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#1 SDGsイノベーション部

SDGsバッジ付けて終わってない? 「平凡」が生むイノベーション

「こんなの面白いな」レベルから進めればいいのです。

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目次

多くの企業で浸透してきている「SDGs」。ですが、いまひとつイメージがわかないという人もいるかもしれません。数々の新規案件を立ち上げ、SDGs関連のプロジェクトにも関わる一般社団法人こども食堂支援機構の代表理事・秋山宏次郎さんが解説します。初回は、「SDGsのイノベーション」についてです。

SDGsでイノベーションって起こせるの?

新しい教科書にも載っている”SDGs”を知っていますか? SDGsはSustainable Development Goalsの頭文字を取ったもので、国連が2030年までに達成する目標として定めたものです。大雑把に言うと「このままだと世界は持たないから、2030年までに持続可能なこんな世界にしよう!」という目標ですね。ここには「貧困を無くそう」や「海の豊かさを守ろう」など17個のゴールが設定されています。

出典:朝日新聞デジタル

若い層はSDGsを学校で習い始めていますが、経団連が各企業トップにSDGsを意識するよう促すなどビジネスマンの間でも注目を集めています。理念への共感はもちろん、実現していないゴール達成を目指すことで新しいイノベーションが起こると考えられているからです。

しかし、SDGsの理解を起点にイノベーションを起こせている企業は多くありません。SDGsのバッジを社員に配ったものの、次の具体的なアクションが思いつかない企業も少なくありません。一生懸命考えているのに企業がSDGsでイノベーションを起こせないのはなぜでしょうか? 大きな理由の一つがSDGsやイノベーションを難しく考え、また1人で抱えすぎていることだと思います。

SDGsという目標が国連で採択されたのは、この目標が単一国家では解決できない規模だからです。まして1企業の1社員が単独でできることは限られています。真面目な方ほど自分の近い範囲だけでイノベーションを起こそうとしてしまいますが、これでは新しいものは生まれません。

また、会社の仕組みとして外部と連携が難しいケースも散見されます。会社員時代の私も、協業したい会社の社長と会えるイベント参加の許可が下りず、有休を使って参加したことがありました。100%自社の事業にしたいからと、外部の投資家から出資オファーいただいた時も門前払いでした。結局事業は失敗しています。

半径5mでイノベーションを起こそうとする人に対して私が良く言っているのは「馬と馬を掛け合わせても馬」ということです。

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ユニコーンも分解すれば馬とツノ

イノベーションやベンチャー界隈では「ユニコーン企業を創りたい」という人が結構います。ユニコーン企業とは、未上場で時価総額10億ドル以上のベンチャー企業のこと。誰も見たことが無い幻の獣のように希少な企業ということで名づけられたそうです。

イノベーティブで“メッチャすごい”ベンチャー企業の象徴として使われるユニコーンという言葉ですが、ユニコーンを生みだすのと同じくらいイノベーションを難しく捉えている人が多いのではないでしょうか。でも冷静に考えてください。幻獣も分解すれば馬にツノをくっつけただけなのです。

世界を変えるイノベーションも同じです。スマホは我々の生活を劇的に変えましたが、これも要素に分解すれば「電話」と「パソコン」。革新的なイノベーションも分解すれば多くの人が知っている「平凡」と「平凡」の掛け合わせでできています。難しく考える必要はありません。

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世界最大級のイノベーションは“悪ふざけ”から生まれた

もちろん、スマホのようにインパクトが大きいイノベーションを狙って創るのは大変です。しかし、GAFAのように市場を席巻する企業も、必ずしも最初からそれを意図してスタートしてはいないのです。

例えばFacebookの構想が生まれる元になったのは、ザッカーバーグ氏が“悪ふざけ”で創ったFacemashというサービスでした。これは氏が通っていたハーバード大学の学生の容姿を格付けするもので、大学が保有していた顔写真データを不正に利用した氏は大学から謹慎処分を受けています。

このような不正な手法は擁護できるものではないのですが、注目すべきはFacebookのようなガリバー企業が“悪ふざけ”が契機で誕生しているということです。たくさんの人がイノベーションを起こそうと血眼になっている中、10代の若者の“悪ふざけ”が世界最大級のイノベーションにつながったというのは皮肉な話です。

そう考えると気が抜けますよね。いいんです。少しだけ気を抜いていきましょう。

「こんなの面白いな」レベルの軽い発想は創造力に直結しますし、軽いノリの発想も実現に向けてチャレンジすれば必ず社会からフォードバックを得られます。ヒットにならなくても、その経験は糧として残るんですね。三振を恐れてバットを持たない人は永遠に大打者になれません。

GAFAのような大打者は今も山のように失敗を繰り返していますし、むしろ失敗を恐れず打席に立ち続けたから大打者になったのです。イノベーションのおみくじは大吉が出るまで引き直せるんですね。

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「本」+「寄付」でベストセラーに

かく言う私も会社員時代に革新的なイノベーションを起こそうと思って失敗した苦い経験があります。挫折を経て「こんなの面白いな」レベルのことを趣味で社外の人に提案しているうちに、その多くが実現してもらえるようになりました。メッチャ緩い気持ち。その半数以上はSDGsにも関連づけられるソーシャルプロジェクトです。その中には、SDGs書籍の監修もあります。

発端は本の制作陣からの依頼でした。ソーシャルプロジェクトを色々実現していてSDGsにも詳しい人だからということで、突然Facebookで監修依頼が来たのです。「はじめまして。こども向けSDGs本の監修お願いします」と。冷やかしかと思ったらガチでした。

それなりに良い固定金額でオファーいただいたのですが、瞬間的に思いついた「より面白くなる方法」を逆提案しました。ちょうど私は全国のこども食堂を勝手に支援する取り組みもしていて、その予算を何とかしたいと思っていました。今回はこども向けの書籍ということだったので、監修費をもらうのではなく「売り上げの一部がこども食堂のための寄付になる形式」にしてもらったのです。

この形式は制作陣にもメリットがありました。購入するか迷っている人の背中を、寄付が押せる可能性が生まれるのです。また本を監修した話はなんとなく気恥ずかしいのですが、私もこどもたちのためにと周りに本を紹介するようになりました。

予想外だったのが書店の人たちの動きです。売れば売るだけ寄付が増えるということで、本業を通じたSDGs活動として書籍を目立つように置いてくれる書店さんがあったのです。

”平積みSDGs”をしてくれる書店さんの力もあってか、テレビをはじめとする一部マスコミでも積極的に紹介してくれました。結果として、監修した「こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本」は5ヵ月で7刷のベストセラーに。7刷というとなんだか偉そうですが、これに貢献した仕組みも分解すれば「本」+「寄付」というありふれたパーツなのです。


こどもSDGs(エスディージーズ) なぜSDGsが必要なのかがわかる本(Amazonリンク)

この連載もあなたの”ツノ”かもしれない

繰り返しになりますがイノベーションを起こすのは「平凡」と「平凡」の掛け合わせです。そしてイノベーションの成功率は「平凡」カードの枚数と掛け合わせ方で決まります。何も自分のカードだけで創る必要はありません。馬のカードだけしか持っていなくてもツノを持つパートナーを探せばよいし、ツノを持ってる人がいなくても羽を持っているパートナーがいれば同じ幻獣であるペガサスが創れるかもしれません。

イノベーションにはそのくらい気楽なノリも有効だし、私が発起人になっているソーシャルプロジェクトも企業や自治体と一緒に創ってきたもの。全てを1人で創ったものは皆無です。むしろ私の思い付きを実現できそうな組織と組織を結びつけ、自分は見守るだけという仲人のような関与も多いです。

全世界と協力するくらいの気持ちでいれば、全世界のカードの掛け合わせが見えてきます。良い組み合わせが見えたらカードの持ち主に打診すればいいし、断られても失うものは何もありません。ツノに断られたら羽にアタックしましょう。

日本のSDGs推進部や新規事業部はイノベーションの責任を1人で背負いすぎ・背負わされすぎです。我々が単独部署で創れるイノベーションには限界があります。1人で真面目に考えるより、外部の人と一緒にワイワイ行動する方がSDGs達成にもイノベーションにも100倍効果的です。

ということで、私はこれからも思い付きをいろんな人と実現していくし、自分をツノにする他の人の思い付きがあれば積極的に乗るつもりです。成功も失敗もするだろうけど、その過程をリアルタイムで書いていこうと思っています。なので、もしそれらの過程で参考になるところがあれば是非自分の“馬”に融合してみてくださいね。みんなでSDGsを達成していきましょう!

秋山宏次郎

一般社団法人こども食堂支援機構・代表理事。大手企業の社員時代から他社や行政に様々な提案をし、10以上の新規プロジェクト発起人として多くの案件を実現に導く。SDGs関連のイベントも主催。監修した「こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本」は5ヵ月で7刷のベストセラーに。その他、大学での授業、講演、執筆活動など幅広く活動している。

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withnewsでは、秋山さんのコラムを不定期で配信します。
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