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コロナ禍の最終出社、失業手当は出なかった 起業家と無職は紙一重
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突然のオンライン会議で契約終了を告げられた時、世は緊急事態宣言の真っ只中でした。退社が決まったとて、結局状況は変わらず家には一人きり。とりあえずは目の前にある残りの仕事に向き合いました。
辛かったのは緊急事態宣言の解除が決まった後!
街が動き出す気配を見せ始め、テレビのニュースでは日常を望む声が次々映し出された時に、みんなが元通りに戻っていく「日常」が私にはもうないことを突きつけられます。
スーパーの帰り道、買い物袋を両手に抱え涙がぽろり。
緊急事態宣言なんて明けなければいいのに……。
虚しくも切実な願い事が浮かびました。
と同時に、危機感も芽生えました。このまま行ったら私、絶対にコロナに心潰されるなと。そんなの悔しすぎる、だって誰も悪くない!
単純な私の思考回路によって涙はすぐに怒りへと変わり、エネルギーとなりました。
2020年5月25日、緊急事態宣言解除の日。
私にとっては、絶対に2020年を強く生き抜くことを誓った記念日です。
リモートワークが続く中での退社だったので、最終出社日は実に2ヶ月ぶりのオフィス。荷物をまとめるために入ったオフィスには見事に誰もいなくて、そこに漂う知らない場所の匂いはすでに会社と自分の距離を物語っていました。
読みかけの書類、書きかけのホワイトボード。
たった2ヶ月だけど、コロナによって止められた時間が、そこには確実にありました。
人事の方の指示通り、デスクを拭いて、ホワイトボードを消して、会社から貸与されていたPCをしまうと、ものの5分で終了。うるっときたり、感極まったりすることも一切なく、あまりに静かすぎたので、なんかドラマチックな訪問とかないかな? とわざとゆっくり作業をしたりしたのですが、全然誰も来る気配はありませんでした笑(←会社に禁止されているので当たり前)。
夜は家に帰り、朝から冷やしておいたちょっと良いワインを、自分のご褒美にあけて一人乾杯しました。たっぷり飲んで、気が付けば寝落ち。全部が静かに終わった最終出社日でした。
森本萌乃 1990年東京生まれ。株式会社MISSION ROMANTIC代表。
2013年に新卒で広告代理店に入社後、外資とスタートアップへの二度の転職を経験、スタートアップ企業在籍中に自身の会社である株式会社MISSION ROMANTICを2019年創業。パラレルキャリアで起業と会社員を並行し、2020年より自分の事業へ一本化。2020年中に自身の新サービスであるオンライン書店のオープンを目指す。
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