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Yahoo!ニュース「#コロナとどう暮らす」企画班さんからの取材リクエスト

在宅勤務時の「スマホ育児」、控えるべき?



コロナで気になる「スマホ育児」華人の家庭も同じ…専門家の答えは?

ウイルス流行で再浮上した親世代の課題

以前から、その是非が論争の的になってきた「スマホ育児」。在宅勤務が広がる中、再び脚光を浴びています。罪悪感を抱く親世代も少なくないですが、本当に子どもに悪影響はあるのでしょうか?(画像はイメージ)
以前から、その是非が論争の的になってきた「スマホ育児」。在宅勤務が広がる中、再び脚光を浴びています。罪悪感を抱く親世代も少なくないですが、本当に子どもに悪影響はあるのでしょうか?(画像はイメージ) 出典: PIXTA

目次

取材リクエスト内容

新型コロナウイルスの流行後、感染を避ける目的で、在宅勤務の動きが広まりました。
一方で、現役の子育て世代からは、育ち盛りのわが子の世話にかかり切りで、仕事に集中できないという声も上がっています。

こうした中、働く時間をつくるため、スマートフォンで動画などを見せる「スマホ育児」に頼る人は少なくありません。

「子どもの成長に悪影響が及ぶ」といった批判も出ていますが、控えた方がいいのでしょうか? Yahoo!ニュース「#コロナとどう暮らす」企画班

記者がお答えします!

新型コロナウイルスの影響で、家族が一緒にいられる時間が増えた一方、仕事中に子どもの相手をするのが大変だという声も聞きます。コロナの影響をいち早く受けた中国も状況は同じで、やんちゃな子どものことは「神獣」とも呼ばれています。子どもの気を紛らわせようとアニメやゲームに頼ってしまいがちですが、スマホなどを長時間使うことを心配する声も少なくありません。IT化が進む中国で起きている「神獣」との生活の実態、専門家の意見から、子育てと電子機器の付き合い方について考えます。(withnews編集部・章蓉、神戸郁人)

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「神獣」と呼ばれる子どもたち

中国と日本で子育てをしてきた記者(章)にとって、悩みの種になったのが、エネルギーがあり余っているのに、外出できない子どもとの接し方でした。

そんな状況を象徴するように、日本に住む華人の間で、子どもを「神獣」と呼ぶ家庭が増えています。もともと、中国大陸で使われ出したこの呼び名。「神獣」はゲーム用語で、「ポケットモンスター」など想像上の動物を指していました。コロナウイルスの流行後は、家にいる子どもの「モンスター」ぶりと一致。手を負えない、やんちゃな子どものことを意味するようになりました。

中国では、今年4月下旬から5月上旬に学校が授業を再開。「モンスターたち」がやっと学校に戻れたという意味で、「神獣帰籠」という言葉もはやりました。親たちのほっとした気持ちが伝わってきます。

中国河北省・石家庄市の学生団体は今年3月、市内の6726世帯を対象に実施した、アンケート調査結果を公開。保護者が心配した主な事柄として、子どもたちがずっと家にいて、テレビ・スマホなどの電子機器類を見ていることが上がっています。

【関連リンク】石家庄日報の関連記事(中国語)
中国に住む人々や在外華人の間で、外出できない子どもたちは「神獣」と呼ばれている(画像はイメージ)
中国に住む人々や在外華人の間で、外出できない子どもたちは「神獣」と呼ばれている(画像はイメージ) 出典: PIXTA

記者の家にも「神獣」が

記者には、二人の息子がいます。長男は小学校2年生で、テレビとゲームが大好きです。長男の場合、学校からの宿題があるので、テレビなどを見る時間を制限することはできます。

難しいのは、まだ2歳の次男。長男の影響を受け、時々アニメを見ています。外出自粛が厳しかった時期は、子どもたちも在宅している時間が増えました。絵本とおもちゃなどに飽きた時には、やはり「アニメが見たい」とねだってきます。

時間があれば、「アニメを長く見たら目が悪くなるよ」と説得したり、一緒に遊んであげたり、また「何かおいしいものを食べよう」と注意を逸らしたりすることもできます。しかし仕事や家事で忙しい時は、ゆっくり付き合うことが難しい。そんな時は、ついつい、「いいよ」と答えてしまいがちです。

せめて、アニメを見る時間を、20分や30分に制限しようとも思いますが、仕事の電話が長引くと1時間以上になる時も少なくありません。結局、子どもがアニメを見る時間も伸びてしまうことがしばしばあります。

子どもたちにずっと動画やスマホを見せていいのだろうか――。そんな気持ちを持ちながらも、「仕事があるから、仕方ない」と割り切らざるを得ない状況です。

「子どもにスマホを見せていいのか…」と揺れ動く親世代の心情は、国境を越えて共有されているようだ(画像はイメージ)
「子どもにスマホを見せていいのか…」と揺れ動く親世代の心情は、国境を越えて共有されているようだ(画像はイメージ) 出典: PIXTA

ほかの家庭の事情とママたちの意見

記者と似た境遇にある、華人家庭の話を聞きました。30代の母親Aさんは次のように語ります。

「娘は3歳です。保育園がまだ休園していなかった時期にも、中国にいる親が心配で、子どもを『自主休園』させました。休みを長く取り、夫と一緒に娘の世話をしました」

「しかし、家に長くいると、子どもはテレビを見ない時はiPadを見ます。見せないと泣いてしまいます。夜、寝る時間が遅くなるし、朝は起きられません。お友達と遊んでいないので、数カ月で結構太ったと思います。目が悪くなるのではないかという心配もあるし、生活リズムも悪くなったと思います。すごく悩みましたが、保育再開後、娘を保育園に通わせることにしました」

別の30代の母親Bさんも「テレビやスマホは見放題」と言います。

「息子はまだ小学校3年生ですが、既にメガネをかけていますよ。自分の仕事はIT関連ですが、5月に新しい『現場』に配属されたばかりで、在宅勤務と言っても仕事が非常に忙しく、息子へ気を配る余裕もなかなかありません。正直に言うと、昼ご飯や晩ご飯も出前がほとんどです」

「子どもは宿題さえ終われば、テレビやスマホなどは見放題です。以前は学校での成績や、習い事などに関して、親として不安もありましたが、現在は考え方が柔軟になりました。現状、子どもを育てていくためには、スマホを見せることは避けようがありません。もちろん、親がそばにいてあげて、毎日1時間程度の運動もさせた方が理想的だとは思います」

40代の母親Cさんは、現状について「デジタル時代のジレンマ」と表現しました。

「在宅勤務中なので、小学校3年生の娘は家にいて、まるで『籠に閉じ込められた獣』(中国語:困獣)のよう。子どもにiPadなどを見せるのは、やむを得ません。仕事に集中できるという意味で、プラスの面もありますが、本当ならずっとは見せたくないです。見せるときにはタイマーで30分などと設定し、時間を制限しています」

「子どもとスマホやアニメの関係は、デジタル時代のジレンマだと思います。親として子どものネット中毒などを心配する一方、子どもたちはもうネットゲームなどを完全に避けることはできません。ゲームやアニメは、子どもが友達を作るきっかけにもなっていますので、完全にシャットアウトすることは難しいのです。ポストコロナの時代でも、電子機器類、そしてゲーム、アニメとどう付き合うかは重要な問題だと思います」

子どもとスマホの関係性を、ある親は「デジタル時代のジレンマ」と表現する(画像はイメージ)
子どもとスマホの関係性を、ある親は「デジタル時代のジレンマ」と表現する(画像はイメージ) 出典: PIXTA

「ポストコロナ時代」でも続くスマホ問題

話を聞いた華人の中には、子どもの長時間のスマホの利用や、アニメの視聴に対して、「仕方ない」「スマホは不可欠」「授業後は見放題」という意見を持つ人もいました。一方で、視力の悪化や、ネット中毒といった問題を心配していたケースも少なくありません。在宅勤務中、仕事に集中するため、育児にアニメやスマホを利用することに、罪悪感を覚える親も多いのが実情です。

中国は、日本よりもキャッシュレス化が盛んであるなど、ITへの対応が進んでいる面があります。スマホなど電子類機器のネイティブ世代とも言える子どもたちから、完全にスマホなどをシャットアウトするのは不可能です。むしろ逆効果をもたらす(思春期や成人になると、逆にゲーム漬けになる)ことも考えられます。

ウイルス禍の中、親子が一緒にいる時間が長くなったことで、改めて浮かび上がったとも言える「スマホ」問題。「ポストコロナの時代」に、電子機器とどう付き合うかは、世界中の親にとって他人事ではないと思います。

完全にスマホをシャットアウトできない現代に、子どもとどう距離を取らせるか……。親たちは課題に直面している(画像はイメージ)
完全にスマホをシャットアウトできない現代に、子どもとどう距離を取らせるか……。親たちは課題に直面している(画像はイメージ) 出典: PIXTA

「子どもがスマホを求めるのは自然なこと」

「スマホ育児」について、子どもの成育過程に詳しい、恵泉女学園大学の大日向雅美学長(発達心理学)は「デジタルデバイスは用い方が重要。子育てに生かすことを、罪深いと感じる必要は全くありません」と語ります。

大日向さんによると、子どもには「応答的」なものを好む性質があります。自らの行為による対象の動きの変化を面白がるというものです。ベビーベッドの上につるし、押せば回るメリーゴーランド型のおもちゃで遊んでいる様子を思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。

スマホを使う際も、画面に触れるとタブが開いたり、フリックでするすると文字列が流れたり、といった反応を楽しむことができます。「こうした道具を、子どもが求めるのは自然です。親が日常的に扱っているからこそ、余計に魅力を感じるという側面もあるでしょう」

一方、多くの親世代が心配する、成長への影響についてはどうでしょうか? 大日向さんいわく、学術的な統一見解は、まだ存在しないそう。ただ、何時間も連続して動画を視聴するなど、極端な使い方をしなければ、心身に害が及ぶことは考えにくいといいます。

「短編ドラマや、ネット上で配信されているマンガには、1話あたり15分前後で見終えられる構成になっているものも多くあります。これにならい、たとえば1回あたりの使用時間を15分ほどに限る。そして午前中と午後に分け、スマホに触れる回数を設定しておく、などの対応を取るとよいのではないでしょうか」

恵泉女学園大学の大日向雅美学長
恵泉女学園大学の大日向雅美学長 出典: アートスタジオスズキ提供

親子で納得するまで「交渉」することが大切

親と子どもが、事前にこうした取り決めを交わしておくことは、教育上大きな意義がある。大日向さんは、そう語ります。

子どもは3歳くらいになると、約束ができるようになります。あらかじめ守るべきことを話し合うためには、親子間で互いに納得するまで話し合う「交渉」が欠かせません。きちんと手順を踏めば、ねだられてつい端末を渡してしまう、といった事態も防げます。

更に重要なのは、子どもと一緒にスマホを用いること。目にしているコンテンツの内容は、年齢にふさわしいか。あるウェブサイトを、なぜ楽しく見ているのか。そのように、同じ時間を共有し、スマホを使うメリット・デメリットについて、少しずつ認識を一致させていくことが有効なのだそうです。

とはいえ、必要以上に規則をつくってしまえば、家族関係がギクシャクしかねません。親の考え方を明確に伝えつつ、子どもの意見を聞いた上で、スマホの使用法を決めるプロセスこそが大切と、大日向さんは強調しました。

「むやみに約束事を増やし、それにとらわれてしまっては本末転倒でしょう。最も伝えたいのは、面倒臭がらず、必要なコミュニケーションを取って欲しいということです。結果的に、それぞれのご家庭に合ったスマホとの向き合い方が見つかればいいな、と思います」

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