連載
#61 #父親のモヤモヤ
娘は大切、でも…「嫌々、父親やっている」義親と同居、育児に苦しさ
【平成のモヤモヤを書籍化!】
結婚、仕事、単身、子育て、食などをテーマに、「昭和」の慣習・制度と新たな価値観の狭間を生きる、平成時代の家族の姿を追ったシリーズ「平成家族」が書籍になりました。橋田寿賀子さんの特別インタビューも収録。
男性は、専業主婦の妻、長女(5)に加え、妻の両親と同居しています。結婚後、しばらくして同居が始まりました。「肩身が狭いです。お風呂に入る時間も決められません」
ただ、子育ての面では、特に専業主婦の妻にとって、大きな助けとなっているのも事実です。義母は、家事でも、子どもの遊び相手としても大きな「戦力」です。「長女は義母によくなついています。同居をやめることには、妻も反対しています」。気持ちがふさぎがちな状況が続きます。
男性はWEB制作会社に勤めています。新型コロナウイルスの感染拡大によっていったんは在宅勤務となりましたが、通常は午後8時ごろに帰宅。子どもとのお風呂や寝かしつけ、朝の洗濯を担当しています。土日のいずれかは、朝から夕食まで子どもの面倒をみています。
「子育ては待ったなし。家事だって必要です。自分がやらなきゃいけないことは分かっています。同世代と話していても、家庭に目が向いている方だと感じています」
ただ、妻の「要望」に戸惑っています。
「休日、子どもと2人で遊びに出かけた際、外食することがあります。そうした時も、ファミレスで済ませたと分かると嫌な顔をされます。コロナの前からですが、人混みに行かせてはいけないと言われています」と男性は話します。「結局、子どもを連れ出す時は、すべてお伺いを立てることになります」。娘を連れて入ったカフェでビールを飲むことが、ささやかな抵抗です。
これに、子育てによる「制限」が息苦しさに追い打ちをかけたと男性は話します。
男性の趣味の一つは、月1回の海釣りでした。「1人で時間を忘れることができる。リフレッシュの時間でした」。それでも、子どもが生まれてからは「自粛」しています。月1回の飲み会、映画館での鑑賞など、平均すれば週1回程度の息抜きの時間がなくなったそうです。「妻も、自由な時間がないという点では同じです。仕方がないことだとは分かっています」。男性は、そう言いました。
「周囲に『イクメン』だと言われることもあります。でも、正直なところ、嫌々、父親をやっています」
子どもが公園の遊具で遊び、自転車に乗る姿を見守る。そんな娘との時間はかけがえのないものだとは理解しています。それでも、心の中で物足りなさも感じてしまいます。「『子どもと遊ぶのが楽しくない』という思いもあります。でも、心に秘めてきました。この気持ちは少数派だと思うからです」
友人には家庭をかえりみない人もいます。「いっそ、それくらい吹っ切れたらラクかもしれません。でも、それもまた自己嫌悪に陥ってしまうでしょうね」
男性は気持ちの晴れない日々を過ごしています。
記事に関する感想をお寄せください。また、「育休」の反省や失敗談も募ります。「仕事ばかりだった」「パートナーと衝突した」といったモヤモヤや体験を募ります。育休を取得した父親の3人に1人は、1日の家事・育児時間が「2時間以下」――。育児相談アプリを運営する会社がこんなデータをまとめ、「とるだけ育休」と名付けました。「#父親のモヤモヤ」企画班では、あらためて「育休」に注目しています。家庭での育児負担について、みなさんはどう向き合っていますか?
いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
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