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連載

#65 #父親のモヤモヤ

子育て通じ地域へ 先輩主夫が支援の輪、子ども会27年続ける父親も

子どもたちと水遊びをする北佳弘さん
子どもたちと水遊びをする北佳弘さん

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

明日21日は「父の日」。子育てに深く関わった上で、地域に関心を持って足場を築いていく父親は少なくありません。3児の父親で専業主夫の男性は、子育ては「大変なこと8割、楽しいことが2割」。いまでは父親の孤立を避け、地域で子育てを進めるための活動をしています。当事者でもある専門家は「『イクメン』から『イキメン』(域メン)へ」と流れを後押ししています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で働き方が見直され、地域が「再発見」される可能性もあります。
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子育て「大変8割、楽しい2割」

広島市の北佳弘さん(40、@yoshihiro88kita)は専業主夫。中学生から保育園児まで3人の子どもの父親です。看護師の妻(40)が家計を担っています。

主夫になったのは、10年ほど前。妻が次男の育休明けで職場復帰するタイミングでした。それまでは家業を手伝っていました。「専業主婦家庭で育ちました。小さな子どもは家庭で育てるものだと思っていて、保育園に預ける選択肢は浮かびませんでした」。妻は夜勤もあり、働き方が不規則です。自宅で子どもの面倒をみるため、北さんが主夫になりました。実際に、長男と次男は3歳まで自宅で育てました。

「いまは、『3歳児神話』によっていません。家庭環境に応じてさまざまな選択肢があるという立場です。子どもにとっては、プロの保育士さんに関わってもらうメリットもあると思うようになりました」。主夫の経歴を生かした講演などの活動もあり、三男は1歳半から保育園に通っています。

主夫としての喜びは、子どもの成長に立ち会えたことだと言います。「寝返りができた、つかまり立ちをした。そんな瞬間を目の当たりにできました。大変なことが8割、楽しいことが2割。でも、その2割に心を動かされます」。長男は思春期を迎え、不機嫌な態度も目立ってきたそうです。「幼い頃の経験や子どもとの信頼関係があるから、距離を取ったり、踏み込んだりといった対応が取れています」

「キャラ弁」作りにもいそしみました。幼稚園に通う頃、一時的に長男の食が細くなりました。1歳の誕生日に「アンパンマン」の手作りランチプレートをたいらげたことを思い出し、お弁当にキャラ弁を持たせるようになったそうです。

「幼稚園でサナギからチョウチョに変身すると習えば、チョウチョを作り、テントウムシを見たと言えば挑戦しました」。北さんはそう話します。ただ、週3回のお弁当のうち、キャラ弁は週1回にしたそうです。「子ども同士の会話でお友だちの親御さんに伝わり、プレッシャーになることは避けたいと思いました」
子どもたちとキャラ弁をつくる北佳弘さん
子どもたちとキャラ弁をつくる北佳弘さん

孤立避け、地域での子育てを

そんな北さんは5年ほど前に有志で「パパフレンド協会」を立ち上げました。
 
父親の孤立を避け、地域での子育てを進めていくねらいです。

「男性の育休取得や積極的な関わりがうたわれていますが、フォローができていないと思いました。家庭内では充実しても、社会との関わりが薄れて孤立していく人もいます」。同時に、協会の理念には「違う年齢の子どもと触れあうことで子育ての幅を広げる」という点も掲げました。

これまで、父親同士で集まって話し合う「パパサークル」を開いたほか、地域の子どもたちを集めたキャンプや鬼ごっこなどを実施しています。

最近では、木を身近に感じてもらう「木育」にも携わっています。「子どもには、木のおもちゃで遊ぶことなどを通じて、まずは森林に関心を持ってもらいたいです」。そして、ゆくゆくは森林破壊などの環境問題に目を向けてほしいと願っています。「気候変動にも影響を与える問題。未来を生きる子どもにとって大切な問題だからこそ、考えるきっかけになればと活動しています」

父親の孤立を避け、地域での子育てを進めていく狙いで誕生した「パパフレンド協会」
父親の孤立を避け、地域での子育てを進めていく狙いで誕生した「パパフレンド協会」 出典:パパフレンド協会のTwitter

子ども会続けて27年

「イクメンで行こう!」などの著書があり、2児の父親でもある東レ経営研究所特別研究員の渥美由喜さんは「『イクメン』から『イキメン』(域メン)へ」と提唱しています。

「子育てをきっかけに地域社会につながり、社会問題に目覚めて活動してほしい。自分の子どもだけでなく、地域の子どもたちにも関わることが真の『イクメン』ではないでしょうか」

自身も、27年前に地元の公園で「青空子ども会」を始めました。毎週末に、野球やサッカー、鬼ごっこなどの遊びをし、おやつも配る活動です。現在では活動を引き継ぐ形で、子どもたちを栃木県那須塩原市へ合宿旅行に連れて行っています。宿泊先は、渥美さんが自腹で買い上げた保養所です。

きっかけは、アルバイトの家庭教師時代の教え子が事件の加害者となってしまったことです。渥美さんがアルバイトを辞めた後に素行が荒れたそうです。ただ、当時の渥美さんは終電で帰宅し、始発で出社するような日々。心の余裕がなかったと言います。渥美さんの地元に住んでいたこともあり、なぜもっと関われなかったか、という思いが募りました。地域の大人として、子どもに関わっていくことにしました。

子ども会に遊びに来る子どもの中には、家庭に事情があったり、学校でいじめに遭ったりしている子もいたそうです。地域に関わることで、子どもの貧困や格差といった社会問題にも向き合うことになりました。

東レ経営研究所特別研究員の渥美由喜さん
東レ経営研究所特別研究員の渥美由喜さん 出典: 朝日新聞

地域が居場所に

渥美さんは、次のようにも話します。「三面性を持つ、成熟した市民に憧れてきました。すなわち、職業人、家庭人、地域人という側面です」。そしてこう続けます。「私自身、職業人として、家庭人として、ストレスフルなことも多々ありましたが、地域で自分の居場所があったので、心のバランスを取り戻すことができました」

「地域の子どもに関わる変り者と見られてきましたが、子育てをしている母親たちがすでに通ってきた道でもあります。そこに父親も加わり、地域貢献を一人ひとりが地道に展開すれば、もっと暮らしやすい地域社会となるように思います」

コンサルタントの立場で多数の企業訪問をしてきた渥美さんは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅勤務が広がるなど、働き方が見直されていることは「好機だ」と指摘します。「惰性で流される時計を一度止めて、人生の優先順位を書き出し、時間の使い方を選択し直すためには、チャンスだと思います」。その上で、地域に根ざした暮らしに軸足を置く動きが進むのではないかとみています。

父親のリアルな声、お寄せください

記事に関する感想をお寄せください。PTAに関するモヤモヤも募ります。「男性は少数派だった」「活動が負担だった」など、体験談を募集します。

いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

 

この記事は朝日新聞とYahoo!ニュースによる連携企画記事です。共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。6月21日の「父の日」にあわせ、2本の記事を配信します。
 
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<#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会を開きます>
6月27日(土)10時より、父親を対象にしたオンラインオフ会を開きます。
テーマは「男性育休のリアル」です。日本ではまだまだ実績が少ない男性の育児休業。育休を取ってよかったことや想像と違ったこと、育休を取る前の上司・同僚とのコミュニケーションや復職後の話など、男性が育休を取りやすくするためにはどうしたらいいか、モヤモヤやアイデアを共有しませんか?

詳細はコチラをご覧ください。みなさんのご参加をお待ちしています。

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