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「石破茂は飲んでも楽しくない」は本当? 飲みに誘って検証してみた
「今回の記事、すごいタイトルですね」
9月の自民党総裁選で敗れた自民党の元幹事長、石破茂(いしば・しげる)さん。ワイドショーなどでは石破さんが自民党内で人気がない理由として「飲みに行っても政治の話ばかりで全然面白くない」「上から目線でつまらない」などと評されました。石破さんは本当に飲んでも楽しくないのか。笑下村塾たかまつなながその真偽を検証すべく、石破さんを飲み会にお誘いしました。
――石破茂は飲んだら本当に楽しくないのか。ということで石破茂さんにお越しいただきました。きょうは石破さんがよく利用されるという「赤坂三平」というお店に来ています。
石破:今回の記事、すごいタイトルですね。ここは最近よく使う有名な和食屋さんです。赤坂のど真ん中、駅から2、3分なのにお昼の定食が1000円なんですよ。特にアジフライやとんかつなどの揚げ物系がおいしい。きょうは生ビールと日本酒の立山をいただきます。
――さっそくですが、飲んでも楽しくないという噂について実際はどうなんですか?
石破:私は楽しいですよ。でもご一緒された方がつまらないって言われるんだったらそうかもしれませんね。飲んだら政治の話ばっかりして説教するとかいう噂があるそうですが、そんなことを言われたことは一度もないです。
――いろいろなメディアですごく言われていましたよ。
石破:それは、意図するところがあるからでしょう。「あいつは飲むと説教ばかりする」と言えば「そんなつまらない人に自民党の総裁、日本の総理を任せられない」ってみんな思いますよね。そういうふうにネガティブなイメージに印象操作したいという勢力がいるんじゃないかと思ってしまいますね。
――プライベートについてお聞きしたいです。石破さんは休みの日は何をしているんですか?
石破:休みがあれば映画や美術館に行きたいですね。それからアイドルのコンサート。去年、学生時代に大ファンだった歌手・岩崎宏美さんのコンサートに行って感動しました。ファンは50代から70代。「宏美ちゃーん」って声をかけるタイミングやペンライトの振り方がピタッと合うんです。
――議員どうしで飲みにいくこともあるんですか?
石破:自民党衆議院議員の中谷元(なかたに・げん)さんと飲みに行くときなんて心底楽しいですね。彼は私と同じ昭和32年生まれで本当に信頼できる友人です。私の特技は70年代のアイドル歌謡を全曲歌えることなんですが、中谷さんも全部歌える。彼のすごいところは振り付けも完璧にやれるところです。この前一緒に行ったときは欅坂46の『不協和音』を踊っていました。私には絶対にできないと思いました。
――そんな最近の曲まですごいですね。石破さんは奥さんとは恋愛結婚されたそうですね。国会議員の人ってお金持ちの人とお見合い結婚して、選挙のときにお金を出してもらうようなイメージがありました。
石破:妻は大学の同級生で大学1年の4月に図書館から彼女が本を小脇に抱えてトントントンと降りてきたんです。こんなきれいな女性が世の中にいたのかって呆然としました。
――すごく綺麗だったんですね。
石破:そうそう。でも大学を卒業して三井銀行に就職するときに、彼女に「結婚を前提としてこれからもお付き合いいただけませんか」と頼んだけれど断られました。弁護士になりたいから法律学科に入ったのに、私と結婚したいから安定した仕事がいいと言って三井銀行にしたんですよねと。そういうふうに人生の目標がコロコロ変わる人は私は嫌いですって言われましたね。
――石破さんは最近、9月の総裁選で大敗した責任を取って自身が率いる派閥の会長を辞任されました。あれはなぜですか?
石破:総裁選に出たけれど大敗しました。国民の期待に応えられなかったし、同志の皆さんや選挙区の皆さんにもすごい負担をかけました。その責任を取りたいということです。
――石破さんは総裁選に何回も挑戦されて、議員票が課題だと言われてきました。
石破:石破は飲んでもつまらないと言われる。でも私はそれは本質じゃないと思うんですよ。議員は、これから誰についたら自分の展望が開けるか、という理由で選んでいる部分があるんじゃないかと。今回私は勝ち目はないと思っていたけれど、選択肢を示すことは大事だと考えていました。それでも自分としては、政策スピーチも討論も、今回が一番納得がいきました。
――なぜ石破さんについていけば展望が開けると思ってもらえなかったんですか?
石破:それは私が権力の中心にいないからです。小選挙区というのは党が絶大な力を持ちます。小選挙区にするべきかどうかという議論があったときに、まだ総理になっておられなかった小泉純一郎先生が「お前ら何が小選挙区制だ。そんなものにしたら党の言うことしか聞かないつまらない議員ばかりになるぞ」と言われたんです。つまらないかどうかは別として、党の意向に逆らえない人が増えたことは事実だと思います。
――石破さんも権力の中心にいようと思えばできたと思うんですが。
石破:そこはトレードオフ(何かを達成したければ何かを犠牲にしなければならないこと)みたいなところがあります。言うべきことを抑えて権力のトップの歓心を買うやり方もあると思いますが、おかしいことをおかしいと言わないなら、なんのために政治家になったか分からない。その葛藤がいつもあります。
――石破さんは党員票をすごく獲得されていて、自民党の支持層には人気があるじゃないですか。
石破:日刊紙では「石破いよいよ離党か」なんて記事がけっこうありますが、そんな気は全くありません。野党には行かないです。自民党を支持してくれる人からこんなに期待があるのにそんなことはやれないです。議員の中には、石破と一緒にやりたいと言ってくれた同志もいっぱいいます。次の選挙で彼らが一人残らず当選するためにも、今まで以上に一生懸命やります。
――総理を目指してほしいと思っている自民党員も多かったと思いますが。
石破:誰が目指さないって言いました? ただ、新しい政権がスタートしたばかりで俺は来年やるんだなんて、そんなことは今は言えません。私は今まで自分からなりたいと言ったことは一度もない。毎回毎回「お前やれよ」というありがたい声があって出ています。
――石破さんは自民党の中でいじめられているように見えてしまいます。正論を述べている人が、なぜいじめられなきゃいけないのかと…。
石破:正論を言うことが一番反感を買うんじゃないでしょうか。元総理の竹下登先生がおっしゃってました。「お前は自分が正しいと思ったことを言っているだろう。正しいことを言うときは人を傷つけることを忘れるな」と。
――でも自分に原因があると認めたらいじめはいつになってもなくならないです。
石破:人間社会では必ずいじめはあるものです。学校でもずっとクラスのメンバーが同じだったらいじめは固定してしまう。だから構成員を常に入れ替えなければならないと思います。自民党も新陳代謝が進むことが大事です。私たちが小選挙区制にこだわったのは、二世じゃなくても官僚じゃなくても大金持ちじゃなくても、国のために一生懸命働きたい人を当選させることができる、それが小選挙区というシステムだと思ってきたからです。
――自民党を離党して新しい党を作ってほしいという意見もありますが。
石破:私は野党自民党のときに、政調会長や予算委員会の筆頭理事をやりましたが、野党の自民党は強いですよ。つまり、権力もポストも金もないピュアな自民党は強い。 だから、自民党を相手として私が今の野党の皆さんと一緒に国会を運営して乗り切る自信はありません。
――石破さんが国会議員であることにこだわる理由は何でしょうか?
石破:国会議員じゃなきゃできないことがあります。憲法、外交、防衛、通貨政策、教育の基本がそうですよね。経済が成長して人口が増えているときは誰が政治家をやったっていいんです。でも今はそんな時代ではない。日本のあらゆる法律が憲法を基本に成り立っているのに、その憲法でいい加減な議論をするのは私は嫌なんです。例えば日本は核をなくすべきだと言いながらアメリカの核の傘に依存している。こうした二律背反はいっぱいあります。こうした局面を変えるためには、誰かが一回けじめをつけないと次の展開にならない。
リスクのあることやらないといけないんです。
――最後に政治に関心を持てない若者に対してメッセージをお願いします。
石破:主権者って甘くないということです。若い皆さんが政治を決めるんです。自分が政治家だったらどうするか。それを考えられるのが主権者だと思っています。あれをやって、これをやってというのは主権者じゃない。私は有権者にこびるつもりはないし、過度にきついことを言うつもりもありません。一緒に考えようねということなんです。こんなことを言うから飲んでいて楽しくないと言われてしまうわけで、ある程度は反省しておりますが(笑)
検証結果は、『石破さんは飲んだら楽しかった』です。お会いする前は「ねっとりと話す、話が長い、堅物な人」だと思っていましたが、「奥様に一目惚れした恋話」の話が飛び出すなど、終始、和やかな雰囲気でした。たしかに、放っておくと政治の話をはじめてしまいますが、それも分かりやすくお話ししてくださり、面白かったです。最初の1杯だけお酌をしたら、自分でやるよといい、手酌で日本酒をぐいぐいのまれていたのが印象的でした。
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