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結成30年、アインスフィアの今 メジャーをやめて見えた世界

「体形も体重も変わってない」再結成のきっかけは「1本の電話」だった

「Eins:Vier」。左からベースLunaさん、ボーカルHirofumiさん、ギターYoshitsuguさん=小松陽祐氏撮影
「Eins:Vier」。左からベースLunaさん、ボーカルHirofumiさん、ギターYoshitsuguさん=小松陽祐氏撮影

目次

誰もが憧れるメジャーデビューを果たしても、様々な理由で解散してしまうバンドは少なくありません。ロックバンド「Eins:Vier(アインスフィア)」は、12年の時を経て再結成。今年結成30周年を迎えました。3人のメンバーが歩んだそれぞれの道、再び一緒に活動して見つけたもの。「売れるぞ!」という思いで突っ走ったデビュー前。コロナ禍を経て今、あらためて音楽の価値に向き合う3人の軌跡を聞きました。(朝日新聞・坂本真子)

偶然かかってきた電話

Eins:Vierは1990年に4人で結成されました。バンド名はドイツ語の「1」と「4」から。1995年にメジャーデビューし、ビジュアル系ブームの中で、英国ロックの影響を受けた透明感のあるギターサウンドや、個性的な歌声、人間の内面を描いた歌詞など、独自のスタイルで注目されました。しかし、1999年1月にボーカルHirofumiさんが脱退。同じ年の11月に解散しました。

4人は別々の道へ。それぞれに音楽活動を続け、2011年、ライブイベント出演のためにHirofumiさん、ベースLunaさん 、ギターYoshitsuguさんの3人で再結成します。

12年のブランクを経て再始動したきっかけは、とある酒席での、Lunaさんの携帯電話への着信。さいたまスーパーアリーナで行われるイベント「V-ROCK FES」への出演を依頼するものでした。その場には偶然Hirofumiさん、Yoshitsuguさんも同席していました。

Lunaさんは振り返ります。

「僕1人だったら、『メンバー絶対やる気ないと思うんで』と、すぐ断っていたと思います。でも、2人が目の前にいたので、意見を聞けた。最初は『やっぱりやりたくない』という感じだったけど、その場にいた人に『12年もやっていないのにそんなビッグな話をもらえるなんて、すごくありがたいことじゃないのか』と言われて、『確かにそうだよな』と。少し軟化して、『1回やってみる選択肢もあるかも』という話になったんです」

1度だけのつもりでステージに立ったら、大きな反響が。そして、「再結成した以上はワンマンライブを」と周囲に勧められ、翌2012年に東京と大阪で1回ずつライブを行いました。

ベースLunaさん=小松陽祐氏撮影
ベースLunaさん=小松陽祐氏撮影

「一緒に音楽をやれるうちにやっておこう」

すると、それまで最もかたくなに「やりたくない」と主張していたHirofumiさんの気持ちに変化が生まれたそうです。

「もともと、『やりたくない』と言ってバンドを辞めた人間が率先して再結成することはできないし、自分の思考から完全に排除していました。でも今この話を断ったら、もう2度と機会はない。メンバーの間に『やってもいいんちゃう』というムードが出てきたなら、ここで俺がやるかやらないかで話が決まるのなら、一歩踏み出してやってみようと。さいたまスーパーアリーナのステージに立って、待っていてくれた人たちの存在を実感したし、拒む理由がなくなって、みんなのタイミングが合ったらいつでもやる、と決めたんです」

そう語るHirohumiさんが2人に呼びかけ、2017年、4年ぶりに再始動。Hirofumiさんの50歳記念ライブでも演奏し、翌2018年には6都市を回るツアーも行いました。

当初は乗り気でなかったというLunaさんですが、「Hiroちゃんが『50歳になる年にアインスをもう1回やりたい』と言ってきたので、僕も発想を変えて、『大きく動くならやるよ』と。その流れでライブツアーや、セルフカバーアルバムの話が出てきたんです」。

一方、Yoshitsuguさんが承諾したのは違う理由から。「みんな元気で生きている、3人で一緒に音楽をやれるうちにやっておこう、と。年を重ねて考えが変わりました」

2018年に発売されたセルフカバーのベストアルバム「Searching Red Light」では、約20年前の楽曲を、いまの3人がかっこいいと思うアレンジで演奏。変わらず張りのある歌声と、深みを増したサウンドからは、3人のこれまでの歩み、バンドの歴史を感じました。

Eins:Vier / In your dream - 2018

「アインスがあったから、音楽で食えている」

離れていた12年間には、それぞれに葛藤がありました。

Hirofumiさんは、何をやればいいのか、ずっと迷いがあったと言います。

「メジャーデビュー後の活動で見失ったものが、辞めたら見えてくると思いきや、辞めてもずっと『どうやって歌ってたんやろ』『何をどういう思いで詞に書いていたんかな』と」

「wipe」「Raff-Cuss」などのバンドや、ソロで活動しながらも、迷い続けたというHirofumiさん。2011年のEins:Vier再結成ライブで気づいたことがありました。

「俺はこういう風に歌ってたんや、もっとこんな感じにできるな、と意識が開けて、気持ちがスッキリした。思うまま何も背負わず、楽しめばいいのかな。うまいこといかなくても、これでええねん、これが俺が今まで築いた全てです、と思えるようになったんですね」

LunaさんもRaff-Cussで活動していましたが、途中で体調を崩し、3カ月ほど入院します。

「不摂生がたたったのか、そこで全てが切れて、2年ぐらい引きこもりました。もうバンドはやらへんやろうな、無理やろな、と思ってたんです」

そんなとき、古い知人に「Lunaさんのベースで歌いたいんです」「スケジュールも何もかもLunaさんがやりやすいようにするので」と頼み込まれました。意を決して再びステージへ。

「やってみたら、できたんですね。あ、できるんだ、と。無理やり引きずり出してくれたその子には今でも感謝しています。前ほどのペースじゃないけど、音楽をやるようになりました」

2013年に結成したロックバンド「R2Y+J」(リリィ・ジョーカー)で定期的に活動。仲間と朝まで飲み明かすことも。「そんなことはもうできないと思っていたので、まだ俺できるわ、と、めっちゃうれしかったですね」

Yoshitsuguさんは、「caterine」でメジャーデビューし、解散した後は、清春さん、TETSU69、INORANさんらのサポートを務めつつ、自らのバンド「alcana」で活動。2014年からはHirofumiさんとのアコースティックユニット「yohiaco」で活動しています。

「ありがたいことに、アインスの後もずっと音楽を続けていて、アインスがあったからこそ、音楽で食っていくことができているし、自分のバンドもやれているんですよね。それはすごくありがたいことだな、と思います」

ギターYoshitsuguさん=小松陽祐氏撮影
ギターYoshitsuguさん=小松陽祐氏撮影

「歌いたいという思いは10年前より増している」

そんなYoshitsuguさんは、20代の頃よりも深く音楽を聴き込むようになったそうです。

「若いときは単純に曲として聴いていたけど、今は1つのものをすごく深く掘り下げていくと、アレンジとか、まだまだ気づいていないことがあったと感じることがいっぱいあって。そういう聴き方が増えて、音楽に対してより深く向き合うようになりましたね」

これに対し、Lunaさんは音楽をあまり聴かなくなったとか。

「今はたまに聴いても昔のCD。この3年で買ったCDは2枚ぐらいかも。音楽との距離はめっちゃ空いたけど、一歩一歩、これで終わってもいいと思いながらやっているので、そういう意味では昔と変わっていないと思います」

最近は、曲を作ることは減りましたが、他の人が作った曲をアレンジすることがとても楽しいそうです。

「アイデアが広がっていって、1曲1曲に込めている思いは昔と変わらないし、自分が作っていた曲と変わらないぐらい思い入れのある曲ができあがる。充実しています」

一方、Hirofumiさんは、Eins:Vierでメジャーデビューする前と後で、音楽との関わり方が大きく変わった、と言います。

「デビュー前は、『売れるぞ!』という思いがあったけど、メジャーに行って、俺はああいう世界は精神的に合わないと実感して辞めたんです。人に伝えて受け入れられたいし、売れたいという思いは今でもあるけど、もっと好きなようにやりたい。自分の許容範囲、スキルもひっくるめて、今は好きなようにやっているので、歌いたいという思いは10年前より増しているし、音楽があって良かったな、という思いも日に日に増しています」

ボーカルHirofumiさん
ボーカルHirofumiさん

「自分に響かないとお客さんにも響かない」

音楽活動をする上で、3人が最も大切にしていることは何でしょうか。

Hirofumi さんは「正直であること」ときっぱり。それはずっと変わらないそうです。

「だって、それができなくなったからアインスを辞めたし、それが見えなくなったから悩んだ。最近は正直になれていると思います」

Lunaさんは、本気でやること。「手を抜いたり、周りに合わせたりして本質を見失わないように。何でも言われた通りにやるのは自分に向いてないし、しんどい。それより自分で本気で向かい合うことを大事にしていないとアカンな、と思っています」

「どれだけ響くか、を大事にしている」と語るのは、Yoshitsuguさんです。

「自分に響かないとお客さんにも響かない。自分がワクワクしないとバンドはやれないし、やりたくない。ただ、いろんなことを経験すると、ワクワクする幅が狭まってくる。ライブでも曲作りでも、どれだけ響くか、を大事にしたい。それが全てですね」

3人がそれぞれのやり方で、音楽と真っすぐ向き合ってきたことが、よくわかる言葉です。

「Eins:Vier」の3人=小松陽祐氏撮影
「Eins:Vier」の3人=小松陽祐氏撮影

「体形も体重も変わってない」

これからについて、どう考えているかも聞きました。

Lunaさんは、将来の目標というものはないそうです。

「今、この瞬間はまだやりたいからやってる。他に人生でやりたいこともあるから、そっちに切り替わるときが来るかもしれないけど、今この瞬間は、まだやりたいのでやってます」

昨年、「生誕五十年記念祭」が盛大に催されたYoshitsuguさんですが、いつまで続けられるのか、という恐怖感があると言います。

「若い人がいっぱい出てくるし。いつまでやれるのかな、と考えたりしますね。音楽をずっと続けていきたいという気持ちはあるんですけど、長生きするかどうかもわからんし、そういう意味では精いっぱいやることが大事なんかな、と思います」

Hirofumiさんは、50代に入ってあまり悩まなくなり、精神的に楽になったそうです。体力作りも欠かしません。

「継続、習慣であって、努力じゃないんですよ、アインスを始めた20代の頃から続けてきた地道な筋トレが、まさに30年かけて、今ようやく実を結んでいます。体形も体重も変わってない。といっても、もともとは自分に甘いんで、『まあ、しゃあないよな』という場面が腐るほどあるんです。『ま、いいか』をどれぐらい減らしていけるか……」

初の無観客ライブを前に思うこと

今年、Eins:Vierは結成30周年を迎えました。「お祭りのような意識。続けていないので実感はない」(Hirofumiさん)そうですが、「やるんだったら、ある程度きちんとした形で動こう」(Lunaさん)と、4月に3日間イベントを主催し、7月に新曲を発売、9月に大阪と東京で単独ライブ……という計画を立て、準備を進めていました。

中でも新曲のリリースは21年ぶり。今回インタビューした今年3月初め、まだ制作途中だった新曲について、「ワクワクするのか、がっかりするのか。できあがった段階まで楽しみにしていてください」(Hirofumiさん)、「セルフカバーよりハードルが高い」(Lunaさん)、「いい曲に仕上げることしか考えてないです」(Yoshitsuguさん)と、口々に思いを語っていました。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、主催イベントは中止に。単独ライブは来年5月に延期することが決まりました。

デビュー記念日の7月21日に発売予定だった新曲も延期されましたが、代わりにミニアルバムを秋に出すことが発表されました。また、7月21日と8月26日に1曲ずつ、新曲を先行配信するそうです。

そして、7月21日には、彼らにとって初めての無観客ライブを配信します。老舗ライブハウス、新宿LOFTでの演奏を、午後8時から配信予定です。それに向けて3人がコメントを寄せてくれました。

Hirofumiさん
「まだ不思議な感覚です。戸惑いの中進んでいます。それでも、情熱は冷めることはない。みんなと同じ時代の狭間で、精一杯歌うよ。Eins:Vier結成30年にしてはじめての無観客ライヴ! 楽しい時間を共にしましょう」。

Lunaさん
「無観客ライブ。。30年以上ライブをやってきてまさかこんな経験をすることになろうとは。そこに居る自分がまったく想像出来ないけど、まぁ未知を楽しむということでせっかくやる以上なんらかの繋がりは感じられたらいいなと思います。そうや! みんな立って観ろや~!!笑」

Yoshitsuguさん
「止むを得ずのイベント中止、残念でなりませんが、この状況下、配信ライブは僕らが今出来るファンのみんなと繋がれることのひとつ。
一方通行ではありますが、楽しみたいと思います!
早く会える日が来ることを願って」

     ◇

Eins:Vier PRESENTS "KATHARSIS 2020 ~単独無観客配信ライヴ ~”
7月21日(火)午後8時から生配信、3000円
https://loft-prj.zaiko.io/_item/327374

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