連載
#31 ○○の世論
「ニュースはネットで読む人」に現れた特徴 安倍政権の狙い通りに
首相が重視する「層」とは?
政治や社会の出来事について情報を得るときに参考にするメディアによって、安倍政権への見方が分かれる―。朝日新聞が3月上旬から4月中旬に憲法や政治意識について尋ねる全国世論調査(郵送)を行ったところ、こうした違いが浮かび上がりました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
有権者は、日々のニュースをどこから得ているのでしょうか。朝日新聞の全国世論調査(郵送)で、次のように聞きました。
参考にするメディアを6つの選択肢から複数回答で選んでもらった結果、「テレビ」87%が1位でした。「新聞」と「インターネットのニュースサイト」がともに55%、「ラジオ」16%、「ツイッターやフェイスブックなどのSNS」14%、「雑誌」8%と続きました。
このうち、インターネットのニュースサイトやSNSだけを参考にしている人(全体の7%。以下「ネット限定層」)と、新聞やテレビだけを参考にしている人(全体の31%。以下「新聞・テレビ限定層」)に注目しました。二つの層が回答者に占める割合に大きな差があるので単純な比較はできないものの、安倍政権に対する評価が異なる結果になっていました。
まず、内閣支持率を比べてみましょう。
内閣支持率は全体42%に対して、「ネット限定層」は51%と全体より高めでしたが、「新聞・テレビ限定層」は42%と全体と同じでした。一方、内閣不支持率は全体48%に対して、「ネット限定層」は42%で全体より低め。「新聞・テレビ限定層」は50%でした。
自民党総裁でもある安倍晋三首相の総裁任期は2021年9月までです。現在3期目の安倍首相に4期目も続けてもらうのかどうか。調査では、次のように尋ねました。
さらに、安倍首相の「次の首相」は安倍政権の路線を引き継ぐほうがよいかを聞きました。
全体と「新聞・テレビ限定層」に安倍首相4選や安倍政権の路線継承への拒否感が広がるなか、「ネット限定層」は安倍首相4選に「賛成」が全体の26%より多い41%、安倍政権の路線を「引き継ぐほうがよい」51%が「引き継がないほうがよい」43%を上回りました。
第2次安倍政権下の最近の傾向として、内閣支持率は若年層で比較的高い数字が出ています。こうした若年層が「ネット限定層」の大半を占めることも、内閣支持率の高さをはじめ、安倍政権への好意的な姿勢に影響しているとみられます。
先般、定めました基準に基づいて感染状況、そして医療提供体制などについて専門家の皆様にご評価をいただいた結果、関西の大阪府、京都府そして兵庫県について、緊急事態宣言を解除することといたしました。 pic.twitter.com/yfnecIcN6j
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) May 21, 2020
では、安倍晋三首相が意欲を示している憲法改正についてはどうでしょうか。
憲法を「変える必要がある」は「ネット限定層」57%が全体43%を上回り、「新聞・テレビ限定層」では37%でした。
さらに、安倍政権下での改憲についても「ネット限定層」の57%が「賛成」と答えており、全体よりも肯定的です。一方、「新聞・テレビ限定層」の「賛成」は全体より低い26%でした。
一連の結果からは、安倍政権に対して「ネット限定層」は好意的なのに、「新聞・テレビ限定層」は厳しめと言えそうです。
こうした違いの背景には、政権によるメディア戦略が影響している可能性もあります。
首相は2019年の参院選前、自身のツイッターや首相官邸のインスタグラムに芸能人との記念写真を次々とアップ。アベノミクスの経済効果や雇用環境の好転といった政権の看板が響きやすい若年世代に向けた発信に力を入れていました。
その狙いを、政府関係者は「首相は新聞を読まない層を重視している。SNSで自分でつかみ取った情報は『真実だ』と信じる傾向にある」と解説しています。
首相の盟友である麻生太郎・副総理兼財務相もかつて、10~30代について「一番新聞を読まない世代だ。新聞読まない人は、全部自民党なんだ」と持論を展開していました。
今回の結果を見る限り、政権の狙いはいまのところ功を奏しているのかもしれません。
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