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3歳児神話、離乳食、誤飲…祖父母と埋める「子育て常識」のギャップ

『祖父母に伝える子どものホームケア 子育ての先輩へ!! 子育ての今』資料
『祖父母に伝える子どものホームケア 子育ての先輩へ!! 子育ての今』資料 出典: 教えてドクター佐久

目次

「子育ての常識」はこの30〜40年で大きく変化しています。そして、子育て世代が祖父母世代と交流するとき、この「ギャップ」が事故などの大きな問題になることも。

小さな子どもには危険な食べ物、寝方、おむつの取り扱いなど注意が必要なポイント。これらを紹介することで「ギャップ」を埋めようとする医師らの情報発信が話題です。「中の人」を取材しました。 (withnews編集部・朽木誠一郎)
 
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小さな子どもに危険な食べ物がある

出典:教えてドクター佐久
出典:教えてドクター佐久
出典:教えてドクター佐久
出典:教えてドクター佐久
Twitterで大きな反響を呼んでいるのが、長野県佐久医師会・佐久市による「教えてドクター!」プロジェクトチーム( @oshietedoctor )が投稿したこちらの資料です。

この資料では、まず小さな子どもにとって危険な以下の食べ物が、その理由とともに紹介されています。これらは祖父母世代にとっては危険という認識が乏しい場合があるものです。例えば祖父母に子育ての手伝いを頼むとき、そうと知らずに与えてしまうことも考えられます。(以下、原文ママ)

はちみつ:ボツリヌス中毒のリスクあり、1歳未満に与えちゃダメ。加熱してもダメ。
生の魚(お刺身):年齢制限はないが、乳幼児期は食中毒のリスクに注意。
銀杏:3歳未満で10個以上摂取するとけいれんや嘔吐などが起こるリスクあり。
ナッツ類、飴、ブドウ、ミニトマト、こんにゃくゼリーなど:5歳以下はのどに詰まらせるリスクがある(※)。ナッツ類は食べさせず、ミニトマトやブドウなどは4等分など細かく切って与える。

※消費者庁 News Release (令和3年1月20日) 「食品による子供の窒息・誤えん事故に注意」

その他、誤飲についても「昔はタバコ、今は家族の薬。」「加熱式タバコはキットが小さいため誤飲しやすい!」「ゼリー状トイレ洗浄剤やボール状洗濯用洗剤はお菓子やおもちゃと見分けが付きにくい。」など、近年までの変化を紹介して注意喚起をしています。

「3歳児神話」には合理的な根拠なし

また、育児方法と栄養の今昔についても説明されています。小児科医の森戸やすみさん( @jasminjoy )の著作『祖父母手帳』(日本文芸社)も参考にしたそうです。
 

ここでは、「うつぶせ寝」は乳幼児突然死症候群のリスクを避けるために今はNGで、「仰向け寝」にするべき、ということや、「おむつ外し」はかつて2歳までに完了するべきと言われていましたが今は慌てなくてよく、「子どもの発達に応じて、のんびり」でよいこと、「3歳児神話(3歳までは保育園に入れずに母親が子育てに専念するべきとする意見)」には合理的な根拠がなく、子どもを預けることに罪悪感を持つ必要はないことなどが説明されています。

また、授乳については「赤ちゃんがほしがるタイミングでほしがるだけあげてよい」が正しく、かつて信じられていたように3時間ごとにする根拠はないこと、ベビーフードは「すべて手作りである必要はまったくない」し、ダシを取るところから気をつけなくてはいけないとする意見には「取るべきなのはダシより睡眠」とバッサリ。これらのアドバイスからは子育て世代を応援してくれていることがよく伝わります。

予防接種、アレルギーへの誤解も

さらに、子どもが病気やケガをしたときの対処法も、今と昔で「子育ての常識」が大きく変わっています。これらも命にかかわる情報ですから、しっかりとアップデートしなければいけません。
 

もし子どもがけいれんしたとき、かつては「揺さぶって意識をはっきりさせる」のがいいと信じられていましたが、揺さぶってはいけません。平らなところに寝かせて、安静にするのが正解です。

また、昔は水疱瘡などに「かかった方がいい」として予防接種を軽んじる考え方がありましたが、これもNGです。このような病気には後遺症のリスクがあるので、しっかり予防接種で「かからないようにする」ことが必要です。

食物アレルギーについては、お母さんが子どものアレルギー発症予防のために妊娠中や授乳中に特定の食べ物を避けることは医学的な根拠がない、とハッキリ伝えています。バランスよく摂取することが重要です。食物アレルギーを心配して離乳開始を遅らせる必要もありません。

子育ての知識は「価値観そのもの」

この資料はあくまでも子育て世代と祖父母世代の「子育ての常識」の「ギャップを埋める」ためのもの。祖父母世代には30年で子育ての常識、そして環境が大きく変わっているとした上で「できないこと、やりたくないことは断る勇気」「パパとママの子育て方針を聞いておく」「必要以上に手や口を出さない」などとアドバイス。祖父母世代が「よかれと思って」したことが、子育て世代にとっては上から目線として捉えられてしまう可能性を、やさしく説明しています。

子育て世代には、「子育て知識はその人が子育てをする中で育まれた価値観そのもの」「頭ごなしに『古い』『間違っている』と声高に伝えると、価値観を否定されたと感じてしまうかも」とアドバイス。その上で、「祖父母はいざというときの選択肢として」「子育ての違いは配偶者ではなく実子から伝える」などの現実的なポイントも紹介しています。そして、この資料が「『今はこんな感じだよ』とマイルドに(祖父母世代に)理解していただくきっかけになれば」と結びます。

「教えてドクター!」の中の人の一人である小児科医の坂本昌彦さんは、今回の資料を作成・公開した経緯を「きっかけは、佐久市から『祖父母向けの子育て資料』があるといいのではとご提案をいただき、子育て支援課を通じて依頼を受けたことです」と明かします。

「そこで私たちのチームで内容について相談しました。『子育て世代』『祖父母世代』のギャップがSNSで話題になるとき、少なからず、お互いに対して『今の子育てを分かってない!』『役に立ちたいと思っているのに!』というやりとりが目立ち、コミュニケーションエラーの存在を感じていました。

そこで、両者のコミュニケーションをマイルドにできればと。共通して参考にできる資料があれば、祖父母世代も今のやり方を抵抗感なく受け入れ、子育て世代もストレスなく子育てできるのでは、と考えました。表現はチームメンバーで細かく見直し、押しつけているような表現をマイルドに修正するなど推敲を重ねました」

また、今回の資料は「紙に印刷して祖父母世代に渡しやすいように、A4サイズのもの、PDFデータも用意しました。プリンターのないご家庭はコンビニのマルチコピー機にあるネットワークプリント(ファミマとローソン)を通じて印刷可能です(登録番号はOSHIETEDOCTOR1)。ご家族で情報を共有しながら、マイルドに知識をアップデートしていただければと思います」としました。

・2021年1月31日13時58分に「教えてドクター佐久」アカウントが資料を修正し、再投稿したため、あわせて本記事を修正しました(2021年1月31日15時15分)。

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