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コロナで余ったジュース「無料配布」のジレンマ お金いらないのに…
新型コロナウイルスによって大打撃をうけている観光や外食、イベント業界を個人でも支援しようとする動きがある中、「一方通行の善意」になるジレンマも生まれている。売れ残ったジュースを無料配布したところ届いた「原価で買い取らせてください」という申し出。ありがたい話にもかかわらず、店主は、断らざるを得なかった。支援のすれ違いをなくすにはどうすればいいか? 「無料配布しかできない」理由から考える。(FUKKO DESIGN 木村充慶)
筆者の父親は都内で自動販売機のべンディングサービスの会社を営んでいる。ベンディングサービスとは自販機を様々な場所に設置し、ジュースなどを補充し販売するという仕事だ。
自販機での販売も、新型コロナウイルスによって深刻な影響を受けている。
父親の会社はスポーツ施設や、公共施設、温泉施設などを中心に自販機を設置していたのだが、2月末以降ほとんどが休館し、売り上げは前年の9割減となった。
そんな中、3月に予定していたイベントなどの中止も相まって、販売する予定だった商品が倉庫に大量に余ってしまった。
この先も販売する当てがないので、道ゆく人に無料で配ろうということになった。
「大変な状況の中で仕事をされている人に少しでも喜んでもらえれば」
父親はそう考え、会社の前にジュースやフルーツ牛乳などの飲料水を置いて、自由に取ってもらうことにした。
実は父親が自販機のペンディングサービス(簡単に言うと自販機の商品補充)の会社をやっています。ただ、イベントが中止したり、施設が休館したりして、大量に在庫が余っています。
— 木村充慶 FUKKO DESIGN 「スケット」運営中 (@mymor) April 30, 2020
もうどうしようもないのと、少しでも元気にという父の思いで、タダで配ることにしました。 pic.twitter.com/wrCypjjx09
大きな手書きの貼り紙に気がつき、道ゆく人たちがジュースなどを持っていってくれた。800本はあったが、2時間もかからずに終わった。
商品を道路前にそのまま置いていたこと、手書きの貼り紙などもあってか、多くの人がその様子を写真に撮っていた。
私もこの様子をSNSで投稿したら、多くの人がいいね!やRTをし、応援のメッセージも多数いただいた。応援のメッセージ以外にも、「無料ではなく買いたい」というメッセージをいただいた。
とてもありがたい申し出だ。
さらに、「原価程度で買いますよ」、「半額でどうでしょうか」という値引きの相談や、「配送して欲しい」という要望も多かった。
賞味期限間近で、捨てようと思ったものであり、それでももちろんうれしい。
しかし、個別に対応しても、それだけでは正直にいうと会社としての売り上げの足しにはなりづらい。
70歳を超えている父親にとって、数人のために異なる対応をするのがおっくうになっているし、まして、40年以上その仕事をしてきたプロとして、賞味期限が近いものを安く売ることはあまり気が進まなかった。
「それなら、無料にしてみんなに喜んでもらいたい」
ありがたい申し出ではあったが、父親はほとんどのお話をお断りした。
現在、筆者は行政や会社などの垣根をこえた支援の形を考える一般社団法人「FUKKO DESIGN」を立ち上げ、被災地の復興支援に携わってきた。現地で感じるのが、父親が経験したような「助けてほしい」被災者と、「助けたい」支援者の気持ちのかいりだった。
SNSの普及もあり、困った人の声が届きやすくなっており、支援をしたいという人も増えている気がする。それ自体はとても良いことだが、助けたい人の気持ちが先行してしまい、助けてほしい人の気持ちにうまくはまらないことが多い。
それは、実態を正確に把握していないこともあれば、把握したとしても時間が経ち、支援してほしい内容が変わってしまうこともある。
助けたいという気持ち自体は素晴らしいことであり、それが集まると、大きな力になる。今までは、一部の企業や団体、ボランティアが中心だったが、それ以上の効果が期待できる。
だからこそ、助けたい人と助けられたい人の、適切かつリアルタイムでのマッチングがとても重要だと思う。
新型コロナウイルスを巡っては、政府による緊急事態宣言も延長されたことで、これから経済的な支援がますます必要になってくる。政府の支援では行き届かない場面において、多くの企業や団体、そして個人の支援が大切になってくる。
父親の「ジュース無料配布」は開始から2時間ですべてを渡すことができた。そこでは、個人でもSNSを使うことで小さいながら一つのムーブメントを生み出せ、助けたい人と助けてほしい人が持っていた潜在的なニーズを浮かび上がらせることができた。同時に、助けたい人と助けてほしい人のすれ違いの解決は、自然発生的な取り組みにおいて限界があることも実感した。
「FUKKOツイート旅」は、助けてほしい人への入念なリサーチがあったことで、「ジュース無料配布」の時に起きたすれ違いは生まれにくかった。その一方で、「旅」という枠をあらかじめ決めたことで、それ以外の支援策を考える余地がなくなったのかもしれないという思いも残った。
サイトを使ったり、ハッシュタグを使ったりすることで、「助けてほしい人」も「助けたい人」も負荷なく、気軽に参加できるようにする環境は整いつつある。その上で求められているのは、両者の細やかなニーズを可視化し、それぞれに対応する受け皿を用意することなのかもしれない。
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