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青森の無人駅が「異世界」の入り口に…壁びっしりの手描きアート
地元の農家からは「畑の女子会はここでやる」という声も

天井から見守る大きな瞳、そこから伸びる「千手観音」のようなたくさんの手……。1時間に1~2本しか電車が来ない、古い無人駅の壁や天井にびっしりに描かれたアート作品が話題です。下書きなしで9日間描き込まれた圧巻の作品に、「電車の待ち時間がどうでもよくなりそう」と反響が集まっています。作者に取材しました。
外は古い駅舎なのに…


そう話すのは青森県平川市を拠点に活動するアーティストのGOMAさん(@gomachan1026)。1~2年ほど前から弘南鉄道と「駅をアートできないか」という案をあたためてきたといいます。

GOMAさんの多忙により実現できていなかったものの、新型コロナウイルスの感染拡大によってGOMAさんが参加する予定だったイベントが中止。これを機に、2週間程度で描き上げられる大きさの、田舎館駅での作品制作を決めました。駐車場もあることから「今後観光地としても人が集まりやすい」という狙いもありました。
リンゴ、津軽富士…青森の魅力描き込んだ
「最初はもうすごいな、と。清掃がされていない訳ではないのですが、天井が高く手が回っていなかったようで、クモの巣が何層も重なっている状態でした。壁が崩れている箇所もあって、清掃に1日かかりました」

天井の大きな瞳を中心に広がる「千手観音」の手は、中に入った人たちを優しく包み込むように。怪獣やモンスターのようなモチーフがあちこちに隠れ、子どもたちに発見をもたらしてくれるように。「見る度に新しい発見があるといいな」とGOMAさんは語ります。

今回の作品の中にも、名産のリンゴや「津軽富士」と呼ばれる名山・岩木山などの青森を代表するモチーフや、城のような外観で知られる地元の田舎館村役場などが盛り込まれています。

あえてシンプルなタイトルにした理由
作品名は「ART STATION」。何かのテーマを冠することも考えたそうですが、「あまり意図として出さない方が、子どもたちの自由な発想が膨らむかも」と、シンプルな名前にしたといいます。「地元の子どもたちが勝手に名前をつけて呼び始めたら楽しいですね」とGOMAさん。

「近所の農家さんからは、『畑の女子会はここでやる』とも言ってもらえました」とGOMAさんはうれしそうに笑います。
田舎館駅の写真には「行きたい」という投稿も集まっています。新型コロナウイルスの感染拡大が収束した頃には、地元の方だけではなく、県外からも人が訪れる憩いの無人駅になっているかもしれません。
例の駅に行った気分になれる動画置いておきますね👍 pic.twitter.com/QK3xZbxwjF
— GOMA【公式】 (@gomachan1026) May 17, 2020
<GOMA>
青森県弘前市出身、平川市を拠点に活動するアーティスト。ADHD、ディスレクシア(読字障害)を持つ。独特の感性で作品を描き、JAPAN EXPO PARIS 2015出演、APPLE DESIGN AWORDにて準グランプリ、審査員特別賞受賞。