IT・科学
大雨避難、コロナ禍で一番大切なこと 対策集を作った本当の狙い
必ず向き合う避難所での想定外「最後は自分次第」
コロナ禍で大雨や台風が来たらどうすればいいのか?
大雨や台風が発生する出水期に入り、自然災害が発生する可能性が高いと考え、私は有志のメンバーと共にコロナ禍での大雨や台風への備えをまとめた対策集をつくり、6月30日に発表しました。
その4日後の4日未明に九州南部で大雨が発生。熊本県の球磨川のほぼ全域で氾濫(はんらん)し、各地で土砂崩れなどの大きな被害に見舞われました。
新型コロナウイルス感染症が拡大してから初めての大規模の自然災害であり、感染症対策をしながら避難や救助が行われるなど各地で難しい対応が迫られています。
「FUKKO DESIGN」では、これまで各地で復興支援や防災関連の取り組みをしてきました。一方、新型コロナウイルスのような感染症が蔓延(まんえん)する中での災害については、十分なものがないと感じていました。
そこで、元内閣防災官房審議官の佐々木晶二さんや、NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク<JVOAD>の明城徹也さんや、私が所属する広告会社のデザイナーやコピーライターとともに有志のチームを結成。
「気象研究所」の荒木健太郎さんなど様々な方々への取材などを重ね、コロナ禍で災害が起きた時の対策をまとめた『コロナ禍でもすぐできる!大雨&台風への備え2020年版』を発表しました。
コロナ禍で災害が起きたら、どうするのか。正直な話、「これだ!」という正解はありません。
土砂や浸水などの災害に巻き込まれることはすぐに命に直結します。すぐに避難すべきですが、一方で避難所に行ってウイルスに感染する可能性もあります。
なので、どちらが正解ということではなく、「どちらがより安全か」が大事になります。その時の状況を見て、自分で考え行動することが必要です。
そうは言っても、その見極めは専門家にとっても難しく、災害の経験のない人には想像できないところがあります。
対策集では、一般の人でもわかりやすいように、三つのフェーズに沿って説明しています。
コロナ禍の災害で大事な三つのフェーズ
コロナ禍の中、災害が発生する前から大事になるのは、避難所の選択と、そこでの過ごし方です。
災害が発生すると、指定避難所に多くの人が殺到し、“3密”(密閉・密集・密接)状態になる可能性があります。そこで、指定避難所だけでなく、ホテルや旅館、そして、親戚や知人の家などに避難することを内閣府なども推奨しています。
大事なのは、災害発生前から色々な避難場所をチェックして、最適な場所を決めておくことです。
見落としがちなのは、避難先や避難方法を決める条件は、人それぞれ違うということです。
住んでいる家が木造の一軒家かマンションかによって避難するタイミングは異なりますし、
家の周辺に山や川があるなど災害が起きるリスクによっても変わってきます。自分や家族の健康状況も注意が必要です。
特にコロナ禍においては高齢者、基礎疾患がある方などは重症化に細心の注意をして、慎重に場所を決める必要があります。
それ以外にも、ペットを連れて行きたいか、また集団での生活が精神的にも大丈夫か、など様々な条件があります。
災害が発生した後に、それらの条件に合う避難先を決めるのは困難です。そのため、自分はどのようにすべきかをよく考えて避難先、避難方法を考える必要があります。
熊本県の大雨では、今まさに、避難所に滞在している人もいるかと思います。身体や気持ちを落ち着かせることを優先した上で、感染症対策を考える必要があります。
まずは、お皿、コップ、箸など口にするもので、人と共有しやすいものは特にチェックが必要です。また、タオルやスマホなどにもウイルスが付着しやすくなります。
見過ごされがちなのが居住スペースです。避難所の運営は自治体によって違いがありますが、多くの人が出入りするため、ほこりがたくさんまってしまうのですが、その中に最近やウイルスがいる可能性があります。
すぐにできることは、スリッパや室内ばきを履くことです。そして、居住スペースに入る時は必ず脱いで、身の回りにウイルスがつかないように気をつけましょう。
また、避難所では感染症対策のため換気をしていることが多く、寒くなったり、暑くなったりします。寒暖に対応するため、多めに衣服を用意するとよいでしょう。
対策集には事前に準備できること、避難所で役立つ対策を盛り込んでいます。でも、一番大事なのは「様々な例外」を前提に行動することです。
自然災害の種類や、置かれている状況によって、取るべき対応は異なります。難しい判断が迫られることもありますが、だからこそ、事前に想定できることは頭に入れた上で、最後は自分でしっかり考えて最適な方法を考えなければいけません。
現在、熊本県などに被害をもたらしている大雨はもちろんのこと、今年も様々な自然災害が起きる可能性があります。
「想定外」に備えるため、対策集にある「想定内」を整理してもらえたらと思います。
【プロジェクトメンバー】
・プロジェクトリーダー:木村充慶(FUKKO DESIGN /TBWA HAKUHODO)
・アートディレクター:浜田智子(TBWA HAKUHODO)
・コピーライター:大嶋美月(TBWA HAKUHODO)
・専門家メンバー:佐々木晶二(元内閣防災官房審議官)
・専門家メンバー:明城徹也(NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク<JVOAD>事務局長)
・協力:荒木健太郎(雲研究者/気象庁気象研究所)
1/12枚