連載
#42 #やさしい日本語
コロナで生まれるブラック職場 エジプト人が強いられた「弱み」報告
働く人は、まったく悪くありません
エジプト
【機械翻訳用】ふりがな なし
◆コロナで生まれるブラック職場 エジプト人が強いられた「弱み」報告
こんにちは。POSSEの岩橋誠です。今回は、最近外国人の方の相談で増えている「解雇(クビ)」について、話します。POSSEに、「日本が好き」というエジプト出身の女性から、相談が来ました。
【相談をした人】エジプト出身、20歳代、女性、モニカ(名前は仮名)
こんにちは。モニカといいます。 私は小学校4年生のときに、テレビでNARUTOを見て、日本が好きになりました。アラビア語の吹き替えで、日本のアニメをよく見ていました。エジプトの大学では、日本語や日本文化について勉強しました。 大学を卒業したあと、私は「日本語を使って仕事をしたい。もっと日本について知りたい」と思いました。日本で働くために、インターネットで仕事を探しました。そして、日本の関東地方にある会社で、通訳・翻訳の仕事を見つけました。スカイプで面接を受けて、採用されました。
今年の3月に日本に来ました。 私が就職した会社は、子供たちがドローンを体験するための教室でした。私は通訳や翻訳、教室の準備、ドローンのプログラミングなどをすることになりました。でも、コロナウイルスの影響で、4月から教室が休みになりました。社長は私に「パソコンで、自分の家で研修を受けてください」と言いました。 私は通訳やプログラミングの研修をすると思っていました。でも、社長は「モニカさんは社会人基礎力がない」と言いました。私は「社会人基礎力」の意味が分かりませんでした。 社長は、「自分の『強み』(良いところ)と、『弱み』(悪いところ)を知らないといけません」と言いました。そして、毎日、自分のいいところと悪いところを自分で考えて、社長に言うことになりました。でも、毎日新しい「強み」や「弱み」を書くことはできません。社長はいつも「ダメ」とか「違います。書き直してください」と言いました。とても辛かったです。
社長は、4月の終わりごろ、「モニカさんはこの仕事には向いていません。別の仕事を探した方が良いです」と言いました。私が社長に「クビですか?」と聞くと、社長は私に「クビではありません。でもモニカさんは、この仕事には合っていません」と言いました。その時、私は「社長は私に辞めてほしいのかな」と思いました。 そして、5月半ばに社長は私に、メールで「モニカさんの仕事は、もうありません。会社に来なくてもいいです」と言いました。ついに、クビになりました。
私は日本に来てまだ2カ月です。エジプトから日本に来るときに、貯金は全てなくなりました。このままだと、家賃が払えません。仕事がなくなったので、ビザも切れてしまいます。職場に戻って働きたいです。どうすればいいですか。
■クビは合理的な理由がないとできません
コロナウイルスの影響で、お客さんが減ったことで、働く人に辞めてもらおうとする会社がでています。仕事と関係のない研修をして「あなたはダメな人です」と言って、いじめることで苦しい気持ちにして、自分から「辞めます」と言うのを待っている会社があります。そういう会社が、日本にはたくさんあります。でも、働く人は、まったく悪くありません。
日本では、会社が働く人をクビ(解雇)にするときは、きちんとした理由(合理的な理由)がないといけません。これは法律で決まっています(労働契約法第16条)。例えば、会社は働く人を減らさないように努力をした、だけど働く人を減らさなければ会社を続けていけない、などです。 この会社はきちんとした理由がないのに、モニカさんをクビにしました。おかしいと思います。日本では、こうした会社を「ブラック企業」と呼びます。働く人を使い捨てにする会社です。
■会社に「おかしい」と言いましょう
「クビはおかしい。仕事を続けたい」と思ったら、すぐに誰かに相談してください。POSSEでも24時間メールで相談できます。お金はかかりません。 モニカさんは、メールでPOSSEに相談をしました。 POSSEはモニカさんに、労働組合(ユニオン)に入るように勧めました。そして、会社に「クビはおかしいです。仕事をさせなさい」と言うことを提案しました。労働組合は、働く人たちが集まって、働く環境を良くするための団体です。例えば、クビにするのをやめさせることを、会社に求めることができます。
労働組合は、法律で認められた団体です。外国人の方や、留学生、アルバイトの人、フリーランスの人も入ることができます。POSSEが一緒に活動している「総合サポートユニオン(sougou-u.jp)」には、中国人やアメリカ人やモンゴル人やフィリピン人など、いろいろな国の人が入って、働き方を良くするために活動しています。 モニカさんもいま、労働組合に入って、会社と交渉しています。
■労働組合でできること
労働組合は、会社と話し合いをすることができます。会社は必ず労働組合との話し合いをしなければいけません(労働組合法)。 もし、会社が話し合いをしないときや、話し合いにきちんと対応しないとき、そして労働組合の言うことを断るときに、労働組合は「団体行動」をすることができます。例えば、ストライキをすること、お店の前でチラシをまくこと、そしてインターネットで会社がしたひどいことについて記事を書くことができます。 こうして、会社に働き方を良くするための、プレッシャーをかけることもします。 労働組合が交渉して、コロナで仕事を休みにした分の給料を、すべて払った会社もあります。
■職場を変える労働組合の力
コロナウイルスが経済活動に大きな影響を与えていますが、そのしわ寄せは弱い立場の労働者にいきがちです。真っ先にシフトを減らされたり、解雇されたりするのは、外国人です。みなさんのまわりに、会社にいじめられたりして困っている「モニカさん」のような人はいませんか? 仕事と関係のないことで「自己否定」を繰り返し、鬱に追い込んで、仕事を辞めさせる「ブラック企業」があります。日本の労働法や、日本語にまだ慣れていない外国人は、それに対して「おかしい」と声を上げることができません。 「労働組合」に入って交渉する権利があることも知らない方が多く、また知っていても支援にたどり着くことができない場合がほとんどです。 そのような状況で、いま、「3密対策」や休業補償などを求めて、日本全国で労働組合が闘っています。
例えば、フィットネスクラブ・スポーツジム業界最大手であるコナミスポーツは、全国の施設を4月8日以降閉鎖させていましたが、その間、アルバイトのインストラクター対して休業補償を一切支払っていませんでした。 アルバイトとはいえ、フルタイムで働いているインストラクターが多く、生活に困窮していましたが、数人が労働組合「総合サポートユニオン」に加入して団体交渉や団体行動を行った結果、会社は休業補償を支払うことを約束しました。
他にも、コールセンターでの「3密」問題に対して、札幌(さっぽろ青年ユニオン)や東京で労働組合が会社に改善を求めて取り組みを行っています。 海外に目を向けてみると、アマゾンの倉庫労働者やマクドナルドの店員らが、会社にコロナ対策を求めてストライキを行っています。働く人の安全を守るための団体である労働組合が、労働者がウイルスに感染しないようすること、そして、生活に困らないよう給料の支払いを求めることが、全世界で行われています。 今こそ、労働組合を活用して、外国人労働者を含めて、日本で働く全ての人が生活しやすい環境を整えることが必要なのではないでしょうか。
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