マンガ
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異国で雨宿りしたお店、気付くと不穏な空気に…想定外のオチを漫画に
トルコでの出会いに「優しさがあふれてる」

「ヤバイヤバイヤバイ! もしかして警察…!?」
2019年、トルコの黒海沿岸にあるトラブゾンという港町を訪れた五箇野人さん。しかし、突然の雨に見舞われてしまいます。「適当に商品物色しながらやむの待と!」と思い、飛び込んだのは地元の人が使う電器店でした。
「こんな、ど観光客が買い物を装うのムリある――」
「ヤバイヤバイヤバイ! もしかして警察…!?」
心臓の音が高鳴る中、大降りの雨に逡巡していると、すぐに誰かがお店にやってきました。「警察はやーー!!」と驚いたその時。
「Come on 雨宿りには紅茶がいい」
ツイートには9万件以上の「いいね」が集まり、「幸せな気持ちになった」「世界は優しさに溢れている」というコメントが寄せられています。この漫画のエピソードについて、五箇野人さんに伺いました。
「ジャパン」咄嗟にプラスにとらえられず
五箇野人さんが訪れたトルコのトラブゾンは、首都イスタンブールから離れた、観光客も多くないのんびりとした街。「郊外の街に行くのが好き」という五箇野人さんにとって、古い街並みが残り、ローカルなエリアや住宅地にも行きやすいこの街は魅力的でした。
そんな場所で起こった出来事。電器店に入ったときのことを「場違い感が尋常じゃなかったので、商品を見るフリをしていますが、全神経は背後の店長に向いてました」と振り返る五箇野人さん。
「電話の『ジャパン』が聞き取れた時は、全くプラスには考えられず、本当にすぐ外に出ることを考えました。人の思い込みってそういうものなのか、店長の一挙手一投足や物音すらマイナスに捉えていた状態でした」
「いつも現地の人に優しくしていただくと抱く感覚で、言葉にするのは難しいのですが、本当に芯からこみ上げてくる嬉しさ、愛しさ、幸福感みたいなものがごちゃごちゃになって湧いてきて。まぁ、要するに幸せと感謝です」
店主と過ごしたティータイムでは、五箇野人さんがトラブゾンに来た理由や見たものについて聞かれたそう。「あとトルコではサッカー人気が高く、トラブゾンにも地元チームがあり、自分もサッカーが好きなのでその話で盛り上がりました」
「体験の橋渡し」これからも漫画で
これまでの旅でも、路地裏や地元の人が集まる場所をよく訪れている五箇野人さん。いわゆる「観光地」ではない場所を旅する魅力について、「良くも悪くも生々しい人やモノや情報とめぐり合えること」といいます。
「観光客が多いエリアは外国人に慣れていてある種、観光客が喜ぶツボや対応のテンプレートを持ってますが、ローカルエリアはその事前の構えがないのでとてもリアルに感じます。より物珍しがっていただけて、カラんでいただける確率がグンと上がるのも魅力です」
直近の旅行は、ちょうど新型コロナウイルスの存在が知られ始めた頃だったそうで、「アジア人というだけで警戒されたことも正直あった」といいます。「それでも家に招いてくれたり、受け入れて良くしてくれる方がたくさんおられて、そうありたいと思います」
漫画にたくさんの反響が集まり「素直にうれしい」といい、これまでの漫画への反応も含めて感じていることがあるといいます。
「漫画はフィクションではないので、自分の漫画へというよりは、現地の人へのお言葉と感じています。今回ならこの電器屋の大将が皆さんをそういう気持ちにさせたということだと思います。自分は体験の橋渡しという感覚です」
「今後も自分が現地で感じた感情を少しでも追体験して頂けるように描いていきます」