連載
#4 「きょうも回してる?」
郵便ポストより多いガチャガチャ 300円じゃなく200円にこだわる理由
「原点回帰で、200円でいかに楽しめるものを作れるか」
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#4 「きょうも回してる?」
「原点回帰で、200円でいかに楽しめるものを作れるか」
ガチャガチャ評論家おまつ
共同編集記者ガチャガチャの魅力の一つは、ガチャガチャの売り場の前で自分が欲しい商品が出てくるのかを想像する期待感ではないでしょうか。
そして100円玉を投入してレバーを回し、商品が現れるまでの一瞬のワクワク感が味わえることだと私は思います。
「欲しい商品が出なかった」「同じものがダブった」と、ガチャガチャを回しときに経験した人は多いはず。その商品に欠かせないのがガチャガチャの機械です。
この機械は1960年代あたりは輸入されてきたものなどもありましたが、皆さんが現在、主に見ているガチャガチャの機械は、株式会社バンダイと株式会社タカラトミーアーツが製造する2種類しかありません。
この機械は国内で出荷台数は70万台以上あります。しかも、バンダイの機械が「カプセルステーション」で、タカラトミーアーツの機械が「ガチャ2Ez」という名前がついているんですよ。
このうち、タカラトミーアーツは累計で約35万台を出荷しています。
総務省が発表した令和2年版情報通信白書によると、郵便ポストは全国で約17万台。出荷台数と比較すると郵便ポストの数よりも多いガチャガチャの機械。
1965年に日本で初めてガチャガチャが広まって以来、機械の形は違えども、硬貨を入れて商品を手に入れるやり方は55年経っても変わっていません。
世間でキャッシュレスが騒がれ、これだけ電子マネーや日常商品のデジタル化が普及し、おもちゃでさえデジタル化やVRなど進化しているにもかかわらず、ガチャガチャは今でも変わらない。
確かに一部電子化でガチャガチャができる機械はあります。しかし、市場に残っているのはアナログ的な機械です。この非合理的かつ非効率だからこそ、アナログ的なガチャガチャは、多くの人に広まったのかもしれません。
今回紹介するのはタカラトミーアーツから9月に発売された「ガチャぶんのいちシリーズ ガチャ2Ez PART3」。
「ガチャガチャは子どもが初めて自分のお金で買う運試し」と、ガチャガチャの魅力を語るタカラトミーアーツのガチャ事業部の分野大介さんに、その魅力を聞きました。
ガチャぶんのいちシリーズは、毎年開催されているデザインフェスタの展示会で、分野さんが1/12のサイズのミニチュア出品を見て「1/12の世界は面白い。この世界観を広げていくために、何かガチャガチャで表現できるものはないか」とひらめいたことから誕生。さらに、2016年からは、おもちゃを写真に撮りツイッターにあげる「#オモ写」というハッシュタグがツイッターで流行していましたが、このおもちゃを撮る人たちに何か提供できないかという視点も誕生のきっかけとなっています。
そこで、今回商品化したのがガチャガチャの機械の1/12サイズ。価格は200円にもかかわらず、商品取り出し口などの各パーツのディテールを忠実に再現しています。
ガチャガチャは10万個売れればヒット商品と言われています。2018年2月に発売されたパート1は30万個以上売れ、パート2(2019年12月)も10万個以上売れました。そして今回のパート3に至ります。
この商品について、分野さんは「60代のおもちゃ職人さんたちとともに、作ったのがこの商品です。実物の3D図面がなかったため、機械の写真を撮り、メジャーで測り図面を引き、実物に忠実に再現しています。この商品にはまさに職人技が盛り込まれています」と話します。
この商品のパート1とパート2は実物の色を再現。パート3は、パート1やパート2を購入したくれたお客さんを飽きさせないために、クリアな色で表現しています。
私が驚いたのは、手のひらサイズなのに、実物と同じように、レバーを回しカプセルを取り出せるまでの再現が施されていることでした。しかもカプセル一つ一つまで作ってあることにガチャガチャへのこだわりが感じられます。しかもそれが、200円で手に入ってしまうんです。
現在、ガチャガチャの価格のほとんどが300円。最近では500円の商品も増えてきました。
それにもかかわらず、なぜ今回の商品は200円にしたんですかと尋ねると、分野さんは「価格を300円にするのは簡単なんですよ。でもね、1000円札を両替したとき、300円だと3回しか買えない。200円だと5回回せるじゃないですか、この2回の差が大きいです。子どもたちにいっぱい回してほしいから、200円にしたんですよ」と話します。
分野さんは6歳からガチャガチャを回すほどガチャガチャ好き。分野さんには、子どもたちがワクワクしながらお小遣いをため、百円玉を握りしめガチャガチャ売り場にいく姿が見えていたのかもしれません。
今後の商品について、「日本の以外のアジアを中心としたヨーロッパの子ども向けて回してもらえるような商品を作っていきたい。世界のスタンダードな商品価格は200円。他の国では300円だとなかなか手がでない。原点回帰で、200円でいかに楽しめるものを作れるか。そして子どもが気軽に買えることが大事です」と話す分野さんのガチャガチャへの挑戦は続きます。
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「ガチャぶんのいちシリーズ ガチャ2Ez PART3」のラインナップは、ラインナップは、「クリアブルー」、「クリアイエロー」、「クリアパープル」、「クリアピンク」、「クリアグリーン」、「クリアホワイト」の全6種類。価格は1回200円。
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