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連載

#3 30歳独身、無職。本屋さんになる。

ピンチ、お金が集まらない!資金調達できなかった…けど分かったこと

栃久保誠撮影
栃久保誠撮影

目次

30歳独身、無職。本屋さんになる。
新型コロナウイルスが私たちの生活に大きな影響を与えた2020年。起業と会社員のパラレルキャリアを歩んでいた森本萌乃さん(30)は、人生初の「無職」を経験しました。「2020年、思ったよりツラくない?」とぶっちゃけながらも、書店主になる夢に向け、現在はオンライン書店のオープンを目指し全力疾走中です。コロナ後に起こったこと、考えたこと、行動に移したこと……。現在進行形の森本さんの今をつづったコラム「30歳独身、無職。本屋さんになる。」。今回は、資金調達にチャレンジしながらも、できなかった話です。
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資金調達してる人たち、冷静にすごすぎ

「○○円の資金調達しました!」

起業家やスタートアップの会社が、こんな見出しでニュースリリースを発表している場面、見かけたことがある方も多いかと思います。

こういうのはたいてい成功者しか語らないテーマですが、その裏にはたくさんの「できなかった」物語があります。

今回私は、資金調達ができなかった側です。

30歳独身無職に加えて、未達、悲しさ、無念の3大トッピングでした。

人生ってすごい。

それで、そう言えば「資金調達できませんでした」のハナシってあんまり見たことないなあと思って。今回はその話を書きます。

楽しいことは、人数多い方が楽しいよね

会社を始める時、運転資金が必要です。集める方法は、私の主観でざっくり分けると4つに分類されます。

・貯金やクラウドファンディングを使って、自力で始める。
・銀行でお金を借りる。
・ベンチャーキャピタルに投資してもらう。
・誰か個人に投資してもらう。

私は迷わず3つ目から挑戦しました、ベンチャーキャピタル(VC)に投資してもらう!

理由はシンプルです。去年の創業時に自分の貯金はほとんど使ってしまったから、そして、自分の作るサービスがきっと楽しいから、この楽しさを分かち合える人は多い方がいいなと思ったからです。

個人投資家ではなく、VCに会ってみたいと思った理由は、会社単位の方が人が多くて楽しそうじゃない!? という理由から。これ、100%本気です。

日本のVCによる、2019年度の国内投資額は2833億円(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター調べ)。前年度比24.5%増と高い伸びを示した
日本のVCによる、2019年度の国内投資額は2833億円(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター調べ)。前年度比24.5%増と高い伸びを示した 出典: 朝日新聞

頑固者の資金調達の行く末、数十社行って全滅

資金調達しました! のニュースと合わせて、「同じ船に乗る」という表現もよく見かけます。

「そうか、資金調達に必要なことは、みんなが乗りたくなるような船を用意することなんだ!」と、ワクワクいっぱいで仕上げたアイディアと資料(確かに資料のデザインだけは褒めてもらえた)。

その結果はなんとびっくり。数十社から頂いた面談のチャンス、全て全滅でした。

私にとってVCから投資をしてもらうということは、「相手がお金でリスクを負う分、自分は見たこともない新しいものを世に出すプレッシャーを負うこと」という認識でした。

確かに、その認識に間違いはなかったと思います。ただVCが負うリスクは、そのままお金でリターンしなくてはいけない、そして期限付きという点が私の中で決定的抜け落ちていてたように思います。ワクワクの船だけでは、全く太刀打ちできませんでした。

使う言葉は同じ、解釈が違った

VCと呼ばれる会社のホームページって、どこもめちゃくちゃかっこいいんです。
 
「夢」とか「未だこの世にないもの」とか、それこそ「ワクワク」とか。私の大好きな言葉がずらりと並んでいて、プレゼン前にホームページを見て、「ここの一員になりたーーい!」と思いながら毎回イメトレを繰り返すんです。
 
期待を膨らませて挑んだ面談でお断りをされる感じは、学生時代に就活で受け取った企業からのお祈りメールによく似ています。
 
就職活動の時は、とにかくその会社に入社したい一心から、場数を踏んでコツを掴み自分の見せ方を研究していました。ただ今回、資金調達と就活で大きく違った点は、どれだけコツを掴んでも、自分のアイディアもプレゼンの仕方も、「全然変えたくないな」と感じたところ。
 
私の目的は、あくまでも自分の書店をオープンさせることです。

まだ世に出していないのに、お客様にお届けしていないのに、お金を集めることに目的をすり替えることはできませんでした。
 
私が未熟で、全くビジネスセンスのない会社を経営しているというのは百も承知の上で言いますが、私の頭の中と、プレゼンを聞いて頂いた方の頭の中、両者に広がる「ワクワク」の定義は、たぶん絶妙に違ったのだと思います。

ジョウジョウドリョクギム

あともう一つ、資金調達のプロセスを経て私がびっくりしたことがありました。
 
上場。上場?
 
VCから投資をしてもらうに当たっては、上場努力義務という取り決めがほとんどの場合発生します。読んで字の通り、上場を目標としてそこに向かって努力するということ。VC自身がファンドという形で人や企業の資金を預かって運用しているため、明確な目標として上場を見据えることは至極当たり前のことです。
 
ただ、私にとってはこれが分からなかった。

自分の会社やサービスと長く向き合っていくこと自体は全力のYES!ですが、やったことのない言葉にサインをするのが、なんだかとてつもなく怖く感じられました。
 
努力という言葉でまるくしている雰囲気も、より一層怖い。努力しました、って誰でも言える分、嘘なんていくらでもつけることないか...?
 
「絶対上場宣言」くらい言い切ってもらえた方が、最初から覚悟を決めるか、挑戦せずに済んだ気がします。
 
今回の資金調達を通じて、自分の譲れないものが明確に見えたことが一番の収穫です。得体の知れない言葉に、サインはできない。
栃久保誠撮影
栃久保誠撮影

何度も言いたい、資金調達してる起業家って超すごい!

資金調達に成功している会社は、世の中にたくさんあります。
 
自分の実現したいアイディアで、調達を実現している起業家たち。私も経験したからこそ、本当にうらやましいし天才だなと思いました。そういう人が未来のビジネスシーンを引っ張っていくのだろうし、改めて「資金調達しました!」のリリースのすごさを感じることができました。
 
一方で、始めから資金調達を「しない」という選択も世界にはたくさんあって。
 
私の場合、無知が故に少し時間がかかってしまいましたが、夢とお金の落とし所を見つけるプロセスを経験できたことで、より一層事業への覚悟が決まりました。
 
結局、誰も乗り込んでくれなかった私の船。ですが、落ち込むのは止めにして、もう少し一人きりの航海を続けることになります。
第4話「金もない!オフィスもない!それでも見つけた、コロナ禍ならではの良いところ」は11月4日公開です。
 

新型コロナウイルスの影響で人生初の「無職」を経験した森本萌乃さん(30)。現在は書店主になることを目指し、オンライン書店のオープンに向けて全力疾走中です。失業からこれまでの日々を綴ります。

森本萌乃 1990年東京生まれ。株式会社MISSION ROMANTIC代表。
2013年に新卒で広告代理店に入社後、外資とスタートアップへの二度の転職を経験、スタートアップ企業在籍中に自身の会社である株式会社MISSION ROMANTICを2019年創業。パラレルキャリアで起業と会社員を並行し、2020年より自分の事業へ一本化。2020年中に自身の新サービスであるオンライン書店のオープンを目指す。

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