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日本と中国、こんなに違う出産現場「立ち合いNG」「歯磨き禁止」

妊娠中で働くママたち※写真はイメージです。
妊娠中で働くママたち※写真はイメージです。 出典: Pixta

目次

在日華人の数は年々増え、法務省の調べでは2019年、中国国籍の「華僑」と日本国籍に帰化した「華人」の数は合計100万人に迫っています。一方、子育てに関しては、日本と中国で考え方が違う場面も少なくありません。中国の場合は、「出産直後は歯磨き禁止」「お医者さんがやさしくない……」。日中両国で出産や子育てを経験している母親たちは、どのように受け止めているのでしょうか? 中国人の母親の本音を聞きました。

ママ友たち※写真はイメージです。
ママ友たち※写真はイメージです。 出典: Pixta

気になる「月子」の存在

話を聞いたのは3人の中国人の母親です。方さん(30代、吉林省吉林市出身、一人娘3歳)、孫さん(仮名、40代、北京市出身、息子二人、長男は21歳、次男13歳)、王さん(仮名、40代、四川省成都市出身、一人娘8歳)。聞き手の記者も子どもが2人おり、日中両国での出産経験があります(30代、浙江省出身、息子二人、長男7歳、次男2歳)。

方さんは中国で出産。
王さんは日本で出産。
孫さんは第1子日本、第2子は中国。
記者は第1子中国、第2子は日本。

方さんは仕事の関係で、夫と一緒にパラオに1年間滞在した時、妊娠しました。日本で出産する選択肢もありましたが、中国の実家で出産しました。

日本で産まなかった理由は、中国特有の産後ケア「月子」(ユエズ)の伝統がありました。

「月子」は赤ちゃんが生まれた最初の1カ月を指します。期間中に母親は休養をとり、赤ちゃんと一緒に室内で過ごします。外出は禁止されるほか、伝統的なしきたりもたくさんあります。たとえば冷たいものを飲んだり、触ったりすることが許されません。現在でも入浴や歯磨きを禁じる地域があります。

日本にも「肥立ち」や「産褥期」がありますが、「外出禁止」など「月子」のような強いしきたりの縛りはあまり聞きません。日本で出産すると、病院から「月子」で禁止されていることを施されてしまう可能性があります。

方さんは「出産した時は真夏で、とても蒸し暑かったのに、クーラーを使えなかったどころか、窓を開けることも許されなかった」と振り返ります。また、「月子」期間中に、毎日に卵と粟(あわ)のおかゆを食べなければならなかったため、「月子」を守ることについては「とてもたいへんでした」と言います。

一方、「月子」にこだわりがないのが孫さんと、王さんです。

日本で初産をした孫さんは、帝王切開でした。孫さんの病院では、産後は便秘防止のために、冷たい牛乳が提供されたそうです。「当時は若かったし、何の問題も感じませんでした」

王さんは長年日本で過ごし、また夫は日本人のため、「そもそも中国で出産することは考えませんでした」。長女を出産したのは2011年。妊娠中に東日本大震災を経験し、一時、中国に戻りましたが、最終的には元々予約していた近所の産院で出産したそうです。

「月子」について、中国本土では依然として大事にされる伝統があります。古いしきたりは緩和され、赤ちゃんの世話、および産後ケア、スタイル回復の運動指導や薬膳などを提供する「月子中心」(ケアセンター)が人気を博しています。

赤ちゃんの世話をするお母さん※写真はイメージです。
赤ちゃんの世話をするお母さん※写真はイメージです。 出典: Pixta

立ち会い出産

日本では一般的になりつつある立ち会い出産ですが、中国の場合、まだほとんど許されません。

中国で出産した方さんは、「できれば立ち会い出産をしてもらいたいなあ」と話します。

一方、日本で生んだ王さんは、「出産時に狼狽する姿は夫には絶対、見せたくなかったので、最初から立ち会いを考えませんでした」とも。

筆者が第1子を中国で出産した時は、夜だったこともあり、分娩室に看護師がほとんどいなく、さびしい思いはありました。家族が差し入れた一箱のチョコレートが力になりました。そして第2子は日本で出産し、夫の立ち会い出産になりました。助産師さんと看護師が何人かいて、夫もそばにいてくれて、心強かったです。ただし、夫が慰めと励ましの言葉をかけてくれたそうですが、当時は聞く余裕がなく、「感動的」「役立った」という感覚は期待どおりではありませんでした。

立ち会い出産※写真はイメージです。
立ち会い出産※写真はイメージです。 出典: Pixta

自然分娩か帝王切開か

一人っ子政策が30年以上続いた中国では、出産は人生で1回しかないものだと考える人が多く、陣痛を避けるため、帝王切開が一般的でした。日本の場合、第2子、第3子の出産を考え、第1子では「安全な環境のもとでの自然分娩」を推奨する病院が多いです。最近は母体の負担軽減を案ずる「無痛分娩」を実施するところも増えています。

日本では、病院が妊産婦の体重を管理することが珍しくありませんが、中国では、「赤ちゃんは大きいほうが福がある」という思う人が多く、妊娠期間中に、30キロ体重が増える人もいます。日本では、妊娠したと分からないスリムな妊婦さんもいますが、中国では芸能人ぐらいの珍しい存在になります。

孫さんも王さんも最初は自然分娩の準備をしました。しかし孫さんの場合、陣痛が始まって50時間かかっても赤ちゃんが産まれなかったので、当時の状況では帝王切開せざるを得ませんでした。王さんの場合は、出産予定日を1週間ぐらい超過し、陣痛促進剤を打ったところ赤ちゃんの心拍数が急に落ちたため、結局緊急で帝王切開しなければなりませんでした。

「日本では自然分娩をすすめる人が多かったので、できれば自然分娩をしたかったですが、緊急時に帝王切開という選択肢があって、古代の女性たちよりはラッキーだったと思います」と孫さんは言いました。

赤ちゃんが産まれた瞬間※写真はイメージです。
赤ちゃんが産まれた瞬間※写真はイメージです。 出典: Pixta

医師の態度には違いも

全員が一致したのは、日本の病院が「親切だ」という意見です。

孫さんは、第1子を日本で出産した時について、「助産院は至れり尽くせりで、とてもよかった」と振り返ります。

病室は個室で、テレビ、冷蔵庫、シャワールームなどが全部完備しているだけでなく、夫が寝るベッドまで用意されたそうです。「アットホームで温かい感じでした」

第2子は北京で出産した孫さん。当時は2007年の猪年で、中国では「猪」は「豚」の意味で、福があり、縁起がいい年だと思われます。また「金」も縁起がよい言葉であるため、その年に生まれる赤ちゃんは「金猪宝宝」(金の豚のベイビー)と呼ばれ、ベビーラッシュでした。出産をする人が多かったため、個室どころか病室に入るのもやっとだったそうです。「4人部屋でかなりたいへんな思いをしました」。

第1子も第2子も帝王切開でしたが医師の態度の違いに驚いたそうです。「当時の執刀医は、その病院の主任医師で、腕が非常によかったです。しかし、『お疲れさま』『たいへんだったね』『よく頑張った』などの言葉が一切なかったので、冷たく感じました」と言います。

医師の対応ついては、王さんも同感だそうです。「中国では、妊産婦に対する医師の数が限られているので、『気持ちのケア』までする余裕がないように感じています」

方さんは「親のコネで、病院の主任医師にお願いをしました。入院中もたいへん親切にしてもらい、またお産の時には、医師、助産師、看護師何人かもそばにいてくれました」と明かします。ただ、上海や北京のような大都市の場合、「コネ」は難しくなるそうです。

妊婦の気持ちをいたわる助産師さん※写真はイメージです。
妊婦の気持ちをいたわる助産師さん※写真はイメージです。 出典: Pixta

気になるお産の費用

出産する状況や時代が異なるため単純な比較はできませんが、お産の費用についても聞きました。

中国で自然分娩だった方さんの費用は4000元(約6.5万円)でした。

日本で帝王切開をした王さんは約48万円でした。

日本で20年前に帝王切開をした孫さんは約38万円。中国で帝王切開だった第2子は、8000元(約13万円)でした。

中国で第1子を自然分娩で生んだ記者の場合、入院4日間で総費用は3000元(約5万円)でした。日本で自然分娩で生んだ第2子は、入院6日間でしたが祝日と深夜出産の加算料金に個室代もかかり総費用は約50万円でした。

全体的に日本のほうが、「お産」にかかる金額が高いですが、物価や収入への割合などを考えると、家庭への負担感はそれほど差はないという印象です。ただ、日本では一児につき原則42万円が支払われる「出産育児一時金」で費用のほとんどがカバーできるため、実質的に日本のほうが家庭への負担が軽いと言えます。

「月子」などの伝統が今も残る中国ですが、少子高齢化やグローバル化が進む中、「立ち会い出産」や「無痛分娩」も徐々に導入されるようになり、少しずつ、日本のような出産のスタイルに近づいているようです。

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