連載
#9 マスニッチの時代
ツイッターで広がった「検察庁法」の意味 〝共有〟から〝行動〟へ
「平成」で盛り上がった去年との違い
2020年にツイッターで起きた出来事として思い出したいのは、「#検察庁法改正案に抗議します」の拡散です。新型コロナウイルスなど社会全体がストレスを抱える1年だった中、ツイッターではどのような動きがあったのでしょうか? 「平成最後の日」の〝共有〟で盛り上がった2019年の比較から、ツイッターが〝行動〟の場として使われた2020年を振り返ります。
12月22日に発表された2020年の「#Twitterトレンド大賞」では、1位に「新型コロナ」が入る中、2位には「#検察庁法改正案に抗議します」がランクインしました。
特徴的だったのは、テレビや映画の第一線で活躍する芸能人らも参加したことです。
きゃりーぱみゅぱみゅさんの投稿(その後、削除)に対しては、歌手であることを理由に政治的な発言をしないよう指摘する投稿があり、本人が「相当失礼ですよ」と反論する場面も。
政治について、多くの人が発言していいし、自分の意見を訴えてもいいという当たり前のことが、あらためて強調される出来事になりました。
すみません。
— SAYAKA AKIMOTO (@akimotooo726) May 9, 2020
大きなお世話です。
ありがとうございます。 https://t.co/tAZ3rO3Rh2
2020年の「#Twitterトレンド大賞」では、「緊急事態宣言」「マスク2枚」「東京都知事選」などもトップ20位に入りました。
2019年の「#Twitterトレンド大賞」の1位が「平成最後の日」、2位が「ラグビー」、3位「イチロー」だったのに比べると、2020年は〝硬派〟な言葉の存在が目立ちました。
特に2019年の上位の三つは、どれも何かを訴えるというよりは、同じ瞬間を〝共有〟する要素が強い言葉といえます。
発信した後のリアクションは求めず、一緒に盛り上がることが主な目的になっています。
これは、アニメ「天空の城ラピュタ」で、主人公のせりふに合わせて「バルス!」とつぶやく現象に似たものがあります。1秒あたりのツイート数として世界記録を出したこともある「バルス!」は、ツイッターのカルチャーに近い使い方と言えそうです。
それが2020年には、ニュースにひも付く言葉が増えました。2019年から2020年の変化からは、コロナや政治の問題など、個人レベルで黙っていられない問題が集中した1年だったという事情が見て取れます。
筆者も参加した2020年の「#Twitterトレンド大賞」の審議委員会には、ネットや世の中の流行に詳しいメディアの編集長らが議論を重ねました。
一方、専門家である審議委員でも知らない単語がランクインしていたことが印象的でした。
たとえば14位に入った「ツイステ」。これは、スマホゲームの「ディズニー ツイステッドワンダーランド」の略称です。
アニメやゲームの世界は、熱狂的なファンがいる一方、接点のない人との関心の差が大きくなりがちなジャンルです。
19位に入った「#sailormoonredraw」も、その一つです。
これは、「美少女戦士セーラームーン」のシーンのイラストを自分で描いてSNSなどに投稿する際、使われるハッシュタグです。
このようなファンの熱は、新作を発表する際、運営側も意識します。「ツイステ」の場合、ツイッター上でカウントダウン企画を実施。発売日に向けて主要キャラクターのイラストを公開するなど盛り上げをはかりました。
その結果、瞬間風速的にトレンドワード入りしても、ファン以外の人には何のことかわからない、という状況も生まれています。
【キャンペーン&召喚】
— 【公式】ディズニー ツイステッドワンダーランド (@twst_jp) December 17, 2020
「イデア バースデーキャンペーン」を開始いたしました。
「イデア バースデー召喚」では、期間限定でSSR イデア[おめかしバースデー]が登場します。
開催期間は各キャンペーンによって異なります。
詳細はゲーム内お知らせをご覧ください。#ツイステ #ディズニー pic.twitter.com/05lqEETW4O
コアなファンにおける盛り上がりがある一方、「#検察庁法改正案に抗議します」のような〝行動〟を求める動きは、ツイッターが果たす役割をあらためて浮き彫りにしました。
ツイッター上では、ユニ・チャームが企画した生理用品を紙袋に入れない活動「#NoBagForMe」のように、企業主導でジェンダーなどの問題に一石を投じる取り組みも生まれています。
趣味趣向の多様化や、社会の分断化が問題視される時代。メディアではなくプラットフォーム上の方が、社会的課題に関心を持ってもらいやすい側面があるのは事実です。
一方で、それができるのは、みんなで盛り上がる〝共有〟の魅力がツイッターにあるからだとするなら……。2021年の「#Twitterトレンド大賞」では、もう少し、〝古き良き〟ツイッターカルチャーを見てみたい気持ちにもなります。
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