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青森の無人駅が「異世界」の入り口に…壁びっしりの手描きアート

地元の農家からは「畑の女子会はここでやる」という声も

弘南鉄道の田舎館駅(青森県)に描かれたアート作品
弘南鉄道の田舎館駅(青森県)に描かれたアート作品 出典: GOMAさん提供

目次

天井から見守る大きな瞳、そこから伸びる「千手観音」のようなたくさんの手……。1時間に1~2本しか電車が来ない、古い無人駅の壁や天井にびっしりに描かれたアート作品が話題です。下書きなしで9日間描き込まれた圧巻の作品に、「電車の待ち時間がどうでもよくなりそう」と反響が集まっています。作者に取材しました。

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外は古い駅舎なのに…

話題となっているのは、弘南鉄道の田舎館駅(青森県南津軽郡田舎館村)の駅舎です。青森県の弘前駅と黒石駅をつなぐ弘南線の一駅で、隣駅は毎年稲で表現する作品で有名な「田んぼアート」駅(※今年の「田んぼアート」は中止)。弘南鉄道の時刻表によると、田舎館駅は1時間に1~2本しか電車が来ない無人駅です。
田舎館駅の外観
田舎館駅の外観 出典:GOMAさん提供
外観は築70年の古い駅舎なのですが、内部には天井や壁、イスなどに絵がびっしり。細かなタッチで建物や植物、モンスターなどが描かれています。この「ギャップ」が凄いと、ツイッターでは写真が拡散されています。
天井や壁、イスにもびっしり描かれた絵
天井や壁、イスにもびっしり描かれた絵 出典:GOMAさん提供
「天井にある大きな目玉は、駅を利用する地元の子どもたちや農家の方たちを見守るようにと描きました」

そう話すのは青森県平川市を拠点に活動するアーティストのGOMAさん(@gomachan1026)。1~2年ほど前から弘南鉄道と「駅をアートできないか」という案をあたためてきたといいます。
アーティストのGOMAさん
アーティストのGOMAさん 出典:GOMAさん提供

GOMAさんの多忙により実現できていなかったものの、新型コロナウイルスの感染拡大によってGOMAさんが参加する予定だったイベントが中止。これを機に、2週間程度で描き上げられる大きさの、田舎館駅での作品制作を決めました。駐車場もあることから「今後観光地としても人が集まりやすい」という狙いもありました。

リンゴ、津軽富士…青森の魅力描き込んだ

アトリエからも近い駅とは言うものの、車社会の青森。GOMAさんは今回の制作で初めて田舎館駅を訪れたといいます。

「最初はもうすごいな、と。清掃がされていない訳ではないのですが、天井が高く手が回っていなかったようで、クモの巣が何層も重なっている状態でした。壁が崩れている箇所もあって、清掃に1日かかりました」
作業前の駅舎の様子
作業前の駅舎の様子 出典:GOMAさん提供
そこから1日かけて壁や天井に白いペンキを塗り、油性ペンで下書きをしない即興アートを描くこと9日間。5月15日に作品が完成しました。

天井の大きな瞳を中心に広がる「千手観音」の手は、中に入った人たちを優しく包み込むように。怪獣やモンスターのようなモチーフがあちこちに隠れ、子どもたちに発見をもたらしてくれるように。「見る度に新しい発見があるといいな」とGOMAさんは語ります。
描き込みの多さに驚くばかり
描き込みの多さに驚くばかり 出典:GOMAさん提供
GOMAさんは、青森県弘前市出身。一度は故郷を出たものの、「4年前、青森県を盛り上げたいと思い、戻ってきた」といいます。以来、青森に拠点を置き、世界に作品を発信してきました。

今回の作品の中にも、名産のリンゴや「津軽富士」と呼ばれる名山・岩木山などの青森を代表するモチーフや、城のような外観で知られる地元の田舎館村役場などが盛り込まれています。
田舎館村役場の奥には津軽富士も
田舎館村役場の奥には津軽富士も 出典:GOMAさん提供

あえてシンプルなタイトルにした理由

ツイッターで作品が話題になったことについて、GOMAさんは「しばらく気付かず、フォロワーが増えていることに驚いた」と振り返ります。「新型コロナウイルスの影響で旅行は厳しい状況ではありますが、新しい観光スポットとして地元を知ってもらえる良い機会になりました」と話します。

作品名は「ART STATION」。何かのテーマを冠することも考えたそうですが、「あまり意図として出さない方が、子どもたちの自由な発想が膨らむかも」と、シンプルな名前にしたといいます。「地元の子どもたちが勝手に名前をつけて呼び始めたら楽しいですね」とGOMAさん。
マヨネーズも隠れている
マヨネーズも隠れている 出典:GOMAさん提供
過去には放火されたり、落書きが横行していたりということもあった田舎館駅。薄暗い無人駅に、地元では「怖い駅」というイメージもあったといいます。今回、アート作品として生まれ変わったことで、地元の人から「美術館みたいで入りやすくなった」と声をかけられたそうです。

「近所の農家さんからは、『畑の女子会はここでやる』とも言ってもらえました」とGOMAさんはうれしそうに笑います。

田舎館駅の写真には「行きたい」という投稿も集まっています。新型コロナウイルスの感染拡大が収束した頃には、地元の方だけではなく、県外からも人が訪れる憩いの無人駅になっているかもしれません。

<GOMA>
 青森県弘前市出身、平川市を拠点に活動するアーティスト。ADHD、ディスレクシア(読字障害)を持つ。独特の感性で作品を描き、JAPAN EXPO PARIS 2015出演、APPLE DESIGN AWORDにて準グランプリ、審査員特別賞受賞。

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