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『トイ・ストーリー』手探りの第1作 歴史知る日本人、裏に傑作映画

「世代を超えて楽しめる作品」の呼称がぴったり

ピクサー・アニメーション・スタジオの小西園子さん
ピクサー・アニメーション・スタジオの小西園子さん

目次

趣味で「すみっコぐらし」や「ムーミン」といったキャラクターの取材を進めてきた28歳の記者。他にも好きなコンテンツがあります。それはピクサー・アニメーション・スタジオの『トイ・ストーリー』シリーズ。小さい時に第1作を見てはまり、その後も続編を観賞しながら、登場人物(おもちゃ)と共に成長してきました。そんな『トイ・ストーリー』を生みだしたピクサーには、第1作から関わっている日本人スタッフの小西園子さんがいます。作品化を決める緊張のプレゼン、続編だからこそ妥協しない制作現場の熱量。小西さんに知られざる歴史を聞きました。(朝日新聞記者・影山遼)

「ハン・ソロ」に一目ぼれ

22日でちょうど四半世紀前にあたる1995年11月22日、第1作となる『トイ・ストーリー』が、世界で初めての長編CGアニメーションとして、アメリカで公開されました(日本の公開は1996年)。いまでこそ、ピクサーと言えば誰もが知る存在ですが、最初から順風満帆だったわけではありません。

今回、Zoomで取材に応じてくれたのは、ピクサーで働く小西園子さん。『トイ・ストーリー』公開前の1994年から働き始め、2012年公開(以降、全て公開年はアメリカ基準)の『メリダとおそろしの森』の頃から、シミュレーションのテクニカル・ディレクターとして、衣服や髪に動きをつけることを主に担当し、今に至っています。

<こにし・そのこ>
東京都出身。17歳でアメリカに渡り、高校と美術大学に通った後、1994年にピクサー入社。その後、キャラクター・モデリングとリギング(=キャラクターに筋肉や関節などをつける)を担当。
『モンスターズ・インク』や『ファインディング・ニモ』などピクサーの長編作品のほぼ全てに携わる。「ジョギングしても行ける」ほど会社の近く(カリフォルニア州サンフランシスコ近郊)に在住。

ご存じの方には当たり前の話かと思いますが、ピクサーの始まりには、アップルの創業者・スティーブ・ジョブズさん(1955~2011年)が関わっています。アップルコンピュータを一時退社したジョブズさんが、ジョージ・ルーカスさんの会社のコンピューター関連部門を自己資金で買い、1986年に独立会社としたことが今につながっています。

元々、小西さんが映画制作を夢に持つことになったきっかけは、7歳の時に見た『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年、監督は上述のジョージ・ルーカスさん)でした。1人で見に行き、「ハン・ソロ」に一目ぼれ。「今もまだ思っていますが、実際には存在しない世界を作るのがすごいと思いました」。その頃から、映画を作ることを志したといいます。

アメリカの美術大学で、卒業の1年ほど前から様々な会社に自分の作品を収めたビデオを送り、就活を進めていた小西さん。最終的には担当教授の友人がピクサーで働いていた縁で、入社が決まりました。時はまだ『トイ・ストーリー』公開前の1994年。

当時のピクサーについて、小西さんは「(レンダリング[=映像への出力]用のソフトウェア)レンダーマンを作っている会社という認識しかありませんでした」と振り返ります。

Zoomでインタビューに応じる小西園子さん。『スター・ウォーズ』の話をする時は、とても楽しそうでした
Zoomでインタビューに応じる小西園子さん。『スター・ウォーズ』の話をする時は、とても楽しそうでした

手で描いた服のしわ

入社後について「個人で作っている作品とは全く違いました。とにかく、アニメーション以外の仕事は何でもやりました」と小西さん。

初めての仕事となったのが『トイ・ストーリー』でしたが、まだ会社にノウハウが何もない状態。段取りなど全て手探りで進めていたといいました。また、技術も今ほど開発されていなかったため、服のしわなどは手で描いていたといいます。

そして、何とか公開までこぎ着けた1995年の『トイ・ストーリー』のヒットを経て、1998年の『バグズ・ライフ』、1999年の『トイ・ストーリー2』、さらには2001年の『モンスターズ・インク』などの作品を次々と世に出していきました。

『トイ・ストーリー』©2020 Disney/Pixar
『トイ・ストーリー』©2020 Disney/Pixar 出典: ディズニープラスで配信中

そんな中、アメリカのウォルト・ディズニー・カンパニーが2006年、ピクサーを買収すると発表しました。それまでも映画を共同制作している時代はありましたが、これにより、ピクサーのキャラクターなどをディズニーのテーマパークなどでも展開するようになりました。

ヒット作を世に出していく中で、社員も増えました。小西さんの入社当時は「100人いるかいないか」だったのが、今では1200人以上にまで。さらには、当初唯一の日本人だった小西さんでしたが、今ではピクサー内に3人がいるそうです。

「2も3も4も全て大変」

映画はどのくらいの期間をかけて作られるのでしょうか。ピクサーでは通常、2~3本の作品を同時進行で作業しているそうです。

小西さんによると、監督は4年前くらいからアイデアを出してきます。監督がアイデアをプレゼンし、その後、その場にいる全員に感想を聞きます。「ここのロジックが分からない」などと率直に意見を出す、といったことを、多い時では章ごとに5、6回繰り返し、ようやくストーリーが出来上がっていくといいます。

それらと同時並行で、小西さんたちの技術チームは監督の思い描くストーリーを表現するため、どんな技術が必要になるのかを議論しながら進めています。

小西さんは「どの作品に関してもクオリティーは妥協しません。トイ・ストーリーに関しては、1も大変でしたが、2も3も4も全て大変。より高い次元を目指していますから」と話します。

『トイ・ストーリー4』©2020 Disney/Pixar
『トイ・ストーリー4』©2020 Disney/Pixar 出典: ディズニープラスで配信中

技術も上がっている一方、キャラクターの描き方や動き方の表現など、伝統的に積み重ねてきたからこそ作り上げられる部分もあります。「若い時からちゃんとした大人に見守られて、自分はここまで来ることができました。技術的な所だけでなく人間的な所も。だから、自分も(次の世代に)きちんと教えられる所は教えたいと思っています」と小西さん。

新型コロナウイルス禍で家にいることが多い今、小西さんは「AIなどの登場で、今はアニメーションにとって面白い時代だと思っています。自分の時間を使って、そういった面白い技術や新しいものに興味を持って、試してみて、何かに取り入れてくれるような人たちと仕事をするのは楽しいです」と語りかけます。

時代の要素が入っていない?

最後に、ポテトヘッドとウィージーがお気に入りの記者の個人的な話を少し。第1作から作中で10年が経過した第3作(2010年)の中で、持ち主のアンディが、大学進学を前におもちゃたちと別れる場面がありました。その時に、大学生だった記者も思わず涙しました。第3作で完結すると思い込み、『トイ・ストーリー』ロス状態にも陥りました。

ですが、2019年に第4作が無事公開。おもちゃは新しい世界で奮闘していました。記者の周りの友人にも、子どもと一緒に映画館に行ったという人もおり、「世代を超えて楽しめる作品」という呼称がぴったりでした。

小西さんが「トイ・ストーリーは、その時代特有の要素を入れず、タイムレスにしています。色んな人生の段階で見てもらえればありがたいですね」と話していたことを思い出し、今後もピクサーの作品を楽しんでいこうと思います。

ミセス・ポテトヘッドもミスター・ポテトヘッドも登場した『トイ・ストーリー4』。ウィージーは見当たりませんでした©2020 Disney/Pixar
ミセス・ポテトヘッドもミスター・ポテトヘッドも登場した『トイ・ストーリー4』。ウィージーは見当たりませんでした©2020 Disney/Pixar 出典: ディズニープラスで配信中

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ディズニー&ピクサーの新作『ソウルフル・ワールド』が12月25日からディズニー公式動画配信サービス「ディズニープラス」で配信開始されます。生まれる前の魂(ソウル)たちの世界で「やりたいこと」が見つけられず何百年も暮らすソウルと、その世界に迷い込んだ音楽教師による大冒険の物語です。

『ソウルフル・ワールド』©2020 Disney/Pixar
『ソウルフル・ワールド』©2020 Disney/Pixar 出典: 12月25日(金)ディズニープラスで配信
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