エンタメ
誰もが一度は触った「鍵盤ハーモニカ」 大進化遂げた?大人にも需要
世界の子どもに一番有名な楽器という説も
小学校で誰しも一度は触れたことのある「鍵盤ハーモニカ」。家で手軽に始められる楽器はないかなと考えていた時、その存在を約20年ぶりにふと思い出しました。調べてみると、私の子ども時代よりもバージョンアップしているようです。世に出てから約60年。大人にも人気が出ているという「鍵ハモ」に迫ってみました。(朝日新聞デジタル編集部・影山遼)
鍵盤ハーモニカ、略すと「鍵ハモ(ケンハモ)」や「鍵ハ」というそう。個人的にはあまり耳なじみのない言葉ですが、界隈では当たり前の言葉ということです。
商品名としては、どちらも静岡県浜松市に本社がある、ヤマハの「ピアニカ」や鈴木楽器製作所の「メロディオン」がメジャーなところでしょうか。
そもそも鍵盤ハーモニカの定義は、と疑問に思い、聞いてみました。鈴木楽器製作所の企画課に所属する青山仁美さんが「音が鳴る部分がハーモニカと同じく『リード』であることと、演奏に鍵盤を使用すること、でしょうか。リードとは、小さな金属の板で、吹き込んだ時に振動して音が鳴るものです」と解説してくれました。
調べてみると、元々はドイツ生まれ。ホーナー社の「メロディカ」が原形。ハーモニカやアコーディオンなどの仲間になります。日本では1960年代以降に学校に普及したといいます。
鈴木楽器が市場調査を始めたのは、今からちょうど60年前の1960年。その翌年に「メロディオン」の「スーパー34」がデビューしました。その後、徐々に形を変えていきます。現在の生産数は年間に約40万本ということでした。
鍵盤の数も、これまでに幾度となく変わってきました。その変遷は「34→36→27→25→32→26→24→37→44」。だいぶ数に差があります。
一方、ヤマハによると、「ピアニカ」の販売を1967 年に開始。最初は「P-32A」という商品名。その後、多くの学校で音楽の教材として使われている鍵盤数が32 のタイプを中心に、幼児が楽に演奏できる25タイプや、広音域な37 タイプなどを展開してきました。
ヤマハと鈴木楽器とも、一番変わったのは、子ども向けだけでなく大人向けのモデルを発売し始めたところでしょうか。鈴木楽器は2000年に発売を始めました。ヤマハは2018年、「大人のピアニカ」と商品名に「大人の」を冠した製品を登場させました。
「大人のピアニカ」は、ヤマハが初めて大人のために開発したモデルです。本体は落ち着いた色。また、両手演奏などにも対応できる形状の吹き口を採用したそうです。
ヤマハの担当者は「息を吹き込んで鍵盤をおさえれば演奏できるように、簡単に楽器の演奏体験が可能。息を使うことで腹式呼吸を意識したり、楽譜を見て指を動かすことが脳トレにもつながったり、健康増進の側面から始める方も増えてきています」と大人人気の理由を説明します。
鈴木楽器の青山さんも、大人の需要について、「子どもの時に経験したことがあるので始めやすく、どこにでも持ち運べ、比較的安価。表現が多彩で、メロディーもコード(和音)も演奏できるからだと思います」と分析します。
最後の部分がいまいちピンと来ません。青山さんが、補足します。「例えば、管楽器は1度に1音しか発音できませんが、鍵盤ハーモニカはコードが演奏できます。加えて、ピアノは鍵盤から指を離したあと音が消えていってしまいますが、鍵盤ハーモニカは、息が続く限り音(の大きさ)を持続できます」
※2020年4月28日14時、一部追記しました。
また、大人の愛好家が増えたことで、バンドの中で使用されることも多くなり、アンプに直接つなげるモデルの要望があったため、開発に着手。2008年の発売に至ったそうです。
在宅でも演奏できる鍵盤ハーモニカ。ヤマハの担当者は「小学校の時に習った懐かしい音楽を演奏するのも良いですし、好きなアーティストの曲を演奏するのも良いですね。それぞれ自由な形で音楽ライフを楽しんでください」と呼びかけます。
最後に一つ、青山さんから注意点が。「鍵盤ハーモニカはコンパクトな楽器ですが、音はパワフルです。近隣の方への、音のエチケットを守って楽しんでいただければと思います」
現在の鍵盤ハーモニカは、私の記憶のものとは異なり、おしゃれな存在になっていました。在宅勤務の合間に練習して、両手でも演奏できる技術を身につけてみようかなと思います。
1/22枚