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ネットの話題

ドラえもん感動の新聞広告の舞台裏「未来なんてどんどん変わるから」

「だいじょうぶ。未来は元気だよ。」メッセージが生まれた理由

朝日新聞に掲載され、SNSでも話題となった「ドラえもんからのメッセージ」の一部
朝日新聞に掲載され、SNSでも話題となった「ドラえもんからのメッセージ」の一部

目次

前例のない「外出自粛のゴールデンウィーク」の始まりに、朝日新聞朝刊に掲載された「ドラえもんからのメッセージ」。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための行動を取り、この事態に対応するすべての人たちに向けた「だいじょうぶ。未来は元気だよ。」という言葉に、SNSでは「感動した」などのたくさんの反響がありました。9日には、子どもたちを支えるお母さんへ、感謝の気持ちを伝える「母の日特別動画」も公開されました。今年、コミック掲載開始50周年という記念すべき年でもある「ドラえもん」。これらのメッセージが生まれた舞台裏を、藤子・F・不二雄プロ(藤子プロ)に聞きました。
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「だいじょうぶ。未来は元気だよ。」

「ドラえもんからのメッセージ」は4月29日、朝日新聞朝刊に掲載されました。マスクをつけて、こちらを見つめるドラえもんとともに、次のようなメッセージが綴られています。

4月29日の朝日新聞朝刊に掲載された「ドラえもんからのメッセージ」
4月29日の朝日新聞朝刊に掲載された「ドラえもんからのメッセージ」 出典:ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト
きみがおうちにいてくれたから。
ちゃんと手を洗ってくれたから。
家族を想ってくれたから。
ともだちと支え合ってくれたから。
やさしい気持ちでいてくれたから。
病気の人を助けてくれたから。
みんなのために働いてくれたから。
未来をあきらめないでいてくれたから。

だいじょうぶ。未来は元気だよ。
ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト
22世紀の未来からきたドラえもんだからこそ伝えられるメッセージは、紙面は新聞読者だけにとどまらず、SNSでも拡散されました。英ブランドウォッチ社のソーシャルメディア分析システムによると、この日つぶやかれた「ドラえもん」を含むツイート数は11万件以上。その言葉は、当たり前だったはずの日常を、新型コロナウイルスによって失った私たちの心にしみいりました。ツイッターでは「涙が出た」「安心した」などの声が上がっています。

「ドラえもんが力になれることはないのだろうか」

この全面広告は、藤子プロと藤子・F・不二雄ミュージアム(神奈川県川崎市)が開始した「ドラえもん『STAY HOME』プロジェクト」の一環です。プロジェクトではドラえもん公式サイト「ドラえもんチャンネル」(https://dora-world.com/)で、オリジナル壁紙を配布し、漫画も無料公開。また、営業自粛によって、飲食店でのテイクアウトや宅配の需要が増えていることに鑑み、飲食店さん、配達員さんへの感謝の気持ちが込められたオリジナル応援ポスターも配布しています。

50周年を迎えるの中でどんな思いで発信し、このメッセージが生まれたのか、藤子プロの専務取締役・赤津一彦さんにインタビューしました。
「ドラえもんチャンネル」で配布されているオリジナルポスター
「ドラえもんチャンネル」で配布されているオリジナルポスター 出典:ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト
――「STAY HOME」プロジェクトを立ち上げられた背景について教えてください。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、日常生活は大きく様変わりしました。毎日多くの方が亡くなり、世界中の方が病に苦しんでいるという、悲しいニュースが続いています。一斉休校によって子どもたちは学校に通えず、世の中にもストレスや不安を抱えている人が多いと思います。

こういった状況で、ドラえもんが力になれることはないのだろうかと考え、この「STAY HOME」プロジェクトを始めました。4月下旬から漫画の無料公開や壁紙の配布など、できることはすぐ行ってきました。
「ドラえもんからのメッセージ」が掲載された朝日新聞朝刊
「ドラえもんからのメッセージ」が掲載された朝日新聞朝刊
――4月29日の「ドラえもんからのメッセージ」を発信されたのはどうしてでしょうか。

新型コロナウイルスによる影響は「ドラえもん」に関わるところでも、3月に公開を予定していた映画が延期となり(*)、藤子・F・不二雄ミュージアムも臨時休館しています。子どもたちに直接メッセージを伝える手段が少なくなっている中で、できることをスピーディーに届けようと、朝日新聞に掲載することにしました。

29日の掲載を目指したのは、ゴールデンウィークに外出できないことで、つらい思いをする子どもたちがいるだろうという思いからです。

また、今回のメッセージの準備を始めた4月中旬は、まさに感染が拡大していった時期です。少しでも感染拡大を抑えることにつなげることができれば、また今不安に感じていたり、困ったりしている人たちの心を和らげることができればという思いをメッセージに込めました。

(*)公開を延期していた『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の新公開日は2020年8月7日(金)に決定。8月7日(金)に予定していた『STAND BY ME ドラえもん 2』の公開は延期となった。

「未来を信じる」50年間届けてきたメッセージ

――そのドラえもんのメッセージに多くの方が勇気づけられています。メッセージの内容は、どのように考えられたのでしょうか。

作中に、ドラえもんの「未来なんてちょっとしたはずみでどんどん変わるから」という言葉があります。今ひとりひとりがマスクをすることで、また外出を控えることで、いつか日常を取り戻し、明るい未来につながっているのだと伝えたいと思いました。

未来を信じるというとても大切な気持ちは、不安が心の中を支配していると忘れてしまいがちです。「未来を信じよう」というメッセージを、私たちはずっと伝えていきたいと思っており、ドラえもんとしても50年間届けてきたと思っています。
「ドラえもんチャンネル」で配布されている壁紙
「ドラえもんチャンネル」で配布されている壁紙 出典:ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト
また、ドラえもんがマスクをしているというビジュアルについても、ドラえもんが今みなさんと同じ時代に生きて、同じように「STAY HOME」を実践している同志だということを表現しています。
――SNSでは「ドラえもんはどこにマスクをつけているのか」というコメントもありました。

メッセージは英語や中国語など、さまざまな言語で発信させていただいたのですが、中国でもそういったコメントが多かったようです。みなさんに気にしていただいたり、前向きな気持ちが少し広がったりしていたのであれば、よかったなと感じております。
――メッセージには「涙が出た」「ドラえもんに言ってもらえると安心した」という声も寄せられ、多くの方に広がっています。話題になっていることについてはいかがでしょうか。

とてもうれしく思っています。みなさんの中であたたかい気持ちや支え合う気持ち、もう少し我慢しよう、未来を信じようという気持ち、そして藤子・F・不二雄が一番大切にしている「他人を深く思いやる」という気持ちの輪が広がったのだとしたら、我々としてはうれしいです。

こういった状況の中でメッセージを発信するのは、やはり勇気がいるもので、私たちの中でもすごく話し合いました。今どんな人が困っているのか、どんなメッセージが伝えられるのか、という想像力を働かせ、ひとりでも多くの人を励まし、心の支えになれればと思い、慎重に制作していきました。
「ドラえもんチャンネル」で配布されているオリジナルポスター
「ドラえもんチャンネル」で配布されているオリジナルポスター 出典:ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト

こどもの日、母の日にも心あたたまるメッセージを発信

――5月5日のこどもの日には子どもに向けて「のび太になろう」というメッセージを発信し、9日には母の日に合わせてお母さんに感謝を伝える特別動画も公開しています。

こどもの日のメッセージにある、「いっしょうけんめいのんびりしよう」という言葉も、作中のセリフのひとつです。ゴールデンウィークも後半に入り、緊急事態宣言も延長となった中、外出したくて仕方がない子どもたちにメッセージを伝えられればと思いました。
5月5日の朝日新聞朝刊に掲載された「ドラえもんとのび太からのメッセージ」
5月5日の朝日新聞朝刊に掲載された「ドラえもんとのび太からのメッセージ」
出典:ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト
また「母の日特別動画」については、外出自粛によって、家族の絆が深まる一面もありますが、お父さんやお母さんたちの悩みも聞こえてきます。家事をする時間や食事を作る回数が増え、仕事も抱えられている中で、体力的にも精神的にも疲れてしまい、つい子どもにも怒りやすくなってしまう方もいるようです。

子どもたちを支えるご家族のみなさんに向けたメッセージとして、母の日に、感謝の気持ちを伝えられたらと動画を制作しました。
「母の日特別動画」のワンシーン
「母の日特別動画」のワンシーン 出典:ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト
――こういった状況で、子どもたちにはどんなことを感じてもらいたいですか。

のび太くんは勉強も運動も苦手で、暇さえあれば怠けることを考えているような男の子です。でも、本当は人の幸せを願って、人の不幸を悲しむことができる心を持っています。

子どもたちにも、のび太くんのような人を思いやる心を持ってもらえたらと思います。ひとりひとりができることはわずかかもしれませんが、例えば「今どんなお手伝いをしたらいいかな」と、身近なことから始めてもらいたいです。
「母の日特別動画」のワンシーン
「母の日特別動画」のワンシーン 出典:ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト
――「ドラえもん」にとって50周年という大切な年ですが、世界は新型コロナウイルスという脅威と向き合う1年になりそうです。

今子どもの方や、昔子どもだった大人の方など、ドラえもんはみなさまに50年支えていただきました。こういった困難な状況で、少しでもみなさまにお返しできればと思うのは当然のことだと思っています。

ドラえもんからは未来に向けて一緒に歩んでいけるような気持ちに、また、のび太くんは何度も何度も転んで失敗するのですが、起き上がる姿からは明るい気持ちになります。

安寧な日々が送れるようになるまで、私たちはキャラクターとともに、みなさまに寄り添ってメッセージを発信していきたいと考えています。

改めて、「人を思いやる心」と「未来を信じる気持ち」を忘れず、頑張りましょう。
改めて、ドラえもんからのメッセージを。
改めて、ドラえもんからのメッセージを。 出典:ドラえもん「STAY HOME」プロジェクト

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