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訪日外国人マイナス99.9%の逆境でも…インバウンドサミットの可能性

緊急事態宣言のさなか「はとバス」の車庫では稼働しない約130台のバスが並んでいた=2020年5月8日午後、東京都大田区、朝日新聞社ヘリから、遠藤啓生撮影
緊急事態宣言のさなか「はとバス」の車庫では稼働しない約130台のバスが並んでいた=2020年5月8日午後、東京都大田区、朝日新聞社ヘリから、遠藤啓生撮影 出典: 朝日新聞デジタル

目次

前年同月比マイナス99.9%――普通のビジネスなら、絶望的になるはずの数字ですが、参加者は前向きな議論を深めていました。7月に3000人がオンライン参加した「日本インバウンドサミット2020」。星野リゾート代表の星野佳路さんをはじめ、観光や旅のエキスパートの登壇者も80人を超える盛り上がりを見せました。主催した外国人向けウェブメディアの「MATCHA」代表・青木優さんが「日本には改めてポテンシャルがあると気づきました」と語るイベント。いったいどんな議論があったのでしょうか?

それでもインバウンドは成長戦略の柱

日本が戦略として掲げていたインバウンド。地方の活性化にも期待されていましたが、新型コロナウイルスの影響によって、6月の訪日外国人は約2600人となり、前年同月比99.9%マイナスまで落ち込みました。多くの旅行会社や観光地、宿泊業がダメージを受けています。

青木さんは今年5月、インバウンド業界内で知見を共有しようとFacebookグループ「今だからこそできるインバウンド観光対策」をつくりました。
青木さんがつくったFacebookグループ「今だからこそできるインバウンド観光対策」
青木さんがつくったFacebookグループ「今だからこそできるインバウンド観光対策」
コロナの影響でイベントの開催や観光・旅は難しくなっていました。ちょうどその頃、親子が家で楽しめるワークショップが提供されるオンラインイベントに、数千人以上の参加者が集まりました。

青木さんはインバウンド業界でも同様のイベントができないか考えたといいます。

「今後の10年間で考えれば、インバウンドが日本の可能性であり、成長戦略の柱であることには変わりありません。インバウンドの機運を上げるために、今こそやっておくべきことや、観光のかたちをみんなで考え直したい」

その思いが7月23日に開かれた「日本インバウンドサミット2020 -99.9%日本のインバウンド観光逆転のシナリオ」につながりました。
多くの登壇者が発表され、申込者が日々増えていった日本インバウンドサミット2020
多くの登壇者が発表され、申込者が日々増えていった日本インバウンドサミット2020
全国各地の観光関係者や、デジタルマーケティングや商品造成といった各分野のエキスパートに出演を交渉し、登壇者は約80人に。イベントの参加申込者はどんどん増えていき、前日までに3000人を超えました。

メインのパネルディスカッションには、星野リゾート代表の星野佳路さん、スイスで活躍する観光カリスマ山田桂一郎さん、インバウンドツアー会社WAmazingの加藤史子さん、羽田空港を運営する「日本空港ビルディング」の大西洋さんが集まり、インバウンドの今の打ち手を考えました。
「リピーターに来てもらうことが大事」「桜や京都だけでなく、日本のさまざまな顔を見せていくことが大事」といった意見が上がりました。

星野さんは「日本の観光力の強化には、エコツーリズムや世界自然遺産といった自然観光を強くしていかないといけない。地域らしさを大事にして、観光はご当地自慢であるべき」と指摘しました。
日本インバウンドサミット2020の基調講演・パネルディスカッションのアーカイブ。YouTubeで各エリアやテーマのセッションを見ることができます

オンライン体験が旅行先を決める手段に?

その後、サミットは、東北・九州など地方ごとのエリアセッション、文化・宿泊・食など、カテゴリーに分かれて「課題」や「これから」を語るセッションで議論が深められました。

リアルで旅に出られないなら、オンラインで。筆者が印象的だったのは、Airbnbや渋谷区のオンラインツアーの紹介があった「体験・ガイド」のセッションでした。

プロから料理を学ぶ、五輪・パラリンピックの選手とつながるツアーなど、むしろ「オンラインでしかできない」体験にも注目が集まっています。

ジェイノベーションズ社長の大森峻太さんは「PRとしてのオンライン体験も増えている。オフラインがなくなることはないけれど、コロナ後もオンラインツアー自体は盛り上がっていくと感じている」と話します。
日本インバウンドサミット2020トークセッション【体験・ガイド】テーマ「これからの観光の体験はどう変わるのか?」
日本インバウンドサミット2020トークセッション【体験・ガイド】テーマ「これからの観光の体験はどう変わるのか?」
渋谷区を案内するオンラインツアーの海外からの参加者は7割がアメリカ人。20代の参加が多く、開催を決めればほぼ予約が入るような状態だったといいます。

今後、旅行者が旅行先を決めるとき、「オンライン体験を通じて『この街に行ってみたいな』と実際の旅先を決めるようになるのでは」という渋谷区観光協会の小池ひろよさんの指摘にはうなずきました。

インバウンドがいつ戻ってくるのか、まだまだ先は見通せませんが、「みんなでトンネルの出口を探そう。それまで準備できることをしよう」と前向きに探るディスカッションは、観光に携わる参加者を勇気づけるものでした。

「『旅行したい』という欲求は変わらない」

筆者は旅が好きなこともあって、青木さんがイベントの運営ボランティアを募集しているときにすぐ手を挙げました。海外・国内を問わず、新しい文化や街や人に出会って、見たことのない風景に感動したりおいしい物を味わったり、過去の歴史を振り返ったり……。これまで旅にたくさん救われてきたので、何か旅行業界の力になれないかと考えたからでした。

そんな私にとって印象的だったのが、WAmazingの加藤さんの「人の『旅行したい』という欲求は変わらない。まだまだ成長産業になりうる」という言葉でした。旅は「不急」かもしれないけれど「不要」ではないと感じていたので、励まされるような思いがしました。

青木さんは「今回のイベントで、日本には魅力的な観光資源がたくさんあり、ポテンシャルがあると改めて分かりました。ただ、インバウンドは世界戦です。知恵や戦略をシェアして日本の競争力を上げるため、2回目、3回目と続けていきたい」と話しています。

サミットの講演や各セッションは、サイトの「YouTubeで視聴」からみることができます。
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