連載
#10 「きょうも回してる?」
「スタバ」目指したガチャガチャ売り場…ジャズ流しシックなデザイン
大人向けのガチャガチャは、今では当たり前にように売り場で見かけるようになりました。
では、大人向け商品は昔はなかったかというと、そうでもありません。精巧な生物や動物、そしてサブカルチャー的な要素を含んだ商品などがありました。
ただ、1990年代までは、どうしてもガチャガチャは子どものおもちゃというイメージが強く、かつキャラクター商品が多いため大人向け商品は目立ちませんでした。
しかし、2000年代に入ると、大人向けが注目を浴びるようになります。そのきっかけをつくったのが、2006年に設立した株式会社キタンクラブ。キタンクラブは大人向け商品を中心に展開するメーカーで「土下座シリーズ」や「コップのフチ子」などがヒット商品となり、メディアにも取り上げられようになりました。
それと同時に、売り場も変化していきます。
ガチャガチャの売り場といえば、40代や50代の方なら、駄菓子屋さんや文房具さん、酒屋さんを思い出す方が多いはずです。駄菓子屋さんなどでしか見かけることが少なかったガチャガチャは、時代とともに、スーパーマーケットや量販店にも売り場が広がっていきます。
2000年代に入ってから売り場に大きな変化がありました。それは、ドリームカプセル株式会社が2011年に業界初の常時スタッフのいるテナント店舗をイオンモール大垣に出店したことです。
このショッピングモールに売り場ができたことは、子どもから大人まで気軽に商品を買える機会を作り、ガチャガチャ業界を盛り上げることになります。その後、株式会社ルルアークが「ガチャガチャの森」という店舗でショッピングモールに次々と店舗を拡大していきます。
この頃から、メーカーも大人向けのアイテム数を徐々に増やし、イベントも開催していきました。
そのひとつの例として、2015年3月には、大手玩具メーカーのバンダイがメーカー初の「オトナ女子」向けカプセルトイ販売コーナーを設置。20~30代の女性をターゲットにしたカプセルトイ(ガシャポン®)の販売コーナー「Brilliant Capsule(ブリリアントカプセル)」をルミネエスト新宿店で、期間限定で開催しました。
売り場の機械はオフホワイトとゴールドを基調とした装飾を施したほか、平均的な身長の女性の方が、しゃがまなくても商品を購入でき、スカートやハイヒールの方も気にせず回せる工夫がしてありました。
ガチャガチャに馴染みの薄い女性でも立ち寄りやすい世界観を演出した、このイベントは、ガチャガチャ業界では初めての試みです。
その後、このイベントは横浜や吉祥寺でも開催されました。
実際に、バンダイは2011年度の購入者構成比では、全体の4%に満たなかった「オトナ女子」層が、2014年度では16%と約4 倍まで拡大することに成功したと発表しています。
昨年には、メーカーのケンエレファントが本格的に大人向けのガチャガチャ売り場をスタートしました。
7月18日には「ケンエレスタンド秋葉原店」を東京のJR秋葉原駅構内に、7月30日には「ケンエレスタンド新橋店」を新橋駅構内にオープンしました。仕事帰りのビジネスマンやOLの方にも気軽に寄ってもらえる大人向け商品を集めた売り場です。コロナ禍でも多くの人がガチャガチャを回しに来たと聞きます。
大人向けガチャガチャの売り場について「今あるガチャガチャの売り場の常識を変えたかった。スターバックスでコーヒーを飲んでいると、おしゃれでステイタスを感じますよね。あの雰囲気を出したガチャガチャ売り場にしたかったんですよ」と話すのは、ケンエレファントのミニチュア事業部部長の青山雄二さん。
売り場を作る上で、幼児やキッズなどの要素を削ぎ落し、デザインをはじめショーケース、バックライトに至るまで、すべて1から設計したそうです。
売り場にあるガチャガチャの機械はブラックで統一し、ハンドルはゴールドになっています。新橋店ではジャスの音楽が流れているほど、大人を意識した売り場づくりになっています。
さらに、20年12月5日には、もともとガチャガチャなどを販売していた上野駅構内にある「上野ランド」を大人向けガチャガチャ売り場に刷新しました。すべてをビリジアンに統一した大人のための特別感ある雰囲気を醸し出しています。そこでは、137台の機械が設置されていました。大人向け商品は売り場の展開ともにますます認知度が高まっています。
売り場展開がしやすいガチャガチャ売り場は今後も増え続けるとともに、大人向けはワクワクという体験ができるコト消費の傾向が強くなっていくほか、サブカル要素を含んだ大人向けの多様化がますます進んでいきます。
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