連載
#7 「きょうも回してる?」
大ヒットガチャガチャ「ネコのペンおき」メーカーが大事にしてること
コストをかけて仕込んだシークレット
今回紹介するのは、クオリア(東京都豊島区)から発売された「ネコのペンおき」です。
この商品は初春に発売され、多くの店舗では即日完売を記録しました。そして 9月に再販が決定し、12月の発売分を合わせて累計45万個を突破しました。10万個でヒット商品と言われるガチャガチャ業界では異例のオリジナル商品のヒット商品と言えます。
クオリアの代表の小川勇矢さんは「売り上げは後からついてくるもの。クオリアしかできない商品を作ることが大事」をモットーにしています。とくに商品のわかりやすさを追求しており「商品には説明はいらない。見た目で欲しいと思えるシンプルさ」を大切にしていると話します。
この商品もネコがペンを持っているという、誰でもわかるシンプルさ。しかも、商品のきっかけもシンプルで、小川さんは「テレビで『サザエさん』のエンディングでネコのタマちゃんを見たんです。ネコがペンを持った姿は面白いよね。これ、イケる!ひとりで勝手にテンションが上がっていました」と直観で商品化を決定しました。
ガチャガチャ業界の営業を経験して起業した小川さんには、すでに商品の見せ方を熟知しており、この商品もすでにアイディアが浮かんだ瞬間に、POPのイメージも見えたと言っています。
特徴は見た目の可愛らしさだけではなく、ペンの置き具合も徹底的にこだわり、簡単にペンが置けるような緻密な造形を施している点です。
ただ、この商品にはお客様を喜ばしたいと思う小川さんの商品への仕掛けが面白いのです。
それは、再販が決定したときに、単なる追加販売では芸がないと考え、POPや商品のカタログにも載っていない、「隠れ」シークレットを商品に入れたことです。
通常は商品のカタログにはシークレットの商品が記載してあります。しかし、クオリアは違いました。わざわざ「隠れ」シークレットを作るためにコストをかけ、200分の1の確率でシルバーのネコを入れたのです。これは今までのガチャガチャにはなかった試みです。
Twitterでは商品を買ったお客様から「全部揃えたのに、銀のネコがあるなんて!」と話題になり、メルカリでは高額で販売されるほど注目を浴びたそうです。(※高額転売はメーカーは推奨していません)
確かにネコの商品はこれまでたくさん発売されていますが、クオリアはSNSの活用が上手かったことがヒットした要因だと私は思います。中小零細メーカーは宣伝費をかけて商品をPRできません。そこでSNSを使い、人を巻き込んでどうやって商品を届けていくかに成功したのがこの商品です。
具体的には、TwitterでSNS写真コンテストを開催したり、YouTubeで「クオリアらしさチャンネル」を開設し、ファンとつながることで商品の魅力を伝えていたことが、売れた要因のひとつだと考えます。
しかも、YouTubeでは、「見た目のチャラさ」を視聴者から指摘された小川さんは「チャラ社長」、広報のしきせいたさんは白い眼鏡をかけているから「しろメガネ」と自分たちをキャラクター化して演出しているほか、誰に配るかわからないのに、わざわざコストをかけてキラキラしたYouTube用の名刺まで作っているところも笑えます。
小川さんは「たとえ売れなかったとしても、お客さんがクオリアが面白いものを作っていることをわかってもらえることが重要です。ファンづくりを大切にしていきたい」と話していました。
「ネコのペンおき」の反響は大きく、「ネコのペンおき2」が12月27日に販売することも決定しました。
◇
「ネコのペンおき」は「ミケネコ」、「チャトラ」、「サバトラ」、「シロネコ」、「クロネコ」の全5種類。価格は1回300円。
1/9枚