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#58 ○○の世論

世論調査は結局、正しかった? アメリカ大統領選、前回は「ねじれ」

得票と選挙人という選挙制度

バイデン次期大統領とトランプ大統領のマスク=2020年11月、さいたま市、ロイター
バイデン次期大統領とトランプ大統領のマスク=2020年11月、さいたま市、ロイター

目次

まだ最終確定は出ていませんが、米大統領選は激戦の末、バイデン氏がトランプ氏への勝利を確実にしました。前回2016年の大統領選では、事前の世論調査では、クリントン氏優勢でしたが、実際の投票ではトランプ氏が勝ち、世論調査に対して批判が起こりました。さて今回はどうだったのでしょうか。世論調査と実際の結果を比べてみました。(朝日新聞記者・斎藤恭之)

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結論から言うと「合ってた」

結論から言うと今回は、世論調査でバイデン氏の支持率が高く、得票率と獲得選挙人数の両方でバイデン氏が勝利しているので、世論調査は正しかったといえるでしょう。

 
 

しかし、2016年は、得票率で見ると、クリントン氏が勝ったので、世論調査は正しいと見ることができますが、選挙人の数ではトランプ氏が勝ったので、世論調査は間違っていたと見なされるという「ねじれ現象」が起きました。

大統領選では、選挙人538人の半分以上である270人以上を取った方が勝ちます。クリントン氏は得票率が高かったけれど、獲得選挙人が少なかったため、負けてしまったのです。

激戦州での「差」は?

獲得選挙人の数で差がつく理由の一つに、共和党と民主党の支持が拮抗する「激戦州」での勝敗があげられます。

米大統領選では、各州の人口比で割り当てられた選挙人を各州の得票率が高い方が「総取り」するため、激戦州での数ポイントの得票率の違いが、獲得選挙人の数に大きな影響を与えます。

 

上の数字は、激戦州での、バイデン氏とトランプ氏の事前の世論調査の「差」と、実際の得票率での「差」です。

世論調査でバイデン氏が優勢だったほとんどの州では、投票結果もバイデン氏が勝利しました。

たとえば、ペンシルベニア州では、バイデン氏が世論調査では約1.2ポイントの差で勝っており、実際の開票でも、バイデン氏が得票率の差0.8ポイントで勝利し、20人の選挙人を獲得。一方、フロリダ州では、世論調査の差は0.9ポイントでバイデン氏が優勢でしたが、投票結果は、3.4ポイントでトランプ氏が勝ち、29人の選挙人を獲得しました。

世論調査の「優勢」とは?

さて、この世論調査での1.2ポイントや0.9ポイントの差は、どの程度「優勢」なのでしょうか。

米国の世論調査の記事には世論調査における「誤差」の説明が書かれていることがよくあります。たとえば、フロリダ州で10月15日から10月20日にかけて行われたCNNの世論調査では「結果にはプラスマイナス4%の誤差が含まれる」とした上で、バイデン氏支持50%、トランプ氏支持46%という数字を出しました。

調査での4ポイント差は「誤差の範囲」なので、記事には「どちらの候補もリードしているとはいえない」と書かれています。

一方、調査では非常に大きな差がついたのに、実際は差が非常に小さかったケースもありました。ワシントン・ポストとABCニュースが10月20日から10月25日にかけてウィスコンシン州で行った世論調査では、バイデン氏が57%、トランプ氏が40%で17ポイントの差がつきました。ワシントン・ポスト紙では、4ポイントの誤差があることを記した上で、「バイデン氏大きなリード」という見出しでしたが、実際の結果は、バイデン氏の0.6ポイントでの薄氷の勝利でした。

朝日新聞の選挙の情勢調査では、候補者の支持の広がりや優劣を言葉で表し、具体的な数字は出していません。米国では「世論調査の数字」を出し、同時に「誤差」も示します。世論調査報道での日米の違いが垣間見られます。

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