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連載

#9 「きょうも回してる?」

ガチャガチャで再現した「悪の研究所」限界攻めた〝渾身のアイテム〟

表現したかった「ファンタジー」

タカラトミーアーツの「ガチャぶんのいちシリーズ 培養ポッド」
タカラトミーアーツの「ガチャぶんのいちシリーズ 培養ポッド」

目次

小さなカプセルの中に思いも寄らぬ大きさのガチャガチャが入っていることがあります。ミニチュアではありつつも、オリジナルな使い方を工夫できる「培養ポッド」を、ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材しました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

「出落ち」が大事なオリジナル

日常生活でガチャガチャを目にする機会がここ2~3年で増えてきました。2020年は新型コロナウイルスの影響でテナントが空き、そこにガチャガチャの売り場が入るケースが多くなったことで、ますますガチャガチャを目にする機会が増えています。

メーカー側は、いかに売り場に来たお客様の目を引きつけ、自社商品を購入するきっかけを作っていくかが問われます。あるメーカーの取材では、お笑いの用語でもある「出落ち(登場した瞬間がすでに笑いを取る状態)」が大事だと聞きました。

ガチャガチャは圧倒的にキャラクターが多いです。そのなかで、オリジナル商品は数が少ない上、商品の惹きつける魅力を伝えなくてはいけません。
オリジナルには、学校の試験のように正解はありません。正直、売れるかどうかわからない未知数な要素を含んでおり、白黒つける明確な答えは存在しません。ただ、そこにはどれだけ作り手の想いや熱量があるかが問われます。そして、その想いや熱量が伝わることでお客様のワクワク感となり、購入につながっていきます。

コンセプトは「お金を出してもなかなか買えないもの」

オリジナル商品の魅力について、「キャラクターとは違い認知力がないため、いかに商品への想いを理解してもらい、会社から商品化OKをもらえるかが勝負どころです。そして世に出しさえすれば、お客様の反応で真価を問えるのがオリジナル商品の魅力。アイテムとしてもカプセルに入りさえすれば、それ以外何も制約がないところが良いですね」と話すのは、タカラトミーアーツのガチャ事業部の分野大介さん。

タカラトミーアーツは毎月25タイトルの商品を発売し、そのうち、2~6タイトルくらいがオリジナル商品になります。

オリジナル商品を手がける分野さんのアイテムのひとつに、「ガチャぶんのいちシリーズ」があります。このシリーズは、1/12のフィギュアに合わせて遊んでもらえるような小物を、1/12の世界で表現した商品です。

このシリーズの魅力は商品コンセプトにあります。そのコンセプトは「お金を出してもなかなか買えないもの」。ここが面白い。最近のオリジナル商品には、インテリア家具や家電をミニチュア化した精巧な商品が多くあります。それも確かに魅力的ですが、ガチャぶんのいちシリーズには、RPGのゲームに出てくる宝箱「伝説の宝箱」や西洋の王様が座る椅子を再現した「王座」、そしてこのコラムで紹介したガチャガチャの機械「ガチャ2Ez PART3」などがあります。実際に本物の宝箱を見た人は少ないし、王様の椅子は買えません。ガチャガチャの機械も一般の人には購入できません。

タカラトミーアーツのガチャ事業部の分野大介さん=同社提供
タカラトミーアーツのガチャ事業部の分野大介さん=同社提供

75ミリカプセルに10センチ

今回紹介する商品「ガチャぶんのいちシリーズ 培養ポッド」も、現実世界では手に入らないものが再現されています。

商品化のきっかけについて、分野さんはアニメを見ている時に、アニメに出てくる培養ポッドが目が留まり「培養ポッドに悪の研究所のような面白さを感じ、ファンタジーを表現できるのはないか」と考え、商品化に至りました。

また、ガチャぶんのいちシリーズの特徴のひとつは、組み立てるとカプセルよりも大きい商品になること。

この培養ポッドも実際に高さが10センチほどあり、「75ミリのカプセルに入る大きさのなかで、カプセルよりも大きくするためには、どのようにパーツを分割すれば良いのかを考えました。いかにカプセルに収めるかを考えるのが大変でした」と笑っていました。
分野さんはこのシリーズを作るときに、(組み立てたときに) カプセルよりも大きいものができるかどうかばかりを常に考え研究していた時期があったそうです。ここに、分野さんの商品への熱量のすごさを感じさせます。

「ガチャぶんのいちシリーズ 培養ポッド」
「ガチャぶんのいちシリーズ 培養ポッド」

メーカーが想像しなかった使い方も

20年9月に発売された培養ポッドは新型コロナウィルスの影響もあり、初回の生産数は少なかったそうです。しかし、発売されると徐々に人気が出始め、再販売につながりました。

分野さんは「初回から生産数が多い方がいいというのが本音です。しかし、問屋さんにとって、オリジナル商品はなかなか数が読めません。培養ポッドは実際に発売してみたら反響が良かった。お客様が買ってくれたから再販につながりました。大げさに言うと、商品の魅力が世の中を動かしたアイテムですね」と話します。

また培養ポッドは、もともとフィギュアと合わせて遊んでもらうために作ったものですが、発売してからお客様の方から新しい使い方が発信されています。アクリルキーホルダーを入れたり、ジュエリーケースとして活用したり――。商品の楽しみ方をアレンジできることも、商品の魅力のひとつだと私は思います。

ガチャぶんのいちシリーズの今後として、分野さんは「今までの組み立てサイズの限界が140ミリ程度です。その壁を越えて150ミリ、160ミリと、カプセルよりどこまで大きいものが作れるかに挑戦したいです」と笑いながら野望を語ってくれました。

「ガチャぶんのいちシリーズ 培養ポッド」(中のフィギアはイメージ)
「ガチャぶんのいちシリーズ 培養ポッド」(中のフィギアはイメージ)

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「ガチャぶんのいちシリーズ 培養ポッド」のラインナップは、ラインナップは、「ブロンズ(LED:グリーン)」、「ブロンズ(LED:イエロー)」「メタル(LED:レッド)」、「メタル(LED:イエロー)」、「ゴールド(LED:レッド)」、「ゴールド(LED:グリーン)」の全6種類。価格は1回300円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

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ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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