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#49 #やさしい日本語
会社を辞めた月の給料がもらえない 外国人労働者の相談が急増
「時給400円」の実態も
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◆会社を辞めた月の給料がもらえない 外国人労働者の相談が急増
こんにちは。POSSEの岩橋誠です。今回は、「会社が給料を払わない」という外国人の相談です。コロナで仕事をやめた人は多いと思います。でも、辞めたあとに最後の月の給料を払わない会社がたくさんあります。きちんと給料を払ってもらうためには、どうすればいいでしょうか。一緒に考えていきましょう。
■会社は最後の給料を払ってくれません
【中国出身、男性、周さん(仮名)、40歳代】
私は技能実習生です。2年前に、中国から日本に来ました。日本では、茨城県にある工場で働いていました。 仕事はとても大変でした。毎日、朝7時から夜10時まで、働きました。工場は24時間動いていました。だから、夜勤もたまにありました。休みは1週間に1日しかありませんでした。でも、給料は1か月16万円だけでした。残業代はもらっていません。
もう働くのは大変だと思ったので、私は今年6月に会社に「辞めます」と伝えました。会社は「わかりました」と言いました。そして私はこの会社を辞めて、新しい会社を探しました。 会社が私の銀行口座に、6月分の給料を払う日になりました。でも、給料は払われませんでした。私は会社に「給料はどうなっていますか」とメールをしました。会社は返信しませんでした。 給料が払われないと、私は食べ物を買うことができません。家賃を払うこともできません。私は、中国にいる家族に仕送りをしなければいけません。私はどうすればいいでしょうか。
■会社は給料は絶対に払わないといけません
POSSEには、周さんと同じように、「辞めた後に、会社が最後の月の給料を払わなかった」という人から、相談がたくさんあります。 会社は、あなたが働いた分の給料を、あなたに絶対に払わないといけません。これは、労働基準法という法律で決まっています(労働基準法24条)。「あなたが勝手に辞めたから、払わない」というのは違法です。 日本の法律は、会社が働いた人に給料を払うときのルールを決めています。
1)通貨(お金)で払うこと
2)直接、働いた人に払うこと
3)全額払うこと
4)毎月1回払うこと
5)毎月、同じ日に払うこと
会社は、この5つのルールをすべて守らなければいけません。1か月の給料が16万円と決まっていたら、毎月、16万円を、同じ日に(給料日に)、お金で払わなければいけません。あなたの代わりに、別の人に払うことは違法です。払うことが遅くなったら、それも違法です。お金の代わりに、食べ物で払うことも違法です。 また、給料は、1分ごとに払われなければ、いけません。例えば、6時58分から8時03分まで働いたときは、1時間5分の給料を払います。30分や1時間単位で切り捨てるのは、違法です。
■残業代も払われていません
また、会社は周さんに残業代を払っていません。これも違法です。 周さんの契約書では、「月給16万円」は、1日8時間で、1か月に20日くらい働いたときにもらう給料だったはずです。どれぐらい、残業代をもらうべきか、計算してみましょう。
まず、1時間の給料を計算します。 契約書の通りに、1か月に働く日が20日だとすると、1日の給料は8000円です(1カ月の給料 16万円÷働くことが決まっている日 20日)。1日8時間働くので、1時間の給料は1000円です(8000円÷8時間)。
次に、残業した時間を調べます。周さんは、「朝7時から夜10時まで、1日15時間働いていました」と言っています。その場合、毎日7時間の残業をしていたことになります。また、土曜日は全部残業時間です。だから、1週間に50時間残業していたことになります(平日7時間×5日+土曜日15時間)。 1か月だと200時間の残業です。
日本の法律では、残業のときは、普段の給料の125%をもらうことができます。 もし、契約で「休み」と決まっている日に働いたときは、普段の給料の135%をもらいます。 また、夜10時から朝5時の間に働くときは、普段の給料の125%をもらいます。
周さんの場合は、残業した時間は、普段の給料の125%をもらうことができました。
(1時間の給料1000円×残業で増える分1.25×残業した時間200時間=250,000円) だから、本当なら、会社は周さんに25万円の残業代を毎月払わないといけませんでした。 もし2年間、同じように働いていたのであれば、600万円の残業代をもらっていないことになります(25万円×24か月)。
■証拠を残してください
周さんと同じように、「会社の払う給料がおかしい」と思う人は、働いた時間の証拠を残しておいてください。よく会社は、あなたが実際に働いた時間ではなく、偽物のタイムカードを作ります。タイムカードがない会社もあります。だから、「朝●時から夜●時まで働いた」という記録を自分で残しておくことが大事です。
まずは、タイムカードを写真に残してください。スマートフォンでタイムカードの写真を撮ってください。また、実際にあなたが働いた時間をメモしてください。そのときに、できるだけ細かい時間を書いたほうがいいです。例えば、6時56分から21時59分まで働いたと、ちゃんと1分単位で書いてください。
そして、「給料がおかしい」と思ったら、誰かに相談してください。給料の計算の仕方がわからなくても、相談できます。POSSEでも24時間メールで相談できます。お金はかかりません。POSSEは、あなたが会社に「給料を払って」と言うことをサポートします。
周さんの会社は、タイムカードが2つありました。嘘のタイムカードには、毎日9時から17時までと書かれていました。そこで周さんは働いた時間を自分でメモしました。いま、周さんはPOSSEの紹介したユニオンに加入して、会社と話し合いのための準備をしています。
■給料未払いが蔓延する日本社会
POSSEには、外国人労働者から「最終月の給料が払われない」という相談が多く寄せられています。特に、コロナ禍において、違法に休業補償を支払わない会社が多い中で、転職のためにやむを得ず退職したところ、前の会社から最終月の給料が支払われずに生活に困窮する、という相談が殺到しています。
また、外国人労働者のなかでも技能実習生においては、コロナ以前から、労働条件の劣悪さが問題視されていました。厚生労働省の調査によれば、技能実習生を雇用している事業の70.4%で労働法違反がみつかっています(技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況・平成30年)
今回の相談事例も、名前を仮名にした以外は、事実に基づいて書いています。技能実習生の多くは長時間労働を強いられ、中には最初から時給300円というケースも存在します。周さんの場合も、残業代が未払いであるため、実質的な時給は単純計算で444円ほど(16万円÷〔通常160時間+残業200時間〕)になります。 また、月200時間の残業は、国が定める「過労死ライン」の月80時間の残業を大幅に超えており、いつ過労死してもおかしくないほどの長時間労働です。
適切な賃金が支払われていないだけでなく、命の危険にさらされている外国人が日本には多くいます。 POSSEは、そのような外国人を支援するために、無料で相談を受け付けて、一緒に賃金の請求のサポートをしています。知り合いの外国人の方で、このような問題がある方をみつけたときは、POSSEのような相談窓口をご紹介いただけると幸いです。
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