連載
#63 #父親のモヤモヤ
「トイレの時間もゆっくりできない」在宅勤務と子育て、父親の本音
「#父親のモヤモヤ」オンラインオフ会で語り合いました。
父親たちが語り合ったのは、5月30日にオンラインで開かれたイベント「#父親のモヤモヤ・オンラインオフ会〜コロナ禍の子育て&在宅勤務&夫婦関係、どうしてる?〜」です。0〜10歳の子どもがいる30〜50代の父親13人が集まり、3、4人のグループに分かれて意見交換をしました。父親たちの一番の関心はコロナ禍の子育てです。
小学生の子どもがいる父親たちは、学校の課題が話の中心でした。
「学校から学習支援をしてほしいと言われたけど、手が回らずこの期間が過ぎた」
「学習プリントがかなり細かく渡された。なんとなく子どもが得意なことはわかっていたけど、細かいところまでは理解していなかった。把握できていれば勉強のサポートもしっかりできたのかも」
「うちの小学校はすごくゆるくて、オンラインもなく宿題も細かく出なかった。たまに他の学校の人と話をすると、その地域はそんなことやってるの!?あんなことやってるの!?と焦りが出てきて、大丈夫かなという気がする」
参加した父親の半数以上は在宅勤務を経験していました。仕事をしながら子どもの勉強をフォローするのは至難の業です。小2の娘がいる男性は、「2年生に上がったばかりで勉強の基礎があるわけではない。教えるのが難しい。(出社している)妻が帰ってきて、『なんでやってないの』と娘が怒られてしまう。私が弁護するんですけど、自分も怒られている感じです」と打ち明けました。
学習サポートは母親が担当しているという声も聞かれました。
「勉強は妻の役割。僕が勉強や宿題を手伝おうかと話をすると、そんなことしなくていいと言われる。あまりしゃしゃり出ない感じでうまくいっています」
「学校の勉強をしっかりやらせたいのが奥さんで、僕は聞かれたときに道しるべだけをする。教えると依存しちゃうので、『この漢字何?』と言われたらあそこに辞書があるよと促す。なるべく本人が自分でやるように促せないかなという感じですね」
未就学児の家庭でも、仕事と子育ての両立は頭を抱える問題です。親がずっと家にいる状況では、子どもたちが甘えたくなるのは自然なこと。子どもとの接し方も話題になりました。
「子どもに時間を割きたいけど、仕事もしなきゃでバランスが難しい。最初はイライラしたが、『ちょっと待ってて』というよりは、その場でギュッとしてこちょこちょしたら10分くらいは落ち着く。その繰り返しで乗り切っている」
自身は育休中で妻が在宅勤務という父親は、「最初はできる限り子どもを外に連れ出して遊んでいたが、ずっとやっているともたなくなる。時間が経つにつれてしょうがないと割り切り、テレビを見せていた時もある。妻はテレビの音声が流れていても仕事をしていたからすごいと思う」
一方、仕事を始める前に子どもたちと掃除をしているという3児の父親もいました。
「在宅ワークになって、部屋がめちゃくちゃきれいになりました。掃除を遊びにして、誰が一番早く片付けられるか『よーいスタート』みたいな。きょうだいで競い合い、楽しんでやってくれます」
昨年子どもが生まれたという父親は、会社で男性育休の例がなく、育休を取りたくても取れないプレッシャーを感じていました。しかし、在宅勤務で状況が一変。「育休を取れないと思っていたのに、思いがけず子どもといられる。ある意味ありがたいです。YouTubeで子育てスキルを見て、スキルアップするのを楽しんでいます」
仕事面では、みんななんとか時間のやりくりをしていました。
「仕事のパフォーマンスは7割くらいになる」
「仕事量は変わらないが、効率は下がる。労働時間が長くなる。体力が奪われ崩壊してしまう」
「実際日中は仕事ができず、夜している」
本来のパフォーマンスを発揮できないことは、会社にも理解してもらう必要があります。「これまでの飲み会では言わなかったが、Zoom飲み会で家庭の状況を言うようになった」「同じ子育て世代の人があまり会社にいない。わかってもらえないのも大変なので、出社日に状況を小出しにして社内に周知した」など、自らアピールすることで働きやすくした父親もいました。
オンラインだからこそ「会社に対して忖度していたことも、違います、こういう風にしたほうがいいと言うようになった」という声も上がりました。
妻との関係も悩みの一つ。気になるのは家事分担です。
「子どもに関してはその時々。家事はお互いが得意なものをやって、できるだけストレスをためないようにしています」
「妻が妊娠中ということもありますが、時間が大きな判断基準です。5分で済むようなことは妻がやり、作ったり片付けたりは僕がやっています」
お互いイライラしてけんかになりそうな時はどうしているのでしょうか?
「時間が経って気づけたことですが、うちのけんかを防ぐコミュニケーション術は『とことんけんかをする』でした」
一度受け止めるという意見もありました。
「いったん受け止めて、それでも受け止めきれなかったら文章にします。直接言うと口げんかになってしまうので、思うことがあればLINEやメールで伝えるようにしています」
ほぼ一日中家族と一緒の空間では、休まる時間がありません。唯一こもれる場所でも、ホッと一息とはいかないようです。これには共感の声も上がりました。
「今は1人の時間がない。トイレに入っているときが1人の時間だが、それも脅かされる」
「自分のトイレの時間もゆっくりできない。『パパ、トイレ〜』と言われると明け渡さないといけない」
子どもを寝かしつけてからが自分の時間という声もあり、ジョギングしたり、ビールを飲みながら映画や深夜番組を見たりしているそうです。
6月に入って分散登校が始まり、保育園も再開してきています。コロナ以前の生活に戻る期待がある一方、今後の生活について父親の一人はこう話しました。
「急激に仕事が入ってきて対応しきれるのかという不安とともに、娘と離れることで距離感がどうなるのかという不安もある。なるべく急激な変化をもたらさないようにしようという気持ちです。コロナが落ち着いたからここで切り替えて、とやるとバランスが崩れてしまう気がするので、いいところを続けてうまく変化させていく。今からの続きという風にやっていきたいと思います」
記事に関する感想をお寄せください。また、「育休」の反省や失敗談も募ります。「仕事ばかりだった」「パートナーと衝突した」といったモヤモヤや体験を募ります。育休を取得した父親の3人に1人は、1日の家事・育児時間が「2時間以下」――。育児相談アプリを運営する会社がこんなデータをまとめ、「とるだけ育休」と名付けました。「#父親のモヤモヤ」企画班では、あらためて「育休」に注目しています。家庭での育児負担について、みなさんはどう向き合っていますか?
いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
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