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コロナ前から「オンライン忘年会」、達人が語る「失敗しない」運営
私が働いているknit(ニット)という会社は、様々な組織や個人の業務をオンラインで代行するサービスを展開しています。創業からフルリモートを前提とした働き方ということもあって、忘年会も新型コロナが流行する前からオンラインです。昨年は日本のみならず、海外も含めて100人ほどが参加しました。
会は社長の乾杯から始まり、クイズ大会、ビンゴゲームと続きます。一見、リアルな忘年会と変わりませんが、「オンライン上ですべて完結」することを前提にしたプログラムです。
クイズの問題は選択式にして、Zoomの手を挙げる機能を回答に使ったり、ビンゴゲームは、Googleスプレッドシートで用意したカードを画面共有したり。Zoomにつながってさえいれば、イベントを楽しめる設計にしました。
そして大切なのが「参加者の交流」です。参加者がほとんど画面オフで「壁に向かって話している」ようなオンラインの打ち合わせを経験した人もいるのではないでしょうか。忘年会は参加者の親睦を深める機会でもあります。できる限り、顔出しでの参加をお願いしました。
「誰か1人がしゃべり続ける」もオンラインあるあるです。そうならないよう、会の最初に参加者それぞれが声を出したり、チャットを盛り上げたりといったことも。クイズやビンゴは「オンライン上で大人数でも楽しめる」要素も重視しました。
このほか、「参加したいけど、どうしようかな?」と迷っている人たちも気軽に参加してもらえるよう、途中参加・退出しやすいプログラムにして、タイムテーブルも事前に公開。こうした工夫の結果、子育て中の人たちも参加することができました。
東京商工リサーチが約1万社に実施した調査(11月中旬公表)によると、「忘年会」または「新年会」を開催しない企業は87.8%。大企業にいたっては、92.9%が「実施しない予定」と回答しました。昨年は開催したけれど、今年は開催しないという企業は66.79%でした。
日本フードデリバリー社が実施した調査によると、職場の忘年会に「参加したくない」(24.6%)と答えた人たちの理由の88.6%が「新型コロナウイルスへの感染が不安だから」でした。
オンラインでは音声の工夫や食べ物の準備などはありますが、逆に自分の好きな物が用意でき、もちろんコロナの感染リスクを減らすことができます。
ニットがそうだったように、場所や時間の制約がリアルよりなくなるので、子どもが小さくて家を離れられない人や海外からも参加が可能。ツールによって小人数のグループ分けをしたり、資料を見せたりも簡単なので、ゲームなどはやり方次第で普通の宴会よりも快適に進めることができます。
個人が集まって、人生の時間をともにするのが、会社です。もちろん、業務を遂行して、事業を前へ進めることが中心ではありますが、そこにつながりがあることで士気が上がったり、心理的安全性が高くなったりするんだと思います。
だからこそ、忘年会や新年会、社員旅行、期末の打ち上げなどは会社の仲間であることを感じられるとても大事なものだと思っています。
コロナが流行する前からも、忘年会スルーや飲み会に「行く必要あります?」と言う社員たちが増えてきていました。行きたくない会に無理する必要はありませんが、飲み会に「行きたい」と思ってもらえるようにするのは、組織運営の面からも大事だと思っています。
今年は、他の企業のオンライン忘年会の司会を務める仕事も入りました。去年だったら、考えられなかったことです。
コロナも第3波が激しくなっています。オンライン化は、一層進むでしょう。この時を、耐えしのぐと捉えるか? 変化のチャンスと捉えるか? オンライン忘年会はその一つに過ぎませんが、職場のコミュニケーションのあり方を見直すきっかけになると思います。
小澤美佳 株式会社knit(ニット)広報。2008年に株式会社リクルート入社。中途採用領域の営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で、キャリア・就職支援の講演を実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。2018年 中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。2019年にニットに入社し、カスタマーサクセス→人事→営業を経て、現在、広報に従事する傍ら、オンラインでのセミナー講師やイベントのファシリテーターを実施。副業で嘉悦大学の大学講師。キャリアや就職などに関する授業を担当。Twitterアカウントは18,000以上のフォロワーがいる。
Twitterアカウント:https://twitter.com/mica823
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