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#33 #やさしい日本語
「お客さんがいなくなったので雇えません」留学生の悩みやさしく解説
「内定取り消し」には「わかりました」と答えないでください
【ネパール
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【機械翻訳用】ふりがな なし
◆「お客さんがいなくなったので雇えません」留学生の悩みやさしく解説
こんにちは。NPO法人POSSEの岩橋誠です。今日は、「内定」を取り消された留学生の相談です。
【ネパール人、女性、20歳代】
6年前に日本に来ました。今年3月に、東京にある大学を卒業しました。大学を卒業した後は、空港の中にあるお店で働く約束(内定)を、会社としていました。でも、3月30日に会社からメールがありました。「コロナウイルスのせいで、お客さんがいなくなりました。4月から働くことはできなくなりました」というメールでした。大学生の間は留学ビザです。だから、私は大学を卒業したら、この会社で働く「就労ビザ」に変更する予定でした。 仕事がないので、お金もありません。日本に住むための、ビザのことも不安です。どうすればいいですか。
■内定取り消しは「クビ」と同じ
今年3月に学校を卒業して、4月から働く予定だった人や、来年3月に卒業する予定の人から、相談がたくさんきています。「コロナウイルスで仕事がなくなったので、働く予定だった会社から、内定を取り消された」という相談です。
内定とは、「学校を卒業した後に、一緒に働きましょう」と、学生と会社が約束(契約)することです。学生は、内定の約束をするときは、まだ会社で働いていません。でも、内定は会社と働く人との約束(契約)です。だから、「内定の取り消し」は、働いている人に「あなたはクビ(解雇)です」と言うのと同じことです。
日本では、会社が働く人をクビ(解雇)にするときは、きちんとした理由(合理的な理由)がないといけません。これは法律で決まっています(労働契約法第16条)。例えば、会社は働く人を減らさないように努力をしたこと、だけど働く人を減らさなければ会社を続けていけない、などです。会社はきちんとした理由がないのに、クビにしてはいけません。
■「働きたいです」と言います
あなたがその会社で働きたいのに、会社が「あなたは私たちの会社では、働くことができません」と言ったら、どうしたらいいでしょうか。まず、あなたは会社に、「いやです。働きます」と伝えてください。
もし、「わかりました。もう働かないです」と言うと、クビになることに合意した(OKした)ことになってしまいます。もし紙にサイン(署名)するように言われても、「サインはできません」と断ってください。
■会社があなたに「辞めてほしい」と言ったら
会社はあなたに「自分から辞めてください」と言うかもしれません。そのときは、あなたは会社に「辞めたくないです。働きたいです」と伝えてください。「わかりました」と言うと、やめることに合意した(OKした)ことになってしまいます。
■労働組合やNPO、弁護士に相談してください
あなたが、「内定したのに、働くことができないのはおかしい」「クビはおかしい」と思ったときは、すぐに誰かに相談してください。POSSEは無料で相談を受け付けています。 また、あなたが住んでいる地域の労働組合(ユニオン)や弁護士に相談してください。ユニオンには、大学生も留学生も、外国人も入ることができます。例えば、POSSEが連携している「総合サポートユニオン(sougou-u.jp) 」というユニオンにも相談できます。
あなたがその会社でこれからも働くことができるように、労働組合(ユニオン)は会社と話し合うことができます。ユニオンを通じて、あなたは会社に対して働くことができない間の給料を求めることもできます。もし、別の会社で働くときでも、お金を求めることができます。
裁判をしているときや、労働組合(ユニオン)が会社と交渉しているときは、日本にいることができるビザ(在留資格)がおりるかもしれません。
もし、あなたが「仕方がない」と諦める場合は、在留資格をもらうために、新しい仕事を見つけたり、学校に通ったりすることが必要です。
できるだけ早く、相談してください。
■留学生の内定取り消し
今年3月に大学などを卒業した学生からの「内定取り消し」に関する相談がPOSSEには相次いでいます。日本人学生の内定取り消しがメディアで話題となり、内定取り消しになった学生を雇う企業や自治体がクローズアップされています。
同時に、留学生の内定取り消しが起こっている事も忘れてはいけません。留学生は、ホテルや空港などインバウンドの観光客サービスや免税店など、特にコロナウイルスの蔓延による渡航制限の影響を受けやすい産業で働く割合が、日本人学生よりも高くなっています。そして、来日観光客の減少や店舗閉鎖などを理由に、4月から働く予定だった会社から、留学生は次々と内定を取り消されています。
しかし、このような状況に置かれた留学生は、仕事がないことに加えて、日本に在留し続けること自体が危うくなります。大学や専門学校などに在学している間は「留学」ビザで日本に居続けることができますが、一旦卒業してしまうといわゆる就労ビザへの変更が求められます。しかし、内定取り消しに遭った留学生は就労先がないため、就労ビザが発給されないもしくは後に取り消しになる可能性が生じてしまうのです。就職活動のために「特定活動」というビザに切り替えることは可能ですが、その後実際に就職できなければ、日本での在留が困難になってしまいます。
仕事がないことに加えてビザもないという二重に困難な状況で、内定取り消しの被害に遭った留学生は困っています。日本で働く外国人が増える中で、このような状況に置かれた留学生の生活や在留を保障する仕組みをできるだけ早く構築することが不可欠です。
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