ネットの話題
「百貨店が売っていたのは、希望でした。」レシート広告に込めた思い
お祭りなくても喜ぶ顔が見たくて
株式会社そごう・西武の正月広告「百貨店が売っていたのは、希望でした。」が、ネット上で話題になっています。写っているのはレジでもらう1枚のレシート。よく見ると、そこにはたくさんの「希望のリスト」が現れていました。広告の狙いについて、広報担当者に聞きました。
元日の朝日新聞などに掲載された、そごう・西武の全面広告「百貨店が売っていたのは、希望でした。」。
中央に1枚のレシートの写真。そこにはこんな商品名と、購入量が印字されています。
それだけ見ると、意味が分からないものですが、このレシートには続きがありました。
広告は、新聞への掲載だけでなく、特設サイトでも公開されました。
ツイッターで紹介されると「泣けてきた」「今年最初に優しい気持ちと希望が持てました」などと評判になりました。
中には「去年西武で娘の浴衣買いました……。お祭りなくても喜ぶ顔が見たくて」「私もマスクで見えないのわかってて口紅買いました」「私も口紅買ったよ。未来の希望を知らず知らずに買っていたんだなー」など自分の経験を振り返るコメントも寄せられ、注目を集めています。
2020年は緊急事態宣言の中、そごう・西武も4月半ばから約1カ月にわたって、全店で、食品を除いて休業しました。5月23日にようやく営業を再開しました。
レシートに印字されたのは、そんなコロナ禍での「特殊な状況下での営業」となった2020年6月1日~11月30日までの販売実績の一部だそうです。
口紅なら西武池袋本店の化粧品売り場、浴衣なら西武渋谷店やそごう横浜店の「婦人ゆかたセンター」など、各品目ごとに対象の西武・そごうの店舗・売り場で販売実績を集計したものでした。
広告に込めた思いについて、そごう・西武の広報担当者はこう話します。
「コロナウィルス感染拡大防止によるさまざまな制約の下で、お客さまにとっても私たち従業員にとっても、思うようにいかないことばかりの1年でした」
広告を制作するにあたって、そんな厳しい状況の中で、買い物に来てくれた人々の姿がヒントになったそうです。
「お客さまは、日々の生活を少しでも明るく楽しいものにするために、ご自分らしくさまざまな工夫をされ、制約のない自由な生活が戻ってくることを思い描きながら、百貨店でお買い物をされていました」
さまざまな制約がある日々の中で、物を買うという行動に込めた思いを改めて考えました。
「お客さまの望みに思いを巡らしたときレシートに記載されるお買い物の記録は、お客さまおひとりおひとりの、それぞれに個性的でご自分らしい、『希望』の象徴なのではないかという考えに至りました」
奇しくも、2021年の年明けは、政府が再び、緊急事態宣言の発出を検討するというニュースが駆け巡りました。まだコロナ禍の収束には至りませんが、広報担当者は次のようにつなぎました。
「広告には、2021年は制約のない、自由で喜びに満ちた年であったほしいという願いとともに、たとえコロナ下の厳しい環境ではあっても、私たちは自分たちの仕事を通じて、お客さまの希望のリストを叶えるお手伝いをしていきたい。そうした思いを込めました」
そごう・西武は、2020年の正月広告でも、炎鵬関を起用した「さ、ひっくり返そう。」で話題になっています。
一読するとネガティブな文章が、下から読むと正反対の意味になるものでした。
今回の広告も、同じチームが制作を担当したそうです。
昨年の取材には、こんな言葉を寄せています。「生き方すべてにおいて、周囲からのさまざまな制約にとらわれてしまうのではなく、あなたらしくいてくださいというメッセージを込めました」
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