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連載

#8 「きょうも回してる?」

ガチャガチャに透かし彫りの理由 アーティストとコラボ「鹿を…」

「ギリギリを攻めています」

「空想生物図鑑Ⅱ‐神鹿(しんろく)-」
「空想生物図鑑Ⅱ‐神鹿(しんろく)-」

目次

近年、アーティストの作品発表の場は個展だけにとどまらず、インターネット上にも広がりを見せています。ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)によると、そんな中でインターネットだけでは伝わりきらない「立体作品」の魅力を、身近なところから広める手段の一つにガチャガチャがあるといいます。おまつさんが解説します。
ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

アーティストの魅力伝えるガチャガチャ

個人で活動するアーティストは、SNSが登場したことで発表の場が広がりました。

インターネットが発達する以前は、個人で活動するアーティストが自分の作品を知ってもらうためには、何らかの賞を受賞したり、人が集まるイベントに出展することが必要な場合も多く、場所も期間も限られていました。

しかし、Twitterをはじめ、Facebook、Line、InstagramなどのSNSが広まることで、自分の作品を発表し活動できる範囲が圧倒的に広がりました。

一方で、イラスト等の二次元の作品でしたらインターネットを活用して広めることもできますが、造形物等の立体感のある作品については、インターネットだけでは魅力を伝えきることが難しいという側面もあります。
そんな立体感のある作品の魅力を一人でも多くの人に広めるための手段のひとつに、「商品化」があります。

そこで登場するのが、ガチャガチャです。

「作品広めるきっかけに」

「カプセルトイには、アーティストの作品(アナログな作品)を一気に拡散する力があります」と話すのは、株式会社SO-TA(以下、SO-TA)の代表の安藤幸臣さん。

安藤さんは大長商事株式会社(現・株式会社ルルアーク)でカプセルトイ部門の営業を経験したのち、自分で商品を作りたいという想いで一大決心し2009年に会社を立ち上げました。

SO-TA(@SOTA170317)は企業コラボ、アーティストコラボ、オリジナル等の商品を手掛けており、とくに個人のアーティストとのコラボには力を入れています。私が驚くポイントは、SO-TAの商品は、新進気鋭の個人のアーティストを発掘する先見の明、そして造形のディテールをしっかり作り込んでいることです。

ガチャガチャの魅力について、安藤さんは「カプセルトイはお客様の反応が良くも悪くもダイレクトに返ってきます。お客様がアーティストを知るきっかけにもなります。また、アーティストの作品が広まれば、アーティストも喜びます。実際のアーティストの作品は高額ですが、カプセルトイなら比較的容易く手に入れることができます」「僕たちは、商品を手にとったお客様から反応を頂くことが喜びです。その結果、アーティストと僕たちはWin-Winの関係を築くことができます」と話します。
 

透かし彫り技法を再現

今回紹介するのは、造形作家のムラマツアユミさん(@ayumi_M580)とコラボした「空想生物図鑑Ⅱー神鹿(しんろく)ー」です。

当時美大生だったムラマツさんがデザインフェスタで出展した作品を見て、「誰もが見てもすごいと思わせるデザイン力と造形力がある」と感じた安藤さん。そこで声をかけたのが初めての出会いでした。

当時キツネを祀るお稲荷の商品が各メーカーから数多く出ておりヒットしていたことから、SO-TAと取引のあるお客様から、「奈良といえば鹿。鹿を作ればいいのではないか」と提案されたことが鹿をモチーフとした商品開発のきっかけになります。
ただ、それがただの鹿なら他の商品に埋もれてしまいます。

そこで、差別化を図るためにも、「空想生物図鑑Ⅰー古代甲冑魚ー」の作者であるムラマツさんに声をかけ、奈良の春日大社の鹿のイメージとして作品として制作したそうです。

そんな背景から、この商品を制作する際、安藤さんがムラマツさんにお願いしたのは「鹿を作ってください。ただそれだけです」。

ムラマツさんに全てをまかせており、安藤さんのアーティストへの多大な信頼とリスペクトを感じます。デザイン力ももちろんですが、とくに生活の中で受け継がれてきた伝統文化である「透かし彫り技法」を再現したことが、この商品の一番の特徴です。
 
透かし彫り技法があしらわれた部分
透かし彫り技法があしらわれた部分

最初は「無理」と断ったけど…

ただ、アーティストとのコラボ商品を作るケースでは、一般的に商品の量産化を視野に入れた時、現実的に造形のディテールが思うように再現できないケースが多いです。

安藤さんも、発注したムラマツさんの造形を初めてみたとき、最初は「無理です」と断ったといいます。「技術的にも難しいし、原価的にも厳しかった」
しかし「ここが作品の肝なので、なんとしてでも再現してほしい」というムラマツさんの作品への想いを汲み、SO-TA所属のモデラー(デザインをもとに実際に形にする人)と試行錯誤しながら、なんとか透かし彫りを再現しました。

ムラマツさんは、この透かし彫りについて「古くから受け継がれたものが、時代の流れという言葉を免罪符に急速に失われていく今、私はもう一度『日本』という国で継承されてきた美しいものに目を向けたかった」とコメントしています。

「空想生物図鑑Ⅱ‐神鹿(しんろく)-」
「空想生物図鑑Ⅱ‐神鹿(しんろく)-」

ガチャガチャをきっかけに個展へ

安藤さんは改めて神鹿の商品化を振り返って「アーティストのこだわりをいかに形にするか、それを社内で一貫して行えることがSO-TAの強みです。確かに1個500円でもかなり大変ですが、ギリギリを攻めています。僕たちだけで作ると、透かし彫りを入れようという発想にはならない。逆にやめようという発想になる」と笑っていました。

この神鹿は、パート1の反応が良かったため、パート2が来年1月下旬に発売されます。

なぜアーティストとコラボするのかと聞くと、安藤さんは「カプセルトイをきっかけに、お客様がアーティストの作品に興味を持ち、実際に個展に足を運んでもらったりする流れをつくりたいんですよ。そして作品を買ってもらえれば、アーティストの活動の幅も広がっていくかもしれないですよね」と話します。

アーティストの想いを限りなく形にすることでお客さんにもその想いが伝わるSO-TAの商品に、今後も目が離せません。

     ◇
「空想生物図鑑Ⅱー神鹿(しんろく)ー」のラインナップは、銀麟、黒麟、白麟の3種類。1回500円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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