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連載

#2 30歳独身、無職。本屋さんになる。

コロナ禍の最終出社、失業手当は出なかった 起業家と無職は紙一重

栃久保誠撮影
栃久保誠撮影

目次

30歳独身、無職。本屋さんになる。
新型コロナウイルスが私たちの生活に大きな影響を与えた2020年。起業と会社員のパラレルキャリアを歩んでいた森本萌乃さん(30)は、人生初の「無職」を経験しました。「2020年、思ったよりツラくない?」とぶっちゃけながらも、書店主になる夢に向け、現在はオンライン書店のオープンを目指し全力疾走中です。コロナ後に起こったこと、考えたこと、行動に移したこと……。現在進行形の森本さんの今をつづったコラム「30歳独身、無職。本屋さんになる。」。今回は失業後、自分の会社に専念する中で得た気づきについてです。
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明けないで、緊急事態宣言

栃久保誠撮影
栃久保誠撮影

突然のオンライン会議で契約終了を告げられた時、世は緊急事態宣言の真っ只中でした。退社が決まったとて、結局状況は変わらず家には一人きり。とりあえずは目の前にある残りの仕事に向き合いました。

辛かったのは緊急事態宣言の解除が決まった後!

街が動き出す気配を見せ始め、テレビのニュースでは日常を望む声が次々映し出された時に、みんなが元通りに戻っていく「日常」が私にはもうないことを突きつけられます。

スーパーの帰り道、買い物袋を両手に抱え涙がぽろり。
緊急事態宣言なんて明けなければいいのに……。
虚しくも切実な願い事が浮かびました。

と同時に、危機感も芽生えました。このまま行ったら私、絶対にコロナに心潰されるなと。そんなの悔しすぎる、だって誰も悪くない!

単純な私の思考回路によって涙はすぐに怒りへと変わり、エネルギーとなりました。

2020年5月25日、緊急事態宣言解除の日。
私にとっては、絶対に2020年を強く生き抜くことを誓った記念日です。

緊急事態宣言の解除について記者会見する安倍晋三首相(当時)=2020年5月25日、首相官邸、岩下毅撮影
緊急事態宣言の解除について記者会見する安倍晋三首相(当時)=2020年5月25日、首相官邸、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞社

静かすぎる最終出社

リモートワークが続く中での退社だったので、最終出社日は実に2ヶ月ぶりのオフィス。荷物をまとめるために入ったオフィスには見事に誰もいなくて、そこに漂う知らない場所の匂いはすでに会社と自分の距離を物語っていました。

読みかけの書類、書きかけのホワイトボード。

たった2ヶ月だけど、コロナによって止められた時間が、そこには確実にありました。

人事の方の指示通り、デスクを拭いて、ホワイトボードを消して、会社から貸与されていたPCをしまうと、ものの5分で終了。うるっときたり、感極まったりすることも一切なく、あまりに静かすぎたので、なんかドラマチックな訪問とかないかな? とわざとゆっくり作業をしたりしたのですが、全然誰も来る気配はありませんでした笑(←会社に禁止されているので当たり前)。

夜は家に帰り、朝から冷やしておいたちょっと良いワインを、自分のご褒美にあけて一人乾杯しました。たっぷり飲んで、気が付けば寝落ち。全部が静かに終わった最終出社日でした。

無職初心者。さて、どうしよう

退社後のスケジュール表。予定が一つもなく、笑うしかできませんでした=森本さん提供
退社後のスケジュール表。予定が一つもなく、笑うしかできませんでした=森本さん提供
無職になってから気が付いた大切なことが3つあります。

まず失業した直後は、かっこ悪いから失業したとも言い出せず、誰とも話さない平日の日中が地獄でした。

ここで気づき1、人と仕事をするとはなんて楽しいことだったんだ! ってこと。

雇用保険の失業手当を期待して、ハローワークにも行ったのですが、

「念のためお聞きしますが、現在会社は経営していますか?」

「はい」

「経営者には手当が出せません(*)」

「……? どうにかならないんですか?」

「法律を変えてもらうくらいしか……方法はありません」

最後の最後、念のためにされた質問がまさかの超重要事項でした。

経営者に失業手当が出ないことは知っていましたが、経営者である前に失業者なんだよな……と、小言が漏れそうになりましたが、法律を変える自信なんてあるわけもなく笑。

この瞬間に気づき2、起業したら甘えを捨てる!

私は去年、MISSION ROMANTICという自分の会社を立ち上げています。「本棚で手と手が重なるようなロマンチックな出会い」を生み出すことを目標に、完全に思い優先型で実現した会社だったので、売上なんてまっかっかの大赤字です。

この時に立てた小さな目標が、貯金を食いつぶす前に自分の会社から給与を出せるようになることでした。

ここで最後の気づき3、お金が大事なのは当たり前、「毎月一定の給与が入ってくる安心感」が超安定剤になる!

(*)失業の認定を受けるべき期間中において受給資格者が就職した日があるときは、就職した日についての失業の認定は行わない。(略)受給資格者を代表取締役とする会社設立の登記が行われた場合(実際に営業を開始したかは問わない)は、登記の日以後、安定所の職業紹介にすぐには応じられない状態であり就職したものと同様に取り扱うことが妥当である。――『厚生労働省 雇用保険に関する業務取扱要領』より

役所に通う日々

お金の管理や経営はど素人なのによく起業したなあと、今は1年前のポジティブすぎる自分に憧れすら抱きます。

ただ、朝から晩まで自分の会社に付きっきりになれる状況ってこんなに楽しいのかと、人と仕事するのって楽しい! なんて言ってるそばからアドレナリン出まくりでした。

おまけの気づき4、人と楽しく仕事するより、本気の夢を一人で仕事にする方が馬力は出る!

特に事務手続きは、馬力がないと絶対に出来なかったと思います。

銀行口座の開設、諸々手続き、融資の相談、定款書き替え、リクルーティング。

資料不備が多すぎて、税務署に3日連続で通った日もありました。絶対に笑われてると思ったので、3日目はさすがに帽子を深く被りましたが、税務署の皆様はとても親切でした。
すっかり常連となった渋谷税務署=森本さん提供
すっかり常連となった渋谷税務署=森本さん提供
馬力のみで会社に関するやらなくちゃいけない手続きをすませ、無職でも起業家でもなく、書店主と名乗れるようになる日を夢見て、オープンの土台はぎりぎり整いました。

よし、ここから本格的にサービス開発だと言う時に、失業に次ぐ悲しみに直面します、書店開店におけるお金集め、いわゆる資金調達で全滅しました。

このお話は次回に。
第3話「待って、お金が全然集まらない!資金調達できなかったお話」は10月28日配信予定です。
 

新型コロナウイルスの影響で人生初の「無職」を経験した森本萌乃さん(30)。現在は書店主になることを目指し、オンライン書店のオープンに向けて全力疾走中です。失業からこれまでの日々を綴ります。

森本萌乃 1990年東京生まれ。株式会社MISSION ROMANTIC代表。
2013年に新卒で広告代理店に入社後、外資とスタートアップへの二度の転職を経験、スタートアップ企業在籍中に自身の会社である株式会社MISSION ROMANTICを2019年創業。パラレルキャリアで起業と会社員を並行し、2020年より自分の事業へ一本化。2020年中に自身の新サービスであるオンライン書店のオープンを目指す。

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