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IT・科学

1909

「フェイク広告」にお金が流れる〝業界事情〟だまされないためには?

現代版〝バイブル商法〟の闇

ダイエットやサプリなど、法律違反が疑われる「フェイク広告」はなぜなくならないのか…… ※画像はイメージです
ダイエットやサプリなど、法律違反が疑われる「フェイク広告」はなぜなくならないのか…… ※画像はイメージです

目次

法律違反が疑われる体験談や、無断使用と思われるタレントの画像を使った「フェイク広告」は、なぜなくならないのか。「フェイク広告」が生まれる理由、違法スレスレなのに出回るのには〝業界の事情〟があるといいます。新型コロナウイルスで自宅生活が増え、ネットに慣れていない人が、あやしい通販サイトにだまされるリスクも高まる中、「フェイク広告」をなくすにはどうすればいいのか。ユーザーはだまされないため何を気をつければいいのか。ネット広告業界に20年携わる加藤公一レオさんに解説してもらいました。

加藤公一レオ(かとう・こういちれお) 1975年、ブラジル・サンパウロ生まれ。アメリカで育ち、西南学院大学を卒業後、三菱商事入社。大手広告会社のアサツーディ・ケイ(ADK)などを経て、2010年に売れるネット広告社を設立。
加藤公一レオ(かとう・こういちれお) 1975年、ブラジル・サンパウロ生まれ。アメリカで育ち、西南学院大学を卒業後、三菱商事入社。大手広告会社のアサツーディ・ケイ(ADK)などを経て、2010年に売れるネット広告社を設立。

今のネット広告業界は「フェイク広告」だらけ

私はかれこれ20年ほど広告業界にいるが、ぶっちゃけ、今のネット広告業界は違法な「フェイク広告」だらけだ。

有名人の写真を無断で使用したり、ニセの口コミを掲載したり、薬機法違反の文章表現を使用したり…うその情報や行きすぎた表現で消費者をだます“悪質”な広告が横行している。

2020年7月には、健康食品の通販サイト運営会社の従業員や広告代理店の社長らが逮捕され、業界関係者に衝撃が走った。容疑は薬機法違反で、健康食品にもかかわらず医薬品のような効果効能があるかのような広告表示を行ったことが原因だった。

この事件では、広告主である通販サイト運営会社の従業員だけでなく、広告代理店の社長や社員までもが逮捕されたという点が異例であった。この報道を受けて、「下手をすれば自分も逮捕されかねない」と震え上がった業界関係者は多かったはずだ。

“悪質”な「フェイク広告」の蔓延(まんえん)はもはや社会問題と化していて、この事件はあくまでも氷山の一角にすぎない。ちょっとネットサーフィンをすれば、薬機法等に抵触するような広告がた
くさん出てくる。

ネット広告業界における「フェイク広告」問題は今に始まったことではないが、コロナ禍でますますネット通販が身近になり、ネット通販の利用者数や利用者1人あたりの利用頻度が増えた昨今では、消費者はこれまで以上に“悪質”な「フェイク広告」の危険にさらされているのだ。

コロナ禍でテレワークを含め在宅時間が増えたため、中高年層を含むネット広告慣れしていない層のインターネットとの接触機会が増え、誇大な広告表現を鵜呑みにしてしまうケースが増えている。

「フェイク広告」はなぜ生まれるのか

なぜ消費者をだますような「フェイク広告」が後を絶たないのかというと、ネット広告の報酬発生の仕組みが関係している。

ネット広告には、消費者が広告を経由して商品を購入した場合、広告主(通販会社等)が、その広告を掲載しているメディアや個人等に対し、申込件数や売上額に応じた成果報酬を支払うという仕組み(成果報酬型広告)が存在する。

こういった成果報酬型広告の場合、広告を掲載する一部の“悪質”な広告代理店やアフィリエイターは、より多くの報酬を得るためにあらゆる工夫を行う。売るための工夫がエスカレートした結果、有名人の写真の無断使用や薬機法違反の表現といった不正や違法行為につながるのである。

なかでも私が問題視しているのが、「記事型広告」だ。「記事型広告」とは、ニュースサイトの本文下などに掲載されている、一見すると記事のような広告のことで、これがあらゆる不正の温床になっている。最近ではSNSのフィードにも頻繁に出てくる。

インフィード広告等をクリックすると、一見個人ブログのような広告サイトに遷移し、あたかも第三者による体験談風に特定の商品がおすすめされている。その広告サイトにある「試してみる」「購入する」といったボタンを押すと、最終的に広告主(通販会社等)のサイトに遷移し、商品購入ができるようになっているという仕組みである。

把握するのは不可能

このように意図的に消費者を“誤認”させることで荒稼ぎをしている「記事型広告」だが、「どのサイトにどんな広告が出ているのか、誰も把握しきれない」ところに、ネット広告業界の闇がある。

多くの広告主(通販会社等)はきちんと法律を順守した広告を制作し、掲載しているが、「記事型広告」の場合は、広告代理店や広告運用会社、アフィリエイターが、広告主(通販会社等)の許可なく “勝手”に作成して掲載するのである。

世の中には何百万というサイトがあり、何万という広告主(通販会社等)があらゆる広告を出稿している。

広告代理店や広告運用会社、アフィリエイターなどが広告主(通販会社等)に無断で広告を掲載する以上、自社の商品にもかかわらず、広告主(通販会社等)はどこにどんな広告が出ているのか把握できなくなっているのだ。

もっと言えば、サイトを運営するメディアでさえも自社のサイトに掲載されている広告を100%把握できているわけではない。実際に、運営元がしっかりしているサイトであっても、メディアが気付かないうちに「フェイク広告」が掲載されていたことが発覚し、対応に追われるケースが後を絶たない。

では、なぜ、このような「フェイク広告」にお金が流れてしまうのか。

それは費用対効果が高いからだ。

商品申込みが入った分だけ報酬を支払えばいい成果報酬型広告は広告主(通販会社等)にとって効率が良く、費用面でリスクのない広告手法である。

一部の悪質な広告代理店やアフィリエイターは、広告費を大きく先払いしてもらっており、その成果で報酬金額を得ているので、報酬が得られない場合事業が成り立たなくなるケースも多く発生している。

そのため悪質な記事型広告を制作して無理やり申込率を上げているが、広告主(通販会社等)はどこにどんな広告が掲載されているか把握しきれない一方、製品が売れたことは把握できるため、発生した成果に対しては結局、報酬を支払ってしまうのである。

「記事型広告」は現代版の“バイブル商法”

通販のネット広告を支援している私にとって、ネット通販そのものへの消費者の信頼を損なう“悪質”な「記事型広告」は、絶対に見過ごせない問題だ。

1960年代、健康食品や代替療法に関して、効能や体験談等を書いた本(いわゆる「バイブル本」)を実質的な広告として、法令の規制をくぐり抜けようとする“バイブル商法”が問題化した。

「記事型広告」は、まさに現代版のバイブル商法である!いかにも広告っぽく見えない体験談風の「記事型広告」が「バイブル本」の代わりとなって、意図的に消費者を“誤認”させているのだ。“誤認”というとソフトに聞こえるが、ニセの口コミを使ったり、薬機法等に違反する過剰な表現を使って消費者を“誤認”させたりする行為は“詐欺”と同じである。

「フェイク広告」の温床となっている“悪質”な「記事型広告」に対しては、国による規制やメディアおよびアドネットワーク(メディアが使う広告配信システム)による対策が必要であると私は考える。

具体的には、サイトのURLにあるインターネット上の住所であるドメイン規制によって成果報酬目当ての第三者による「記事型広告」を排除するべきである。

現状、「記事型広告」と広告主(通販会社等)のサイトは、まったく異なるドメイン配下にあることがほとんどである。このような、広告主のサイトと「記事型広告」が別々のドメイン(住所)で運営されている状態に対して、広告主(通販会社等)の自社ドメイン以外での「記事型広告」の掲載を禁止することにより、 広告主によるコントロールがきき、“悪質”な「記事型広告」の99%以上が消滅する。

「フェイク広告」を締め出す流れが加速

実際に、大手プラットフォームではすでに「フェイク広告」の温床となっている「記事型広告」を締め出す動きが出ている。

Yahoo!は、広告主(通販会社等)の掲載URLと同一ドメイン配下にない「記事型広告」の出稿を“禁止”している。これによって「記事型広告」を掲載できるのは実際にその商品を販売している広告主(通販会社等)のみになり、成果報酬目当ての第三者は「記事型広告」を出すことはできなくなった。

また、個人情報の取り扱いはますます慎重になっていくだろう。

Googleもサードパーティーと呼ばれる広告主とは関係ない第三者が提供するデータのクッキー(ユーザーがどのサイトを訪れたかなどがわかるデータ)利用を今後“廃止”することを発表している。これにより、広告主(通販会社等)以外の第三者はユーザーのサイト訪問履歴などを取得できなくなり、「リターゲティング広告(サイト訪問履歴に応じた追跡型広告)」ができなくなる。

ここ数年大流行した「記事型広告」だが、今後ますます「フェイク広告」を排除する流れが強まることにより、広告主(通販会社等)以外の第三者による「記事型広告」は駆逐されていくだろう。

今後は「純広告」への原点回帰が進む

あまりにも悪質なものが多いため、ここまでずっと「記事型広告」を悪者にしてきたが、「記事型広告」そのものは違法ではなく、広告主(通販会社等)が各種法令や権利を守った上で適切に掲載するのであれば、まったく問題ない。

ただ、現在の状況を考えると、ネット広告のメディア戦略においては、信頼度の高い法人媒体、特に「純広告」への原点回帰が進む流れは止めようがないと予測する。

「純広告」というのは、ユーザーのクリックや商品購入に応じて成果が発生する成果報酬型広告とは異なり、特定のメディアが保有広告枠を一定期間購入し、広告を掲載する仕組みである。

「純広告」は言ってみれば新聞広告やテレビCMのオンライン版のようなもので、「リターゲティング広告」等のアドテクが生まれる前からあった手法だ。

広告主のサイトに直接遷移する「純広告」であれば、広告主(通販会社等)が知らないうちに第三者によって勝手に「フェイク広告」が掲載される心配はないし、ユーザーのサイトの訪問履歴に関係なく広告が掲載されるため、プラットフォームによるクッキー規制の影響を受けることもない。

なぜなら、「記事型広告」は“バイブル商法”であり、「リターゲティング広告」は“ストーカー広告”だからである。結局、リアル(オフライン)の世界で犯罪的な商売、人を不快にさせるような商売は短期的にはうまくいっても、長続きしないのだ。

現時点で一般のネットユーザーが悪質な記事型広告に惑わされないようにするためには、ネット広告のURLを確認することが有効である。

その広告が広告主(通販会社等)によって正式に掲載されているものであれば、社名やブランド名などが広告URLのドメインに入っていることが多い。

一方、ネット広告のドメインが社名やブランド名とかけ離れた文字列で構成されていて、サイト上にある申込ボタンを押した際にまったく異なるドメイン配下にあるサイトに遷移する場合、そのネット広告はほぼ広告主(通販会社等)以外の第三者が掲載しているものと考えていいだろう。

また、「楽して痩せられる!」「必ず痩せる!」といった断定的な表現や誇大な表現が複数含まれている広告や、「1ヶ月で5kg痩せる」「たった1週間でシミが消えた」など具体的な数字や期間を出している広告、ダイエット系・美容系の商品でビフォーアフターの写真を出している広告なども薬機法等に抵触する可能性があるので要注意だ。

オフラインであれ、オンラインであれ、最終的には、フェアで本質的なビジネスが生き残っていくのではないだろうか。

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