連載
#50 ○○の世論
新しい立憲民主党には「期待しない」世論調査で厳しい結果が出た理由
自民支持は最低から最高レベルへ急回復
9月は7年8カ月ぶりに首相が交代する一方で、150人規模の野党も誕生しました。衆院議員の任期があと1年に迫り、次の総選挙の足音も聞こえてくる中、各党の勢いはどう変わったのか。朝日新聞社の世論調査から見てみました。(朝日新聞記者・君島浩)
9月16、17日の世論調査で、自民党の政党支持率は41%に達し、7年3カ月ぶりに4割を超えました。2012年12月に民主党から政権を奪還して以降の世論調査(電話)で、自民党の支持率が最も高かったのは2013年3月の44%でした。その後4、5、6月と3カ月連続で41%を記録して以来の高い支持率です。
自民党の支持率は、内閣支持率とほぼ連動しています。2013年の春は、アベノミクスへの期待などで株高・円安が続いていた時期で、3月と5月の安倍内閣の支持率は65%を記録、第2次政権発足直後の59%を超え、ピークに達していました。
今回の自民支持率も、65%の内閣支持率を記録した菅内閣発足の勢いと歩調をそろえていると言えます。
自民党の支持率は今年5月以降、低迷していました。やはり安倍内閣の支持率と連動しています。5月下旬に内閣支持率が第2次政権としては最低の29%まで落ち込むと、自民支持率も26%と、最低を記録しました。わずか4カ月で、自民支持率も、内閣支持率も、最低から最高レベルへ急回復しました。
菅内閣発足の前日には、旧・立憲民主党と旧・国民民主党などが合流した新しい「立憲民主党」が誕生しました。衆参合わせて国会議員は150人。2017年に分裂した旧民進党とほぼ同規模に回復しました。
この新党への期待度も聞いてみました。
「期待する」は4割に満たず、「期待しない」が5割を超えました。無党派層でも「期待する」と「期待しない」で割れています。
調査方法が違うので単純に比較できませんが、2003年に民主党と自由党が合併した新党に「期待する」は44%で、16年に民主党と維新の党などが合流し、民進党ができた時は「期待する」は32%でした。
新・立憲民主党の支持率は6%で、今年1~9月上旬の平均5%とほぼ変わりませんでした。菅内閣誕生の陰に隠れる形になってしまったせいか、新党効果は見られませんでした。
次に衆院比例区の投票先の推移を見てみます。
自民の1強ぶりが際立ち、立憲が低迷していることが分かります。
9月中旬の調査を分析すると、菅内閣を支持しない層(全体の13%)に限っても、「立憲に投票する」と答えた人は42%にとどまりました。また、新立憲に「期待する」と答えた人の投票先を見ても、立憲は28%で、自民の39%の後塵を拝しています。内閣不支持層の受け皿には、なりきれていないようです。
年代別にみると、18~29歳の58%が自民を選び、立憲はわずか3%でした。30代も自民の54%に対し、立憲は6%。特に若年層で、自民の力強さ、立憲のひ弱さが際立ちます。40代、50代でも立憲を選ぶ人は1割程度で、維新の14%をも下回りました。
立憲が比較的健闘しているのは高齢層で、70歳以上では20%でした。それでも自民の46%には及びません。
立憲は「政権交代のもう一つの選択肢」を掲げていますが、国民は離合集散を繰り返している野党にうんざりしている面もあると思われます。
「選択肢」に浮上するためには、菅内閣の「携帯料金値下げ」を上回るインパクトのある政策を掲げるなどして、「寄せ集め」「マンネリ」イメージを打ち破る必要があるでしょう。
1/7枚