連載
#65 #父親のモヤモヤ
子育て通じ地域へ 先輩主夫が支援の輪、子ども会27年続ける父親も
そんな北さんは5年ほど前に有志で「パパフレンド協会」を立ち上げました。
父親の孤立を避け、地域での子育てを進めていくねらいです。
「男性の育休取得や積極的な関わりがうたわれていますが、フォローができていないと思いました。家庭内では充実しても、社会との関わりが薄れて孤立していく人もいます」。同時に、協会の理念には「違う年齢の子どもと触れあうことで子育ての幅を広げる」という点も掲げました。
これまで、父親同士で集まって話し合う「パパサークル」を開いたほか、地域の子どもたちを集めたキャンプや鬼ごっこなどを実施しています。
最近では、木を身近に感じてもらう「木育」にも携わっています。「子どもには、木のおもちゃで遊ぶことなどを通じて、まずは森林に関心を持ってもらいたいです」。そして、ゆくゆくは森林破壊などの環境問題に目を向けてほしいと願っています。「気候変動にも影響を与える問題。未来を生きる子どもにとって大切な問題だからこそ、考えるきっかけになればと活動しています」
「イクメンで行こう!」などの著書があり、2児の父親でもある東レ経営研究所特別研究員の渥美由喜さんは「『イクメン』から『イキメン』(域メン)へ」と提唱しています。
「子育てをきっかけに地域社会につながり、社会問題に目覚めて活動してほしい。自分の子どもだけでなく、地域の子どもたちにも関わることが真の『イクメン』ではないでしょうか」
自身も、27年前に地元の公園で「青空子ども会」を始めました。毎週末に、野球やサッカー、鬼ごっこなどの遊びをし、おやつも配る活動です。現在では活動を引き継ぐ形で、子どもたちを栃木県那須塩原市へ合宿旅行に連れて行っています。宿泊先は、渥美さんが自腹で買い上げた保養所です。
きっかけは、アルバイトの家庭教師時代の教え子が事件の加害者となってしまったことです。渥美さんがアルバイトを辞めた後に素行が荒れたそうです。ただ、当時の渥美さんは終電で帰宅し、始発で出社するような日々。心の余裕がなかったと言います。渥美さんの地元に住んでいたこともあり、なぜもっと関われなかったか、という思いが募りました。地域の大人として、子どもに関わっていくことにしました。
子ども会に遊びに来る子どもの中には、家庭に事情があったり、学校でいじめに遭ったりしている子もいたそうです。地域に関わることで、子どもの貧困や格差といった社会問題にも向き合うことになりました。
渥美さんは、次のようにも話します。「三面性を持つ、成熟した市民に憧れてきました。すなわち、職業人、家庭人、地域人という側面です」。そしてこう続けます。「私自身、職業人として、家庭人として、ストレスフルなことも多々ありましたが、地域で自分の居場所があったので、心のバランスを取り戻すことができました」
「地域の子どもに関わる変り者と見られてきましたが、子育てをしている母親たちがすでに通ってきた道でもあります。そこに父親も加わり、地域貢献を一人ひとりが地道に展開すれば、もっと暮らしやすい地域社会となるように思います」
コンサルタントの立場で多数の企業訪問をしてきた渥美さんは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅勤務が広がるなど、働き方が見直されていることは「好機だ」と指摘します。「惰性で流される時計を一度止めて、人生の優先順位を書き出し、時間の使い方を選択し直すためには、チャンスだと思います」。その上で、地域に根ざした暮らしに軸足を置く動きが進むのではないかとみています。
記事に関する感想をお寄せください。PTAに関するモヤモヤも募ります。「男性は少数派だった」「活動が負担だった」など、体験談を募集します。
いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
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