連載
#54 コミチ漫画コラボ
「かぶとさん またね」虫嫌いだった娘が…ひと夏の別れ、マンガに
「チャレンジは人を成長させるんだなぁ」

「ぽんすけ成長日記 カブトムシとの夏」

虫が苦手だった娘は当初悲壮感をあらわにしていましたが、教室の授業でびくびくしながらもカブトムシを持つことに成功。「カブトムシさんもってかえれる!」。それが自信となり、家でカブトムシを飼うことにも前向きになりました。

しかし、別れは突然訪れたのでした。
苦手だった虫…一緒に過ごした時間「だいすきだったの」
「なんでしんじゃったんだろうな」「さむかったのかな」「せまかったのかな」
いつもに増して早口でひたすらしゃべり続ける娘を、ひとりさんは「自転車が止まると倒れるみたい」と例えています。保育園に着くと、ちょっとしたきっかけで、娘はせきを切ったように涙を流し始めました。

「カブトさんのこと だいすきだったの」
残ったメスのカブトムシも大事に育てようとする娘。しかし、残念ながらメスもある日命が尽きてしまいます。
「今回は、泣かなかった。ただすこしのあいだ廊下に大の字になっていた。それが彼女なりの喪に服し方だったのだろう」

ひとりさんはこのマンガをコミチに投稿し、「勇気を学んだ。自信を学んだ。命を学んだ。そんな去年の夏でした。」というコメントを添えています。
1回の成功体験が、大きな自信になった
そう振り返るのは、マンガを描いたひとりさんです。娘のぽんすけ(愛称)は、当時通っていた保育園の先生にも相談するくらい虫に拒否感を持っていたようで、授業当日も「行きたくない」と葛藤していたそうです。

「娘がおそるおそるカブトムシを触るところも見ていたんですが、つかめた時に僕を方を向いてぱあっと笑顔になったんです。できたときの達成感が伝わってきて、僕もすごくうれしくなりました」

娘と一緒に世話「親の方も心を動かされた」

しかし、息を引き取ってしまったカブトとカブコ。娘にとって、初めて経験する身近な生き物の死でした。気持ちをどう整理したらいいかわからず、戸惑う娘の様子を見て、ひとりさんの胸も痛みました。
「親としても飼育ケースやえさも調べて買って、環境を整える努力はしてきたつもりで、『ちゃんとお世話をしたら長生きするんだよ』って娘に伝えたかったんですよね。でもうまくいかなくて、娘にもかわいそうなことをしてしまったと責任を感じました」

別れを経て、命を学んでいく娘
「飼育することになった時、娘が本当にうれしそうにしていたんです。妻もヤドカリは大丈夫なようで、家族で『ヤドちゃん』と呼んでお世話をして、かわいがっています」

カブトムシとの別れを経て、命について理解し始めている娘。悲しい経験でしたが、ひとりさんは「命を自分事にとらえ、大切に感じてもらえてたらいいなと思っています」と娘の心が育っていくことを願っています。
幼い女の子が成長していくひと夏を描いたマンガには、大人も考えさせられる、大切なことが詰まっていました。