連載
#46 コミチ漫画コラボ
「うぇるかむ とぅー マイ ジャパン」勇気出した思い出を漫画に
「英語で話しかけたいけど怖い」そんな背中を押す漫画
大賞に決まったのは、tokeikamone(tokei)さんの漫画「うぇるかむとぅーまいじゃぱん」。tokeiさんが中学3年生の頃の修学旅行での出来事が描かれています。
楽しいはずのグループ行動。しかし、tokeiさんは普段属していないグループになり、想像とは違う時間を過ごしていました。
頑張って話しかけても、いつの間にか会話の外へ。「全然楽しくない」と気持ちは沈んだまま、とぼとぼとお土産屋に向かいます。
そんなとき、「すいません」と話しかけられます。振り返ると、海外からの観光客の方のようでした。女性2人から、不慣れな日本語で、カメラのシャッターを切って欲しいと頼まれます。
カメラの画面に中国語が表示されていることから、「やっぱり海外の人だ!」と実感したtokeiさん。「会話とかしてみたい」とほのかな期待を抱きながら撮影しますが、「英語ができない 会話して変な子どもだと思われたくない」という気持ちで葛藤します。
「……でも でも 話せたらカッコイイ」
そんな気持ちから「China?」と質問したtokeiさん。すると、話しかけられてうれしかったのか、女性たちの表情はぱぁっと明るくなり、「No,Hong Kong!」。
それ以降、会話は日本語から英語に切り替わり、必死に答えようとするtokeiさんでしたが、突然、会話が途切れてしまいます。「こういう時の英会話って……」って必死に絞り出したのは……。
「うぇるかむ とぅー マイ ジャパン」
「私の」を意味する「マイ」が入ってしまったことで恥ずかしさで頭がいっぱい。しかし、女性たちはあふれんばかりの笑みで「ありがとう!」と喜んだのでした。
これを見ていたグループの生徒たちは、「カッコよかった」とぽつり。tokeiさんも「ありがとう」と照れながら笑顔で応じます。
それから数年後、電車の中で翻訳アプリで「○○駅まではこのまま乗って大丈夫ですか」と聞かれたtokeiさん。どうやら海外からの訪問客のようです。「オーケーオーケー」と答えた後、満面の笑みで「ウェルカム トゥー ジャパン!」と伝えるのでした。
「私の親友をいじめていた子と同じグループになってしまって、正直居心地はあまりよくなかったんです」
修学旅行の出来事を振り返ってそう話すのは、「tokeikamone」名義で漫画を描いているtokeiさん。「私自身も、正義感の強さと不器用さで、周囲から『変なやつ』と思われていたんだと思う」と語ります。
疎外感を感じていたグループ行動の中、漫画で描いたように、香港からの観光客から声をかけられました。中学2年生の時、ニュージーランドで1週間のホームステイを経験したtokeiさんは、「英語でコミュニケーションが取れるうれしさみたいなものを感じていた」といいます。
いざ勇気を出して話しかけてみると、堰を切ったように観光客の女性は英語で話し始めました。tokeiさんは「単語しかわからなくて、もういっぱいいっぱいだったことしか覚えていません」と苦笑い。そして、会話が途切れたとき、脳をフル回転させて出てきたのは、ニュージーランドでの経験でした。
「ニュージーランドの方が『ウェルカム!』と迎えてくれたのがうれしかったんです。向こうで教会の牧師さんの話を聞く機会があって、降っていた雨を『これは君たちを迎える神様の恵みの雨だよ』とおっしゃっていて、『歓迎を祝福する』ということに、とても感激したんです」
そこで咄嗟に出た「うぇるかむ とぅー マイ ジャパン」に、観光客の女性はとても喜んでくれました。漫画では描かれていませんが、tokeiさんと、そして一緒にいた生徒3人も巻き込んで、みんなで写真を撮ったそうです。
そんな素敵な体験のきっかけをつくったtokeiさんに、同じグループの生徒は「すごい」「かっこいい」と称賛。グループのメンバーに複雑な思いを持っていたtokeiさんも、このときは少し和んだといいます。
観光客の女性たちに喜んでもらえたという成功体験から、外国人観光客に道を聞かれた際などに「ウェルカム トゥー ジャパン」と声をかけるようにしているというtokeiさん。
「『日本を選んで来てくれてありがとう』という気持ちが強いです。新型コロナウイルスが終息して、また出会うことがあれば、感謝の気持ちを伝えたいです」
幼い頃から漫画家を夢見ていたというtokeiさん。商業雑誌で担当編集者の方がついたり、ウェブ漫画で連載したりなどの経験がありましたが、就職してこの1年、あまり漫画を描けていませんでした。それでも、友人やSNSのフォロワーの方からの励ましや応援の声があったことで、この春「その気持ちに応えたい」という思いを強くしていました。
そんな時、SNSで話題になった漫画家・きくちゆうきさんの「100日後に死ぬワニ」を読んで、毎日100日書き続ける姿に「私も頑張ってみよう」と再び漫画を発信し始めたといいます。現在、Twitterやインスタグラムで作品を発信しています。インスタグラムでは、海外の方にも楽しめるようにと、友人に協力してもらい英語に翻訳した漫画も投稿しています。
「まだまだ試行錯誤中ですが、多様な恋愛や人間関係を描いた作品に挑戦していきたい」と話しています。
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