マンガ
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幼稚園で起きた「正義が暴走した日」マンガに「誰も悪くない」怖さ
涙で伝えた「ちょっとでも覚えていて」

エェコさんが描いた「正義が暴走した日」

きっかけはキャラクターの「シール」。エェコさんの娘に「シールをあげようか?」といつも聞いてくる友だちがおり、「ほしい」と答えると「あげない」と言われることが何回かあったそうです。困る娘にエェコさんが「『いらない』って言えばもう言ってこないと思うよ」とアドバイスしたことで、この日、娘は友だちの「あげようか?」を初めて断りました。

ところがいつもと違う返事に、友だちは腹が立ったようです。「ヒドイこと言われた」と周囲の子どもに胸の内を明かすと、「娘がひどいことをした」という言葉だけが広がっていきました。
「本当は違うのに」と思っても、娘は怖くて萎縮してしまい何も言えません。すると、「ひどいことをしたのに謝らない」という話を聞いた男の子が、娘を叩いてしまったのでした。男の子は頭を叩こうとしたようですが、頰に当たり、娘はショックで泣いていたのです。

最初に「ヒドイ」と言った友だちも、意地悪ではなく自分の感じたことを話している。他の子どもたちも、自分たちが「正しい」と思った。男の子も、周囲の意見を信じた……。しかし、こうして人数が増えることで、ひとつの意見が「正しい」とされてしまう「正義の暴走」を、エェコさんは目の当たりにしたのでした。

「心が傷つくって家族もみんな悲しい気持ちになる」
帰ろうとした時、エェコさんは先生に呼び止められます。一連のトラブルに関わった子どもたちとその保護者が、謝罪したいとのことでした。迷いながらも行ってみると、子どもたちは元気に仲直り。「お母さんからも何かありますか?」と言われたエェコさんは、子どもたちに「知っておいてほしいことがあるんだ」と伝えます。

「もしまたこういうことになったら両方のお話を聞いてあげてほしいの 『みんな』が言ってるからそれが正しいって思わないで 両方のお話もちゃんと聞いてあげて」
「必ず先生にも一緒に考えてって混ざってもらって下さい みんなはまだ子どもだからみんなだけで解決するのはできないと思うんだ だから大人の知恵も借りて下さい」

「大人でもとても難しいことですが とても大切なことだと思っています 全部でなくても…一部でもいいから 覚えていてほしい… そう願っています」という言葉で漫画はしめくくられています。
正義が暴走した日「幼稚園で起きた出来事」① pic.twitter.com/ypiYUU1w07
— エェコ (@nakiri_aik) July 27, 2020
「誰も悪くない」自身の体験があったから
こうした考えに至った背景ついて、作者のエェコさんは「実は私自身、小学校の頃に娘と同じ体験をしました」と明かします。
「その時は娘の時より酷く集団で責め立てられ暴力も振るわれました。とても怖かったです。その後、先生が気がついて双方に事情を聞いてくれたのですが、相手方はたった一人の『あいつが動物をいじめていた』という言葉を信じ、行為に及んだということがわかりました」
しかし、その相手の言い分の真相は「勘違い」でした。エェコさんが野良猫をなでていたところを、猫を叩いているように見間違えていたのです。

こうした娘の体験を経て、「私の体験談で同じように悩んでいる方のお役に立てられれば」と思い、今回の漫画を描いたのだといいます。
「ちょっとでも覚えていてくれたら」
子どもたちに伝えた話についても、「なるべく子どもにもわかりやすい言葉を選んで伝えたつもりです。ちょっとでも覚えていてくれたら嬉しいなと思っています」とエェコさん。

「娘は年齢が低いので無事解決できましたが、年齢があがるにつれてより複雑な出来事が起こってしまうかもしれません。その時、この漫画のような方法では解決できない場面が出てくると思います。しかしやり方は違えどなるべく平和的に解決するため、できる限り子どもをサポートできたらなと思っています」