらなかったので買いました」

帰宅後すぐに使ってみると、その書き心地に感動。今までにない感覚に「うっとり」したと言います。

いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より
いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より 出典:コミチ

「私の買った万年筆はペン先が細かったので、カリカリしていて文字をしっかり描いている手応えがあり、今まで適当に描いていた一角一角の重みとしっかり向き合っている感覚がありました」

インスタグラムで万年筆を検索して、たくさん種類があることやインクの販売会などイベントが開催されていることを知りました。

毎週買いに行ったり、情報を追いかけたり、深い沼に落ちていったいくたさん。「『インクを飲ませる』というファンもいて、愛が深いなぁと思いました。私が知っている部分は入り口でしかありませんでした」

愛用の道具たち=いくたはなさん提供
愛用の道具たち=いくたはなさん提供

ゆっくり、気持ちの整理整頓

現在、万年筆は35本ほど、インクはその倍の数をコレクションしています。

仲の良い友人や妹には「布教」もして、見事同じ沼の仲間となりました。インスタグラムに載せると、「恩師に贈りたいがどういうものがいいか」「入門編には何がいいか」など聞かれるようになったそうです。

いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より
いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より 出典:コミチ

いくたさんは、万年筆で文字を書く時間が「新鮮」だと話します。

「ボールペンだと殴り書きになりそうなところでも、万年筆はぽつりぽつりと進められ、ゆっくり書くことで気持ちの整理整頓になります。私は自分の気持ちをノートに残しておくことが好きだったんだなと思いました。モヤモヤを字にすると、根本的な原因や自分の内面が見える。有意義な時間になっています」

いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より
いくたはなさんのマンガ「コンプレックスからはじまった私の沼の話」より 出典:コミチ

いくたはなさんのインスタグラム:@iktaa222
いくたはなさんのTwitter:@suitondiary

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