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連載

#12 ネットのよこみち

亡くなった芸能人ブログで続く〝大切な交流〟 書き込みが癒やしに

「ここに来れば愛ちゃんに会える」

台湾紙を飾った飯島愛さんの記事=2008年12月25日
台湾紙を飾った飯島愛さんの記事=2008年12月25日

目次

元タレント・飯島愛さん(享年36歳)が今年13回忌を迎える。公式ブログ『飯島愛のポルノ・ホスピタル』が閉鎖されてから、5年が経った。ブログには飯島さんが亡くなってからもコメントが寄せられるなど、ファンにとって特別な存在になっていた。飯島さんに限らず、更新が止まっても亡くなったタレントのブログを訪れるファンは少なくない。タレントのネット発信が当たり前になった時代、ブログで交わされる〝交流〟について考える。(取材・文/吉河未布)

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閉鎖の日、7万件のコメント

2005年9月18日にブログを開始した飯島さんが最後に更新したのは2008年12月5日。同年12月7日、肺炎のため亡くなった後もご両親の手によりブログは継続されたが、高齢であることを理由に、2015年10月31日に閉鎖された。この日は飯島さんの誕生日だった。

〈ここに来れば愛ちゃんに会えるって思って、時々お邪魔してました〉
〈愛ちゃんの事忘れないよ。心の中にずっといるよ〉

当時、飯島さんおよびご両親への感謝を伝える声とともに、ブログ閉鎖を惜しむコメントが相次ぎ、最終日には7万件を超えた。

国内随一の芸能人ブログを抱える、アメーバブログを運営するサイバーエージェントによると、利用者であるタレントが亡くなった場合、そのブログをどうするかは、基本的に遺族や事務所の意向に委ねられるという。

BBCに取り上げられたブログ

今もスタッフが更新を続けているのが今井雅之さん(享年54歳)や川島なお美さん(享年54歳)。今井さんは大腸がんにより2015年5月28日逝去。川島さんは胆管がんにより2015年9月24日逝去した。本人による最後の更新はそれぞれ同年4月1日、同年9月19日だが、その後もスタッフが出演作の放送や追悼イベントなどの告知をおこなっている。

2017年6月22日、乳がんで亡くなった小林麻央さん(享年34歳)は異例のケースだ。元々2006年6月に開設したブログ『まお日記』があったが、改めてブログ『KOKORO.』を開設。闘病の様子をつづった文章が伝える愛情の豊かさと強さ、他者に向ける優しいまなざしに心打たれた人は多かった。

最後の更新は同年6月20日。その後英国放送協会 (BBC) の「今年の女性100人」の一人に選出されたことを受け、夫である市川海老蔵の意向のもと、英訳が日々更新された。TwitterやInstagramといった“外資”に比べ、発信者も読者もほとんど日本語利用者であるアメーバブログだったが、ネットが世界とつながっていることを実感させられる出来事だった。

小林麻央さんはブログで多くの人を元気づけ、英BBCの「100Women(100人の女性)」に選ばれた=ブログのトップ画面から
小林麻央さんはブログで多くの人を元気づけ、英BBCの「100Women(100人の女性)」に選ばれた=ブログのトップ画面から

更新止まっても訪れるファン

誰も手を加えず、そのまま残されているブログも多い。2009年6月11日に脳出血で亡くなったモデルの純恋(すみれ)さん(享年21歳)、2013年に肺炎で亡くなった女優の坂口良子さん(享年57歳)、2013年10月5日、交通事故で亡くなった桜塚やっくんさん(享年37歳)、2020年3月29日コロナにより亡くなった志村けんさん(享年70歳)……。

それぞれの最後の更新には途切れることなくファンが訪れ、コメント欄に近況報告をしたり、〈会いたいです〉〈天国では元気にしてますか?〉などと思慕をつづったりしてゆく。生前記した言葉や掲載した写真が、そこではまだ生きていることに、〈元気を貰いに来ました〉というファンも数多い。

「消費時間が長い」

サイバーエージェントAmebaブログの担当者は、ブログについて「メディアに露出していないときでも(タレントとファンが)互いの存在を感じ合える場所」だとする。

タレントが日常を発信するSNSとしては、TwitterやInstagramもあるが、これらについて担当者は「視覚的に、かつ簡易的に発信できる非常に便利なサービスである一方、“消費時間”も短くなりがち」と分析。「対して、ブログは読み物として蓄積されるので、消費時間が長い。時を越えてじっくりと読み返せることは大きな特徴です」と話す。

なおブログを閉鎖する場合、アメーバブログでは、現状、全記事DLのような保存機能はない。ただし個別に相談することは可能で、対応できる範囲で検討するという。

弱音を聞いてもらい心を修復させる

ファンにとって、タレントの死は、それが突然であればあるほど、ショックは計り知れない。

〈弱音吐きたい、吐く場所がないんです。〉
〈自分が ひとりぼっちを感じたら ここに来たい ここに来ていい?〉

そんな投稿を通じて、読者であるファンは生前の筆者の投稿に自分の思いを重ねていく。

どういう気持ちで、生前この言葉を書いたのか、その写真をあげたのか。読者は何度も何度もその生きた証しをなぞり、近況を報告し、弱音を聞いてもらい、心を修復させる。いつしか、更新がないことがわかっていながら、筆者の息遣いを感じ、あたたかくこちらの話を受け止めてくれる気持ちになっていくのだろう。自分以外にもコメントを投稿している人を見て、ひとりではないことを実感する。

手紙のようなコメントも多い、と前出・担当者は言ったが、他者にもその〈手紙〉の内容が見えるコメント欄という場所では、また別の意味をもつ。

〈ふと、またここを覗いたら、ファンの方からまだ優しいコメントが送られていました。やっくんは生きているんですね。〉

ブログのコメント欄は、さまざまな人により投稿され続けることで、タレントが確かにそこに生きていることが実感できる場所でもあるのだ。

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