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「命がけで通訳してくれてんのや」会見での手話、マスクしない理由

手話は、「手の動き」だけではありません

ぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿した漫画
ぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿した漫画 出典: ぷちめいさんのツイート

目次

新型コロナウイルスの感染拡大によって、記者会見で話す人もマスクを着用している場面が目立つようになりました。そんな中、会見内容を手話で伝える手話通訳の方がマスクをつけていない理由を紹介する漫画がツイッターで話題です。手話通訳者を派遣する団体に話を聞くと、難しい対応を迫られている実態も見えてきました。
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手話通訳、疑問を説明するマンガが話題

ツイッターで話題となっているのが、イラストレーターのぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿したマンガです。
ぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿した漫画
ぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿した漫画 出典:ぷちめいさんのツイート

漫画では、テレビで会見を見たぷちめいさんの妻が「手話通訳の人だけマスクつけてへんやん!」「予防せなあの人危ないで!」と驚いています。これに対し、大学で4年間手話サークルに所属していたぷちめいさんが、手話に必要なのは手の動きだけではないと、その理由を説明するというもの。

投稿は7万回以上リツイートされ、13万件以上の「いいね」が集まっています。

手話は「手の動き」だけではない

会見など速報性の高い情報が発信される場面において、聴覚に障害がある方にとって重要な情報源となるのが手話であり、それを伝えるのが手話通訳者です。

記者会見や個人の病院受診など、さまざまな場面で手話通訳者を派遣する「東京手話通訳等派遣センター」の担当者は、「手話は『手で話す』と書きますが、実際は顔の表情や体の向きなどが文法的な意味を持っている」と話します。

その中でも重要な役割を果たしているのが、「口の形(口形)」です。手話としての動きは同じでも、意味が異なる単語もあり、その場合は口形で情報を補っています。

「特に固有名詞などを伝える場合は口の動きが重要になるため、マスクをつけた状態だと伝達の度合いが落ちてしまいます」
ぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿した漫画
ぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿した漫画 出典:ぷちめいさんのツイート

医療機関などで通訳する場合は、手話通訳者がマスクを着用する場合もあるといいますが、それはわからない時に聞き返せる双方向性が担保されているからこそ。担当者は「一方向で伝える会見のような場では、特にマスクの着用がしづらい」といいます。

「会見場で」手話通訳する理由

もちろん、手話通訳者やその周囲の感染リスクを下げることは重要であるととらえており、会見直前までは通訳者もマスクをつけるなどの対応をしています。

技術的に可能であれば、テレビ中継の場合は会見場で通訳せず、別のスタジオで収録するなどの対応がとれるとしていますが、「別スタジオにもスタッフなどはいると思うので、リスクの評価は難しい」と話します。また、通訳者にとっても音声が聞き取りにくい、場の雰囲気がつかみにくいなど「同じ場にいないことでデメリットはあるかもしれない」と指摘します。

新型コロナウイルスについて会見する小池百合子都知事=2020年3月
新型コロナウイルスについて会見する小池百合子都知事=2020年3月 出典: 朝日新聞

口元が見えるような透明のマスクについても、2009年の新型インフルエンザが流行した際に、支給された時期があったといいますが、見た目の違和感などから浸透しなかった背景がありました。現在は、入手方法や費用面の課題がクリアできるか検討しているとのこと。

また、「口形」に変わる伝達方法としては、文字による表示が考えられるといいます。キーワードになっている名詞を画面に表示することで、通訳者がマスクをした状態でも情報を補える可能性があると話します。ただし、緊急に開かれた会見などで、テレビ局などの配信側がどこまで情報を準備できるかという課題が残ります。

現状の時点では、マスクを外す場面を制限しつつ通訳することがベターな状態だと考えています。

通訳者の中でも不安の声

基本的に組織や団体からの依頼を受けて、現場に従事する手話通訳者。聴覚に障害がある人が情報を得るために、また彼ら彼女らと円滑にコミュニケーションをとるために必要な仕事ではあるのですが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、担当者は「通訳者の中でも不安の声はある」と話します。

依頼を受けて行う手話通訳の仕事自体が、状況に合わせながら対応せざるをえないことが多いもの。依頼によっては、通勤ラッシュの時間帯や土日、夜間に移動せざるを得ないケースもあります。また医療現場で、患者と医師の橋渡し役になることもあります。感染リスクを抑えながら、情報格差を埋めるという難しい対応が迫られています。

ぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿した漫画
ぷちめいさん(@puchimei_twi)が投稿した漫画 出典:ぷちめいさんのツイート

「少しでも誰かのためになれば」作者の思い

冒頭のマンガを描いたぷちめいさんは、日本福祉大学(愛知県知多郡)で4年間手話サークルに所属していました。テレビの手話通訳者への妻の感想を聞いて、「自分が当たり前に知っていることも、多くの人にとってはそうじゃないのかもしれないと思った」といいます。

加えて、新型コロナウイルスの感染拡大の中で、「マスクをしていない人に対して、厳しい意見を見かけることがあった」と話します。そういった意見から、手話を使う人たちが口形を見るためにマスクを外すことをためらったり、多くの人がマスクをつけていて口の動きが読みづらくなったりしているのではと考えたぷちめいさん。

「サークルで仲良くしてくれた仲間や聴覚に障害がある人たちが、肩身の狭い思いをしているのは嫌だなと思いました」

「少しでも誤解がなくなれば」との願いから、今回の漫画を描きました。漫画は拡散され、当事者という方から感謝を示すリプライも寄せられています。反響についてぷちめいさんは、「『こちらこそありがとうございます』という思いです。大学時代、障害のある方や福祉に関わることで人間として成長させていただいたので、少しでも誰かのためになれたのかなと思うとうれしいです」。

「聴覚障害だけではなく、障害がある方が直面している課題はまだまだある」と指摘するぷちめいさん。今後もSNSなどで情報発信していきたいと話しています。

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