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グルメ

滝沢カレンさんの「規格外」料理本 編集者が驚いた執筆スタイル

レモン汁は「人が飲み込める量ギリ入れ…」

レシピ本「カレンの台所」の著者・滝沢カレンさん
レシピ本「カレンの台所」の著者・滝沢カレンさん 出典: サンクチュアリ出版提供

目次

「お醤油を使ったか使っていないか誰も分からないくらい」「レモン汁を人が飲み込める量ギリ入れ」「こんな量で味するか?との程度」「アクセサリーをつけるくらいの気持ち」ーー。レシピ本であれば必須とも言える、「分量」を書かないレシピ本が話題です。書いたのは、個性的すぎるフレーズが次々と飛び出すことで有名な滝沢カレンさん。「こんな本のつくり方をしたことがない」という、担当編集者に聞きました。
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「小説読んだくらいの満足感」

詩的なレシピが「小説読んだくらいの満足感がある」「言葉のセンスが最高」と話題となってきたのが、滝沢カレンさんのインスタグラム。プロのシェフに「何て自分は文章のセンスがないのだろうと落ち込む」とまで言わしめたその作品たちが、この度本になりました。

4月7日発売された「カレンの台所」(サンクチュアリ出版)。鶏の唐揚げやロールキャベツ、ブリ大根などの料理レシピが約30品掲載されています。
出典:滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」(サンクチュアリ出版)
「きゃぴきゃぴ何も言わなくなったら出してくれの合図」「お砂糖を笑わない量ギリギリ入れる」など独特の表現の連続ですが、「分量が書かれていないのになぜか伝わる」と注目されています。

この本がどのように生まれたのか、担当したサンクチュアリ出版の大川美帆さんに聞きました。

分量に頼らないレシピに「衝撃」

もともと滝沢さんのファンだったという大川さん。滝沢さんのインスタグラムの投稿が話題になっているのを見て、衝撃を受けたといいます。

「実は私自身、あまり料理が得意ではなくて、『大さじ1』とかの分量自体に苦手意識を持っていたんです。でも、カレンさんの文章を読んではっとさせられました」
出典:滝沢カレンさんのインスタグラム
分量にとらわれない滝沢さんのレシピ。試しに中華丼を作ってみたところ、「敷居が高いと思っていた料理も、謎解き感覚で楽しくおいしく作れたので、これは面白いと思いました」。

そういった自身の経験から、「初めて一人暮らしをする女の子などにも作ってみてもらえたら」と滝沢さんに打診し、書籍化が決まったといいます。

料理が先、その気持ちをレシピに

本に掲載されている料理の写真は、滝沢さんが実際に調理したもの。大川さんが驚いたのは、そのレシピの執筆スタイルでした。

「普通はレシピを先に書いて、それに基づいて調理して撮影という流れだと思うのですが、カレンさんの場合は料理をつくった後、その場で原稿を書いてくださるんです。カレンさんは食材と会話するというか、料理をするその瞬間の気持ちをつづられているのです」
滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」より
滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」より 出典:サンクチュアリ出版提供
1日に5~6品ずつ、数日に分けて行われた長丁場の撮影ですが、滝沢さんは大川さんも驚く速さでレシピを書き上げていったといいます。テレビでもよく、小気味いいテンポでパワーワードを発する滝沢さんの姿を目にしますが、「本当に瞬発的に言葉が湧き出てくるのだと実感しました」。

そんな「生もの」の感情を書き記した原稿に「校正をがっつりかけてしまうと良さがなくなってしまう」と感じた大川さん。

「基本的にはカレンさんに『自由に書いてください』とお任せして、料理の初心者の方にわかりにくそうなポイントがあれば追記してもらうという形をとりました」
滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」より
滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」より 出典:サンクチュアリ出版提供

彼女の言葉の力を知りつつも、毎回想像のななめ上からやってくる文章に驚きの連続。「こんな風に本をつくったのは初めてです」と語ります。

レシピがまるでひとつのドラマ

滝沢さんのレシピの魅力を「自由に、ルールにとらわらない料理のあり方教えてくれた」という大川さん。「材料を必要な分準備し、調理するという作業が、カレンさんの手にかかるとにんじんやたまねぎが踊りだす、まるで1つのドラマのように感じられます」
「ある程度の男子学校になるなという分までバラけさせたら、また刻むだけ刻んだネギを入れ共学にさせます。男子という名のひき肉は喜びに変わりどんどん男らしくなっていきます」(麻婆豆腐)

「両手をバサッと大袈裟に開いたキャベツ男の胸元に、豚ひき肉乙女は飛び込みます」(ロールキャベツ)
滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」より
滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」より
滝沢カレンさんのレシピ本「カレンの台所」より 出典:サンクチュアリ出版提供
料理を作るという工程を、「正解」にとらわれず、食材と楽しむという体験に感じさせてくれる滝沢さんの文章。実際に、巻末には食材を「登場人物」、調味料を「スタッフ」として紹介しているところもユニークです。

「レシピは料理を完成させることがゴールだと思いますが、それとは違うゴールがあることをカレンさんは教えてくれるんです」

新型コロナウイルスの感染拡大によって、家で過ごす人が増え、料理への関心も高まっています。大川さんは「暗い話題が多い中で、カレンさんの言葉で癒されていただけたらうれしい」と話しています。

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