話題
大学スポーツ揺さぶるコロナ、学生アスリートが最も恐れていること
「バイトできず部活も……」1400人アンケートから見えた実情
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「バイトできず部活も……」1400人アンケートから見えた実情
コロナウイルス感染拡大防止のために、全国的に休校が続く中、大学生にも影響が出ています。一般社団法人大学スポーツコンソーシアムKANSAIが学生1400人に聞いたアンケートによると、感染のリスク、アルバイトができない経済的な心配の声が上がりました。また、学生アスリートにとっては試合がないことでプロや実業団に入るための成績が残せないことへの不安なども浮かび上がりました。
アンケートは、KCAA副会長の藤本淳也教授(大阪体育大・スポーツマーケティング専門)が発案しました。4月1日~7日、オンライン調査で実施し、有効回答数は1406人、うち84.9%が近畿地方在住で、847人が部活動またはサークルに所属していました。637人が運動部に所属していました。
藤本教授は調査の狙いについて「スポーツ活動は、学生生活が成り立った上でできることです。学生にどのような不安があるか、学生生活にどのような経済的な影響があるか、データを取れば、学生の安全や安心を確保するために大学が立てる対策に向け、適切な判断材料になるのでは」と話します。
アンケートで聞いたのは計38問。主な項目は感染に関して、理解度や予防に関する意識、学生生活における不安、家族への経済的影響、アルバイトへの影響、部活・サークル活動への影響です。
アンケートからは、ウイルスの感染防止のための対策が「しっかりしている」とは言えない現実が見えてきました。ウイルスに関する情報は68.3%が「よく見聞き」していました。ただ、感染防止のための対策について9割以上の学生が取り組んでいましたが「しっかり取り組んでいる」のは24.3%にとどまりました。
日常、学生生活への不安はほとんどの学生が感じており、93.5%にのぼりました。
自由記述欄には、切実な声が多く書き込まれました。
学生が所属している部やサークルの活動が全面的に停止されているのは55.5%にのぼりました。
中でも、多くの学生が不安に感じているのは、部員に感染者が出ること、練習が自粛や制限されること、大会が中止されること、自分やチームの力が落ちることなどでした。
アンケート 調査にも参加したKCAA理事の松永敬子教授(龍谷大学)によると、課外活動停止中のスポーツのクラブに在籍する学生たちは、自宅でのトレーニングやランニングなどをしているといいます。
龍谷大学では、自宅にいる学生と大学をつなぐ支援を進めているそうです。
一部のクラブでは、トレーナーが、オンラインでライブ配信するトレーニングを導入しており、松永教授が部長を務めている女子バレー部などでも始めています。
松永教授は「短時間でもオンラインで繫がることは、単に体力・筋力のトレーニングに役立つだけでなく、一人で不安な学生アスリートの気持ちも繋いでいるように感じています」と話します。
松永教授は「課外活動の再開に備えたトレーニングや、オンラインミーティングなどは学生・指導者・トレーナーと連携しながら継続していきます。
それとともに、課外活動ができない今だからこそ、学生には自主性や自律性を身につけて、成長して欲しいです」と話しています。
部活やサークルの活動費をアルバイトでまかなっている学生は60%もいました。
ウイルスの影響で、アルバイトを休むよう雇用主から言われるなど、アルバイトに行けなくなったことで、部活に経済的な影響が出ている学生も多くいました。
部活やサークルをこのまま続けられるか、経済的な不安を感じている学生も全体の約60%にのぼりました。
アンケートの発案者の藤本教授は、大阪体育大学のアルティメット部の部長をしています。普段の部活動は1週間に4回だといいます。その理由は部活動のない日アルバイトが出来るようにという配慮からでした。
活動費や遠征費を自ら稼ぐために多くの学生がアルバイトをする必要があるからです。しかし、今はアルバイトに行くことが出来ず、これから活動できるか不安な学生も多いといいます。
筆者は今まで大学スポーツを取材してきましたが、春や秋にある様々な競技のリーグ戦は大切なアピール機会です。
たとえば、硬式野球の関西学生や関西六大学連盟のリーグ戦では、プロ野球や社会人のスカウトの姿をよく見かけました。スカウトたちは、バックネット裏で投手の球速を計測するスピードガンを片手に選手の見極めをしていました。
大学アスリートにかぎらず、スポーツ選手にとって1日でも練習を休むことは競技に大きな影響を与えます。今は練習場に行けず、自宅で苦しい思いをしている学生もたくさんいるでしょう。
現在、最優先するべきは感染拡大の防止です。同時に、アンケートで浮かび上がったのは、大学でスポーツが続けられるかわからないまま、将来への不安を抱える若者たちの状況です。
すぐには再開できないかもしれません。しかし、日本のスポーツ界を担うであろう大学生たちの置かれた状況を知ってもらい、何らかの対策がとられてほしいと感じました。
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