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お金と仕事

自信なかった歌のお兄さんが…武道館の後、坂田おさむを励ました電話

取材に答える坂田おさむさん=北村玲奈撮影
取材に答える坂田おさむさん=北村玲奈撮影

目次

「子供の歌がはずかしいなんて少しでも思ってた自分をはじたのでした」。シンガー・ソングライターの坂田おさむさん(67)が、「おかあさんといっしょ」第7代歌のお兄さんの頃を振り返った著書「オーロラを見たよ」には、そんな過去が明かされています。その当時どんな思いだったのかを、「おさむお兄さん世代」の記者が聞きました。

本読む手を止めた「あるページ」

「オーロラを見たよ」(河出書房新社)は1993年に出版された坂田さんのエッセー。番組に出演していた1985年からの約8年間をユーモアたっぷりに振り返ると共に、自身の幼少期の思い出もつづっています。

朝日新聞の企画「輝く人」で坂田さんを取材することになった記者(33)は87年生まれ。すでに坂田さんが番組に出演していた頃です。テレビで「おさむお兄さん」を見ていたはずなのですが、子どもだったこともあり、その思い出はぼんやりとしています。当時の坂田さんを少しでも知ろうと、図書館で借りた「オーロラを見たよ」を取材前に読み進めていると、あるページが目にとまりました。

「子供の歌がはずかしいなんて少しでも思ってた自分をはじたのでした」
坂田おさむさん著書「オーロラを見たよ」から

これは「おかあさんといっしょ」に出演していた2年目の頃、武道館でのコンサート出演を果たしたときの出来事です。

坂田さんは「お兄さん」になる前も、プロのバンドメンバーやシンガー・ソングライターとして活躍していた時期がありました。明治大学在学中にバンド「宿屋の飯盛」でデビュー後、1977年にはソロで「BYE-BYE東京」という曲を売り出しています。その後に飛び込んだ世界が「おかあさんといっしょ」でした。

「オーロラを見たよ」でも、「武道館はなんといってもやっぱしステイタスだったし、一度はステージに立ちたいと思ってた」とあります。ロックの殿堂・武道館でのコンサートでは「犬のおまわりさん」などを熱唱しました。コンサートは大成功だったといいます。

「おかあさんといっしょ」に出演していた32歳の頃の坂田おさむさん=本人提供
「おかあさんといっしょ」に出演していた32歳の頃の坂田おさむさん=本人提供

お兄さんとしての自信がなかった

冒頭の心境はこの武道館コンサート後の思いです。
坂田さんは取材に、当時の思いを明かしてくれました。

「全然違う世界に来ちゃったなと思っていました。毎日毎日、『おかあさんといっしょ』の曲を一生懸命覚えて歌っていましたが、それが本当に子どもたちに楽しく見てもらっているのかなと。歌のお兄さん1、2年目は自信がなかったんですよ」と話しました。

取材に答える坂田おさむさん=北村玲奈撮影
取材に答える坂田おさむさん=北村玲奈撮影

仲間からの電話

そんな当時の坂田さんの元に、武道館コンサート後、かつてのバンド時代を知る仲間から電話が入ったそうです。

「あれだけみんながよろこんで、(中略)お前すごいョ」
「オーロラを見たよ」から

坂田さんは「たぶん武道館でのコンサートに行った人から、その様子を聞きつけたんだと思います。それでこういうふうに言ってくれた」と振り返ります。

「だんだんこんな私にも子どもたちのファンができてくれて、少しずつ、こんな恥じてちゃいけないよ、ちゃんとしろよって思いがありました」

「おかあさんといっしょ」番組卒業セレモニー。40歳の頃の坂田おさむさん=本人提供
「おかあさんといっしょ」番組卒業セレモニー。40歳の頃の坂田おさむさん=本人提供

大人も「だいかんげい」

その後の坂田さんが作った「夢のパレード」(2000年)には途中、こんな歌詞が出てきます。

おとなの ひとだって いいんですよ
だいかんげい
ゆめの パレード いつか みた はずね
なつかしく ごいっしょに
「夢のパレード」から一部抜粋

「大人になってしまったら、子どもの頃の純粋な喜びを忘れてしまっているのかもしれません」

「『もう忘れちゃったかもしれないけど、大丈夫。思い出して』という子どもから大人への呼びかけです。僕はけっこう気に入っている歌詞ですね」

がっつり歌わなくていい

番組を卒業してからも、ライブを開いてきた坂田さん。会場に集まったファンとのやりとりの「クッション」として、客席にいる大人に「恥ずかしがらないで」と声をかけることがあるといいます。特に「お父さん」の確率が高いそう。

「歌のお兄さんをやっていなかったら、僕も絶対恥ずかしいと思います。『こんな恥ずかしかったおれでもやってるんですから、大丈夫ですよ』っていう思いがありますね。客席でがっつり歌わなくたっていいんです。一緒にきた子どもが喜んでいるのを見たり、なんとなく一緒に手拍子したり、楽しんでくれれば」

「大人が喜んでいる隣で、子どもたちがその表情を見てうれしそうにしているのを見ると、僕もうれしいです」

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